表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師のポーション屋。疲れたときはやっぱりこれ  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/36

疲れ目と事案の境界線

「最近、目が霞むんですよね」


カラン、と扉。入ってきたのは町の傭兵の兄ちゃん。

いつもより半オフのテンションで、でも眉間だけしっかり死んでる。


「疲れ目か?」

「この月に入ってから特に酷くて…」


うんうん、よくある。季節の変わり目で光量が変わると、

冒険者は一気に眼精疲労が来る。あるある。


「で、目に効くポーションありますか? できたら——」


ちょっと身を乗り出してくる。


「可愛い子のあれも透けて見えるくらいの…」


「事案じゃねぇか」


クリム「きゅッ!?」

ルゥ「…………わふ(呆れ)」

店内の空気、秒速で重犯罪未遂。


「いや違うんですよ店主さん! いや本当に! そういう意味じゃなくて!」

「いや“そういう意味”以外の解釈が難しいワード選んだの自覚してるか?」

「う゛っ……」


俺はため息をつきつつカウンターを軽く叩く。


「まず前提を直すぞ。透けて見える系ポーションはこの世に存在しねぇ」

「ですよね……」

「あと作らねぇ。倫理的にも魔術的にも完全アウトだ」

「すみませんでした……!」


クリムが彼の肩をぺちぺち叩く。慰めか呆れか判別不能。


「で、真面目な話、霞むってどんな感じだ?」

「光がぼやけるのと、近くの文字が急につらくなって…」

「遠くは?」

「遠くはまだ……でも早朝の城壁見張りで、的が二重になったり……」


おい、それ普通に職務影響出てるレベルじゃねぇか。


「睡眠は?」

「少し……減ってます。依頼が続いてて、資料読むのが夜中に……」

「食事は?」

「カロリーポーションだけで……」

「お前、死ぬ気か」

「すみません……」


ルゥがその足元でため息をついた。重い。犬なのに。



◆本質


→ 目の問題の半分は疲労と生活習慣の破綻

→ 視線の酷使と睡眠不足

→ “透けて見える”はストレスによる逃避ファンタジー


要するに、真面目に疲れてる。

可愛い子がどうこう言ったのは“現実逃避の軽口”だな。



◆調合するポーション


俺は棚から材料を取りつつ説明する。


「まずはこれだ」


◆眼精クリア滴(弱)

・目の周りの筋肉を軽く緩める

・ピント調整の負担を減らす

・即効だが、過信すると逆にぼやける

「一日二回。寝る前と朝だ」


「ありがとうございます……!」


「で、こっち」

◆光量バランサー香(卓上用)

・部屋の“光の色温度”を整えて疲れを軽減

・魔術光じゃなく自然光系

「夜中に書き物するならこれ焚け。目の奥の痛みが軽くなる」


「助かります……!」


「最後に、生活改善セット」

◆微睡み誘導ポーション(弱)

・依存性なし

・眠る準備を身体に思い出させるだけ

「寝る前に一滴だけ。寝不足が続くと、どんな魔法使っても目は死ぬ」


兄ちゃん、目の下のクマが消えそうな勢いで感動してる。


クリム「きゅぅ~(よかった)」

ルゥ「わふ(寝ろ)」



「店主さん……その……透けるやつは本当に……」

「ない」

「……ですよね」


「まあ、疲れてる時は変な方向に思考ぶっ飛ぶのは分かる。

 けど、現実逃避するよりまず寝ろ」


「はい……! 今日から寝ます……!」


「生きてりゃ誰だって霞む。

 でも、前に進むぶんには、視界がちょっとクリアになれば十分だ」


兄ちゃんは深々と頭を下げて帰っていった。

扉が閉まると同時に、俺は小声でぼそり。


「……可愛い子の…が透けるとか、何十年ぶりに聞いたワードだな」

クリム「きゅ(呆れ)」

ルゥ「わふ(お疲れ)」


さあ、次はどんな悩みが飛んでくるかね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ