第8話 朝食タイム
「支度して待ってようか。服、どうなったかなー?」
クローゼットから制服を取り出すと、まるで新品だ。
それにすっきり着替え、シラチャは丁寧にブラッシング。めっちゃ毛が抜ける。ブラシについた毛で、ボールが2つも作れた。
それをベッドに投げると、シラチャは本能のままにじゃれだした。
ほぼ毛玉といっしょに転がりつづけてる。どんくさかわいい。
「ねー、シラチャ、まだ時間あるからさ、必要なもの、書き出してみない?」
ちょうど座っているあたしのところに転がってきたので、シラチャを拾い上げ、膝の上にちょこっと座らせる。
「必要なのってなにかな?」
「ちず!」
「おー、シラチャ、物知りだね」
部屋にあったメモ帳にペンで書き込んでいく。
「かばん!」
「確かに。荷物、入れれないもんね」
「ごはん!」
「ご飯も必要だね。……でもさ、全部、お金必要だよね」
「うんっ!」
あたしは頭を抱えた。抱えても答えなどでないが、抱えたくなる。
お金が、ない……!!!!
「あー、シラチャ、ペンかじらないで」
「……にゃふか、いい」
「よくないし」
ここの通貨がわからない上に、物価もわからない。
高校でも、走ることだけに青春を割いてきたあたしが、バイト経験などあるわけなく、どうお金を稼げばいいのか。
「困ったな……」
ドアがノックされた。時刻は8時を少しすぎたところだ。
『おはようございます。よく眠れましたか?』
目の前にぷかぷかとウードさんがいる。
だがとなりには、ボルゾイ風の二本足で立つ白いワンちゃんが!
背丈は自称160センチのあたしに迫る勢いだ。
服装はスカートにエプロン。女性のよう。
長い毛がサラサラできれい。鼻筋も整っていて、この種族の中でも相当な美人じゃなかろうか。
「……あ、おはようございます。しっかり眠れました。朝もサウナと温泉入っちゃったし」
『それはよかったわ。あたしはタンテ。コボルトは初めて?』
「あ……。すみません。その、初めてで、それに、綺麗な毛並みなので、見惚れてました……」
思った通りのことを言ってみると、
『お上手ねぇ』
タンテさんは大きめのサラサラヘアーの手で、口元をウフフと隠す。
なんて、エレガント……!
『ウードさんじゃ、お二人分のご飯作れないか、あたしが作ったの。簡単なものだけど、パンとキノコのスープ、スクランブルエッグに、トマトサラダ。デザートに、ベリータルトもあるわ。しっかり食べてね』
そう言って渡されたカゴを運び、テーブルに運んでいくと、ウードさんはコーヒーなら淹れられるといい、ミニキッチンでお湯を沸かし始めた。
皿に料理を並べていくが、シラチャがうるさい。むしろ、ヨダレがうるさい。
「シラチャ、ジュルジュルしない」
「たべていい?」
「まだ!」
ちゃんと並べおえたと同時に、ウードさんのコーヒーも入った。
「お話、あるんですもんね? 食べながらでも聞いていいなら」
ウードさんもコーヒーを啜りつつ、あたしたちはパンを食みつつ、『届け物』の話が始まった──
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