第8話 訪問
「お邪魔します……」
2人が入ってくる。
「どうぞどうぞ!お水くらいしか出せないけど…」
ソファーに誘導し、水を出す。
「………」
「………」
「………」
なぜか2人とも黙っている。気まずい。
「……あのさ、俺が感じたこと言っていい?」
「うん」
「…………この部屋は、何かがおかしい」
「……え」
「宮本、お前なんかあっただろ?この部屋で。雰囲気に違和感を感じるし、それに、部屋に入った瞬間顔が強張ってた。」
「……うん。よく分かったね。」
「…そっか。友達のことだからな。そのことは俺たちには言わない方がいい。入居条件に、似たようなことが書いてあるから。まあ分かってると思うけど…。」
「うん、ありがとう」
そこで、今まで黙っていた美月ちゃんが喋る。
「叶恵ちゃん、私たちにできることは少ない。だから、この入居条件は、絶対に守って。」
「俺もそう思う。」
「…分かった。」
「ただ……本当に入居条件を守れば安全なのかは、俺には分からない。守るに越したことはないと思うけど、気を付けて。」
氷室くんは優しく笑った。
「…何に気を付ければいいのかさえ、抽象的だけど。」
「いや、こちらこそありがとう…。」
「……よし、暗い話はこれで終わり!てか叶恵ちゃんさ、部屋めっちゃきれいじゃない!?私女子の部屋入ったことなくて…すごい新鮮だし、嬉しいの!」
「えぇ!ありがとう!…でも、女子の部屋入ったことないって…?美月ちゃん可愛いし、優しいから友達たくさんいるんじゃないの…?」
「…うん、実はそれがそうじゃないんだよね。ほら、私って可愛いから!!!女子から嫉妬されたりして……ね。氷室とはなぜかずっと同じクラスで、よく隣の席になったりしたのが良い思い出!だから、叶恵ちゃんが仲良くしてくれて嬉しいんだよ。」
「美月ちゃんといると楽しいよ…!友達になれて良かった!」
「私も友達になれて良かった!」
「……うん。」
しばらくして2人は帰っていった。
「この部屋は、何かがおかしい、か」
私は天井を見つめながら、一人でつぶやいた。




