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【書籍化】白瑞宮のお料理番~異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する~  作者: 巻村 螢
四品目:万能な卵料理はいかがですか

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仕方ないから奥の手使いますね

「同じく後宮に仕える者なのに、なぜ役職が分けられているかというと、担える役割が違うからなのです。それに、巫女様ともあろうお方が平民を傍に置いていると広まれば、侮られてしまいますわ」


 全員が全員、反対という意見らしい。『もう一度考え直せ』とばかりのジリジリとした視線で、身体に穴が開きそうだ。

 だが、三人の言葉は私の心にはちっとも響かない。だって、一緒にいたいと思えるのは彼女だけなんだもん。仕事ができようと、礼儀作法をめちゃくちゃ知っていようと、そんな人より私は菜明と一緒にいたいんだから。

 一緒に楽しいですねって料理を手伝ってくれて、美味しいですねって、一緒の卓について並んでご飯食べてくれる菜明と。


 私はスッと立てた人差し指を、三人の目の前に出した。


「まず、臨時でも仕えられるってことは、規則違反なわけじゃないですよね。次に、私は今は巫女だなんて呼ばれるけど元はただの平民で、菜明と身分の差はない。そして、私の望みは、料理を好きなだけやれること。これに関して菜明は、食材を食堂からもらってきてくれたりと協力してくれて、充分に私の望みを叶えてくれているということ。最後に、私は後宮妃ではないので、競う相手もいないので侮られたところで意味がないです」


 私は、各人の反対意見にひとつひとつ理由を添えて、菜明では駄目という反対意見を潰していった。

 すべて聞き終わった後、三人は肯定も否定もできないのか、腕組みをして「んー」と唸っていた。口々に「前例がなぁ」やら「聞いたことないですし」などとブツブツ言っている。頭の固い人達だなとは思いつつも、文化が違うのだから仕方ないのかもしれない。


 この手は極力使いたくなかったが、この場合致し方ない。


「あーあ、そうですか。残念です」


 食べかけだった黒酢餡かけ卵を、私はヒョイと取り上げた。


「あっ! 何をするんだ」

「だって、格式高い家出身の侍女が来たら、私は自由に料理できなくなりますから。今から私の料理がない生活に慣れてもらわないと。残念ながら、明日からはおやつも軽食も夜食も作れない生活になりま――」

「それはゆゆしき事態だ。宮女が侍女になってはいけない規則はないし、そこまで言うのなら、彼女を侍女にしても構わんぞ」


 食い気味に被せてきた。食いしん坊め、職権濫用だよ。


「というのは、半分冗談で……」


 半分は本気だったんだ。


「白瑞の巫女殿が彼女が良いと言うのなら、長官である俺でも拒否はできないからな。元より冬花殿は俺の指示下にはないのだし」


 確かに。今までの冬長官の行動を振り返ってみると、私に何かを強制するようなことはなかった。面倒を見てもらってはいるが、後宮に住んでるだけで後宮妃ではないからなのかもしれない。


「それじゃあ、菜明を侍女にしても良いんですね! 良かったぁ。そういうわけでよろしくね、菜明!」


 私は嬉しさのあまり、菜明の手を握りしめた。


「え、あ、はい……あの、よろしくお願いします?」


 一方、菜明はまだ状況が理解できていないのか、目を瞬かせていた。

 一連の流れを見届けた鵬姜様は、「ここじゃ後宮の常識が通じないのね」と口を引きつらせていた。


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