第14話 都の中は、しっかり異世界
ラノベやアニメで見た世界が、まんま目の前に広がっている!!
様々な種族をはじめ、衣装も冒険者は鎧にブーツに剣や弓、杖や斧も見える。
町人はチュニックにブーツ、商人は小綺麗な洋服に身を纏って、カッコいい!
連なる建物にはマークがぶら下がり、飲み屋や宿屋、換金所に、道具屋、薬屋と、あたしでもちゃんとわかるマークだ。助かる!!
「……アガるんだけど! めっちゃヤバ。めっちゃ異世界っ!」
建物は4階建てが最大って感じ。レンガ造りのしっかりした建物だ。
その前には露店が並び、手軽に食べられる軽食からドリンクなど、飲食系が並んでいる。
大通りの突き当たりには、『王家の家です』って喋らんばかりの豪華絢爛の宮殿がある。
かなりの大きさだ。横にも縦にも大きいし、何より、装飾がめっちゃされていて、あたしの語彙力じゃ、豪華、以外で表現ができないくらい、豪華。めっちゃ豪華。
「ぼくもみたいー! みたいー!」
飛び出そうとするシラチャをフードごしにおさえるが、激しい。とても、激しい。
「シラチャ、人があんまりいないところに行ったら、外に出してあげるから」
「やだ! サエとおんなじのみたい! みるのー!」
『ダメですよ、危険ですよ、シラチャ様!』
ウードさんは慌ててフードに何かをしたようだ。
『シラチャ様、ここから覗いて見てください』
穴を開けたみたい。
どのくらいの穴なんだろ……。補強しなきゃだめかな。
落ち込むあたしをよそに、シラチャのしょぼくれた声が聞こえる。
「わー……。たくさんひといる……こわーい……」
「シラチャ、たくさんの人に会うんじゃなかったの?」
「……こんなにいろんなひと、はじめてみた……こわーい……」
首の後ろに滑り込み、小さく丸まりだした。ふわふわあったかいが、どうも刺激が強かったらしい。
確かに人も多いし、種族もまばらだ。
ただ、あたしと同じ、黄色い肌に黒髪の人間はいないことは間違いない。
宮殿の前に、大きな門が構えてある。
選ばれし者だけが許された門のようで、人々の流れはその手前で二手に別れていく。
「ウードさん、あの宮殿? みたいなのに、王様がいたり?」
『そうです。今の王は4代目。16歳の人間だときいております』
「あたしの年下? マジ、スゴすぎなんだけど」
ガラガラと大きな車輪が転がる音がする。
あたしは慌てて道の脇へとずれた。
『ありがとな、嬢ちゃん』
声の方に振り返ると、荷車をひく馬がいる。
馬のはずなのだが、2本の角が生え、白黒のマダラ模様が特徴的。体はどさんこのように、丸みがあって、脚が太い。かわいい。
その荷車の上で綱を引くのは、……は? トカゲ……!?
「うううううウードさん、あの種族は?」
ウードさんはすぐ確認し、フードの横でうんうんと頷いた。
『あれはリザードマンですね。特産の岩塩を運んでいるんでしょう』
ひょっこり顔をのぞかせたシラチャだが、リザードマンのピロピロ揺れる舌に驚いたのか、再びしゅるんと戻って首元で丸まった。
『この都は、アウラシャ大陸のほぼ中央に位置してます。各地から様々な食材、物資が運ばれてきます。ここ10年で、とても豊かな都になりました』
「なら、尚更、温泉宿、復活させたいよね」
『えぇ、まぁ……』
苦く笑ったが、下心がないわけじゃないと思う。
たくさんの人が、過去にあの温泉宿で楽しんだことをウードさんは知っている。
これだけの人たちが今、温泉宿を知ったら、楽しんでくれるのは当たり前!
大盛況だったあの頃を知っているウードさんなら、より想像に容易い。
ひと気のない広場の日陰へと移動できたあたしたちは、喉が渇いたとうるさいシラチャに、持ってきたジュースを渡した。あたしもウードさんにジュースをコップで渡してから、瓶に口をつけた。
オレンジジュース、めっちゃうま! スッキリしてて、甘くて、美味い!!
「疲れた体にいいね、これ」
「うん! おいしー! ちょっとすっぱーい!」
『疲労回復に効果のあるジュースなんですよ』
ウードさんに言われたとおり、じんわりと体が軽くなっていくのがわかる。
リアルに効果がわかるジュースって、ヤバくない?
あたしはベンチに腰をかけ、まばらに歩く人たちを眺めてみる。
ふと、ここから、リルリアという人を探すのだろうか。と、思ってしまった。
ウードさんも黙ったまま、ただベンチに腰をかけ、人々を眺めている。
……マジか!? マジか!!!!
こっからが本番ってやつ!?
はい、ついたー! はい、リルリアさん! って流れじゃないの!?
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