第7話 友達
大学に着いた時の私の顔は真っ青だった、と美月ちゃんが教えてくれた。
だからなのか私に、除霊の家系だという人を紹介してくれた。
「この人は氷室伊織さん。除霊の家系らしいよ。高校からの友達なんだ」
「どうも、氷室です。」
「あ、宮本です」
最初は気まずかったものの次第に打ち解けていき、3人で行動することが多くなっていった。
「氷室くんって除霊の家系らしいけど、除霊とかしたことあるのー?」
「いや、俺はただ単に家系ってだけだから…危なそうな雰囲気くらいなら感じることはできるけど。それに、霊はそんなに好きじゃないよ。怖いし。」
「へえ、氷室くんでも怖いんだ!じゃあ私が無理なのも当然じゃん。」
「私も怖いよ!でも、ホラー映画とかは好きかも。フィクションって感じがするから。」
「俺は小説とかアニメなら平気だけど、映画はそんなに…。美月さん、いつもホラー映画一緒に観に行こうって言うから止めるのに必死。」
「えっ、あれは氷室が優しいから私を心配して止めてたわけじゃないってこと…?嘘、初耳なんだけど!」
「俺は優しいぞ!」
「じゃあ叶恵ちゃん一緒に行こうよ!」
「ちょっと!そういわれないようにさっきまで気配消してたのに!」
「…ねぇ君たち可愛いね!この後お茶でもどう?」
「……は?」
「ヒッごめんなさい!」
私たちがナンパされているときも、氷室くんが睨むだけで相手は逃げていった。
ものすごく頼もしい友達ができたね、と美月ちゃんと笑い合った。
□
ある日、氷室くんがマンション入居者の募集の紙を見せてほしいと言った。
「これは…。誰だってこれ見たら怪しいって思うだろ」
「ぐっ」
「そうだよね!?やっぱりおかしいよ、このマンション」
「家賃が安いしそんなに危なそうじゃなかったから選んだんだよぉ…」
浴室のことは言っていない。考えるだけでおぞましいからだ。
「……なあ、俺たちこのマンションに行ってみてもいいか?」
「私も気になるし…!」
「まぁ良いけど…。2人とも大丈夫?」
「もちろん。大丈夫大丈夫!すぐ帰るから!」
2人を心配しながらも、私は1人ではないことに安心感を覚えた。
□
「外見は普通のマンションだね。」
「でしょ?」
エレベーターで4階までのぼる。
そこで私は思い出した。
「あっ、私、上の階の人に挨拶するの忘れてたから、先に入ってて!これ鍵!一番奥の部屋!」
「え?ちょっと、待っ…」
無理やり鍵を押し付けて、5階のボタンを押す。
ゆっくりと上がるエレベーター。
5階に着くと、私は一番奥の部屋に向かって歩き出した。
エレベーターは1階に下がっていったようだ。
ピンポーン。
………
この反応、覚えている。空室のやつ。
どうしたら良いか分からなくて考え込んでいると、降りて行ったエレベーターが5階に着いたようだった。
「あれ?あなた、この階の人?」
出てきたのは、買い物袋を持っている中年のおばさんだった。
「あっ、いいえ。私、下の4階の者です。」
「あぁ、最近引っ越してきたって噂の404号室の方?」
「はい。」
噂とは何だろうと気になった。
「ちなみにそこの504号室、空室ですよ。」
「そうなんですか!実は隣の2部屋も空室みたいで…。空室多いですね。」
最近は空室という言葉をよく聞く。
「え?うーん、このマンションはほぼ空室ね。住人は片手の指の数いるかいないかくらいだし…」
「そんなに少ないんですか?」
「そうよ。でも、あなたも気を付けてね。404号室の住人、いつも急に来てすぐいなくなるんだから。」
「はあ。ありがとうございます。」
少し話して4階に戻る。すると、404号室の前に2人が立って待っているのが見えた。
ぱたぱたと駆け寄る。
「あれ?入ってていいのに」
「いや、、、この部屋、俺たちだけで入るとまずいことになりそうだと思って。」
氷室くんから言われた言葉に戸惑う。
「そっか…?まあ、鍵開けるね。」
鍵を回した。




