23-1 イベント攻略 (※ギルバート視点)
アンドレアの元から部屋へ戻って来た私は、彼女のために購入したラムネの瓶を手に取った。
おもちゃのようなブレスレットを強請ったアンドレアは、宝石よりも、子どもみたいな菓子の方が喜ぶかもしれない。そう考えて用意した品だ。
人気の菓子を見れば、大喜びする姿を想像していたが、アンドレアはこれを知らなかったのか……。
彼女らしくて笑えてしまい、不謹慎にも笑みが溢れた。
張りつめていた緊張が少し和らいだタイミングで、息を切らすルシオが、大きなノックとともに入室してくる。
「どうだった?」
「アンドレア卿の裁判は明日開かれることになりました」
「そうか〜」
と、ため息混じりに返したが、予想通りだ。
多くの騎士や兵士が戦争でこの国を離れていた間、治安を守ることが優先された。
それによって新たな方針が打ち出された。
罪人に対し、近衛兵の手を割かれるのを嫌い、現行犯で捕まった者の裁判は、儀礼的なものに変わったのだ。
真偽を問うのではなく、基本は裁判官が罪状と処分を伝えるのみ。
アンドレアは無罪だ。
それを証明すると同時に、彼女へ罠を仕掛けた人物を捕らえたいが、疑わしい人物が多すぎる。
この事件が第一王子に対する嫌がらせであれば、私に恨みを持つ者など数えきれず、真犯人を見つけるのは容易ではない。
私の心境を見透かしたように、ルシオが口にした。
「明日までに、真犯人を探すのは、まず無理だと存じます」
「いや、アンドレアが犯人でないと証明するには、十分だ。毒の瓶を見てきたか?」
「はい。一応は……」
自身なさげな回答をするが、「わかったことは?」と、彼の報告を促す。
「ギルバート殿下が持っている、そのラムネは、コットンキャンディーという菓子店のものですよね」
「そうだ。以前、妹が騒いでいたからな」
「アンドレア卿の机の引き出しから見つかった瓶には、間違いなくコットンキャンディーの店名が書かれていました。ですが、気になるのはキャップの形が違って、僕が見てきたのは、平らなキャップでしたから」
「私が思っていることが合っていれば、アンドレアは無罪であることを証明できるはずだ」
「え? え? え? どういうことですか?」
「アンドレアの命がかかっているから説明をしている暇はない。今すぐ店に行って、瓶の蓋がいつ変わったのか、正確に調べてこい」
「わ、わかりました。すぐに向かいます」
夕刻に迫ろうとしている時計を見たルシオが、状況を察して踵を返す。
「日時を聞き漏らすなよ! 同じ内容の裁判は2度と開催されないんだ、間違いは許されない」
「逆を返せば、一度無罪になれば、今後何が出てこようと判決は覆らない……そう仰りたいのですね」
「その通りだ。アンドレアをあの牢から出すことだけを考えろ。彼女はやってない。それだけわかれば十分だ」
ルシオの背中に向かって声をかければ、完全に理解したと言わんばかりの顔を見せ、勢いよく飛び出していった。
「アンドレアに感化されて、やっとしっかりしてきたか……。ったく、そもそもルシオが自分で調べたことだろう」
早いもので投稿を始めて1か月が過ぎたのですね。
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