裏:祭宴の余韻(冬雷宗の場合)
万灯祭も無事に終わり、今回の目標も無事に達成された。
達成感のおかげで、疲労感も心地好く感じる。
「冬花殿には感謝しないとな」
最初、皇帝に白瑞の巫女を公にするつもりだと言われた時、二つ返事で肯定した。
白瑞の巫女が現れたと、国中に広まるのは良いことだと思う。
出口の見えない暗闇を歩かされるよりも、先に僅かでも明かりが見えたほうが、人はまっすぐに生きられるものだ。
そう思って、皇帝の意思を伝えに白瑞宮を訪ねたのだが、彼女の顔を見たら申し訳ない気持ちになった。
こんな、この国と何も関係無い者を利用しても良いのかと。
無邪気を体現したような女人だった。
言葉の裏を読まないし、行間も読まない。腹の中も読まないし、逆に彼女の腹の中はとても読みやすい。子供かと思うくらい考えが顔に出るし、なんなら口にも出ている。
「とことん、後宮にはそぐわない女人だ」
なのに、九嬪の中で一番面倒だと評判の鵬姜と談笑するくらいには、しっかりと後宮で生きていけている。
「いつの間に仲良くなったのやら」
自分の記憶によれば、彼女と鵬姜は一度しか関わりを持っていないはずだ。しかも、二人ともお茶をしていたのか、美味そうなものを食べていた。おそらく鵬姜も胃袋を掴まれたのだろう。
自分も食べたいと言ったが、『残りは菜明と白ちゃんと一緒に食べるから駄目』と断られてしまった。
香っていた匂いからして、絶対に美味しいに違いなくその日は内侍省へ戻る足取りが重かった。内侍省に戻ったら、青沁から『機嫌悪そう』と言われたから、仕事量を倍に増やしてやった。
万灯祭で見世物になってくれと、かなり遠回しに言ったのだが、彼女は条件など駆け引きをする前に、『良いですよ』と簡単に頷いた。
普通の后妃であれば、あれがほしい、これがほしい、皇帝が自分の所を訪ねるように計らえ――などと、まあ欲にまみれた願い事ばかり言ってくる。
だが、彼女は役に立てて嬉しいと笑った。
その時の彼女の顔を思い出せば、笑いがこみ上げてくる。
本当、表情と心が一致していて読みやすい。クセになるくらいだ。
「『いてくれ……ここに』か」
彼女の反応からすると、来年も白瑞宮やこの国にいてくれ、という意味に読み取ったに違いない。
ここ――歩揺を触れるほど近くにいてほしい、という言葉に隠した意味を、彼女が読み取るのは何年後になるやら。
まあ、行く当てもないと言っていたし、しばらくはまだまだ世話をしなければならないのかもしれない。
「また、深夜にでも訪ねるか」
すっかりと、自分も胃袋を掴まれてしまったようだ。
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また、本日より新連載スタートしております
『今世は、悪役令嬢の姑です~バカ息子を再教育して幸せ家族を目指したら~』
悪役令嬢の姑に転生した主人公が、息子を矯正して嫁の悪役令嬢ちゃんを救うというストーリーです。
中編なので、サクッと読めるかと思います
主人公の拳もよく息子の頬を強襲する感じの、明るく楽しい物語です
よろしくお願いいたします(^^)




