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【33】 教科書と実践の違いについて

勉強できても、実際に活躍出来ない人っているよね?って話。

途中までは美人メイド視点です。

「どうなさったのですか?」



気遣う涼やかな声に反応するのは、騒々しい物音。

主から「入るな」と命じられ、しかし手伝えないもどかしさから

その場から動けない美しいメイドがクローゼット入口でうろうろしていました。


その主ココット・エルベリーはというと


朝から王家の方からの依頼である人形制作に勤しんでいたかと思うと

突然立ち上がり主は一目散にクローゼットに駆け込まれました。

理由を聞いても、手伝いたいとお願いをしても


「一人でやりたいからいいの。

誰か来るかもしれないからヘレンは入口で待機していて」


としか返ってこない。

主だけ働かせておいて自分はのんびり突っ立っているわけにもいかない

しかし、主は何故か何でも自分でしてしまう癖がある。

…癖と言うより御実家での指導なのだろう、体の芯まで染み付いて

それが“当たり前”として主の中にあるのかもしれない。


でも、自分というメイドがいるのだからもっと使って欲しいと思ってしまう。

口に出すのは憚られるが…



「あー!やっぱりないーーーー!!」



大声がしたので中を覗きこ…もうとしたら、主が急に出て

部屋を出るドレスのすそだけが見えた。早い…


大急ぎで主を追いかけると、主賓用…ではなく主人用でもない

使用人が使う勝手口で主と男性が言い争う声が聞こえ猛ダッシュで駆けつけると

複数の従僕に行く手を阻まれている主と執事のトールマンが話してるようだった



「トールマン、私急いでいるの!」


「如何様な御用事でもココット様をお屋敷から出さないよう

旦那様から言付かっております。ご用でしたら我々がいたしますので…」


「違うの!私がしなきゃいけないの!あと少しなの!そこどいてください!」


「どのようなご用件なのですか?」


「あーーーーーーーーー!!話してる暇ないの!お願いどいてっ!!」


急いでいらっしゃる主が使用人達をかき分けようとしても、

相手は大人の男達。小柄な女性である主がいくら頑張っても

男たちを多少揺らす程度しかできません。


「もーーーーーーー!!!」



「何事だ」



今にも泣きそうな主が雄たけびのような声を張り上げるのと重なるように

重厚なしかし周囲に響き渡るような旦那様の声が喧騒を打ち消した。




「何事だ、トールマン」


急いで買い物にいかなきゃいけないのに、

これまたお掃除さんに見つかってしまった私は

誰かが呼んだのかトールマンが走って私を止め、勝手口まで引き戻して

買い物なら自分がいたします!と息切れしながら言うんだけど

私は、自分で作ったものは自分の好みで物を選びたいから私が行く!

っていうのに下がってくれなくて気があせっている時に後から

ウィルソン様がおいでになりました。


私が使用人勝手口にいるからかものすっごく眼光鋭く見つめられています

ものすごくお怒りだ!うぅ、怖い。


「はい、ココット様がこちらから外出なさろうとしておりましたので

お止めしておりました。出迎えもせずに申し訳ございませんでした」


「それはいい。ココット嬢、どこへいこうとしていた?」


「…し、手芸屋です」


「何故行こうとしていた?買い物ならば頼めばいいだろう」


「え、と…殿下に頼まれていたぬいぐるみに使いたいのですが

そういうのは自分の好みで選びたいのですが何があるか分からないし…

そういう自分の好みとかを相手に説明するのが分からなくて

それにもうすぐ来られるのでしょう?だから早く仕上げなきゃと思…いまして」


「ほぅ…で、何を買うつもりだったのだ?」


「リボンです。でもね、リボンでもレースが付いたのとか

透けているのとか、刺繍が入ったのとかグラデーションになったのとか

染めたやつとか色々あるんです。それで、人形に性格とか考えてあるんですけど

その子に合わせたリボンを付けてあげたいんです!

あとねあとね、ボタン付けたりいっぱい小物付けたいから

どんなもの売っているのか見たいんです!!外出の許可をください!」


自分の気持ちと考えを伝えた私を見て頷いてくださったので、行ける!

と反転させたら手をつかまれ相手を見たらウィルソン様で

トールマンに小声で何か話していたかと思うと私を引っ張って屋敷内へと

歩き出しました。ウィルソン様、私行きたいの反対の方向!!


「あ、あの、ウィルソン様!」


「みなが支度をしている。その間私と待っていなさい」


「あ…はい!」


そっか。そうよね、馬車とか…あーと、うん…なんだろう?

なにか色々支度あるのよね。お父様がお出かけになる時

玄関先で皆がバタバタ動いていたもの。急な出かけになるから

いっぱい待ってなきゃいけないんだわ。




………………………で、ずいぶん経つのだけどまだかしら?




ウィルソン様の後ろの時計を見ると、1時間半くらい経っているわ。

毎度のお茶もケーキも食べてしまったし、ウィルソン様は腕を組んで

目を閉じられているし。ただの5分がものすごく長く感じる。


こんなことなら、やっぱり一人で…


「一人で出かければよかった?」


「え?」


私の思っていたことの続きを向かいのウィルソン様に言われ

言葉の内容とすべてを見抜いていらっしゃるかのような瞳に

身動きとれない感覚を覚えドキッとしながらも、頑張ってはっきりと頷いた。


「……………。

君は何故使用人に買い物を任せ行かせると思う?

“貴族という存在”そのものが悪しき者の格好の餌なのだぞ

それらの者に利用されないため防衛の手段で遣いに出すのだ

エルベリー領では領民皆が互いに連携しあい君を護っていたかもしれない

だがここは違う。様々な者が各方面から行き来するため

誰が善で誰が悪か分からない。隣の人の顔や名前を知っていても

生い立ちまでは知らない。そういう連中だらけだ。

そんな中飛び込んで誰が助け誰が自分に仇なすものか判断できるのか?」


「で、も…私だっ…ご、護身術…」


いつものウィルソン様に無い凍え固まるようなオーラで怖いお顔で

いつも以上の低いお声で仰る厳しい口調の問いかけに私は返答するのが精一杯

流れ落ちそうな涙をこらえていると、前で布がこすれる音が…


ウィルソン様を見たらいなくて、気配に気付いた時には

隣で座っていて…


「………!!!」


腕をつかまれ強く抱き寄せられてました!!


「私から逃れてみなさい。私は君の兄姉のように

特別に鍛えているわけでもなく“護身術”程度の力しか身に付けていない

君が“護身術”を身に付けているというのなら私程度の男ならば

退治は出来なくとも逃れることが出来るだろう?」


「~~~~~~~っっっっっっっ!!!」


突然の行為と“護身術”と言われてもそれ以上鍛えているでしょ!?

と言いたくなる抵抗できない力に強く抱きしめられ頭が真っ白になって

分厚い背中をポスポスしたり触り心地いい服を引っ張ったりするのがやっと…


「私程度の男は町中では普通に歩いている。

それ以上に鍛えたものもたくさんいる。

小柄で華奢な君をどうこうすることなど容易いだろう。

被害に遭ってからでは遅いのだ。さらわれ身代金を要求される程度なら

まだいい方だ。心身ともに消えない傷を付けられたり…最悪命を奪われる。

そうなったら遺されたご家族は深い傷を一生負う事になるのだそ?

君は、あの優しいご家族をそこまで心配させ傷つけたいのか?」


私は、ふるふると首を振るので精一杯だった。


ウィルソン様が町中の人の中でどの程度かは知らないけれど

男性に突然襲いかかられ、こんなに頭がパニックになるなんて思わなかった。

ウィルソン様に抱えられお部屋まで連れていってくださったこともあるので

たぶん軽い?私を担ぎ上げて連れ去るというのも簡単なのだろう。


顔に傷を作っただけで取り乱したお姉様を心配そうにじっと見つめてらした

お父様のお顔を思い出した。もし私がいなくなったらお二人は…兄様は…

そう思ったら、お外に出るのは止めようと思いました。


その事を目の前のウィルソン様にお伝えしたら、

私の涙を拭いてくださりながら


「わかってもらうためにした事とはいえ、すまなかった。怖かったな」


と、とても気遣わしげに仰ってくださいました。

いつもの優しい光を宿した瞳と暖かい声色にまた涙が出て

トールマンがノックをするまで笑いながら涙を流し

それをウィルソン様に拭いてもらってました。



うぇぇぇん。どうやったら涙止まるの?

トールマン「私は、いつドアを叩いたらよろしいのでしょうか?」


少し前からいた執事のつぶやき(笑)


とちゅう興奮すぎて令嬢は伯爵にタメ口してましたねw

どんな勉強も実社会で使わないと意味が無い。

とくに武術とか護身術とか体術とか実際使って経験積まないと

実践で使えないよね。コツやらタイミングやら型がわかるので

そこを思い出せは使えるのだろうけど。


ココットも練習では先生が褒めるほどすごかったんです。

ですが、実践では使った事ありません。完全な経験不足。

若い子特有の“成績良かったから実践でも100%使える!”

ていう思い込みですよね。


実際襲われたら頭真っ白ですよ。声なんて出ませんよ。

私は、年下の少年にカッター付き付けられただけですが

ひるんで声なんかでませんでしたからね。


大人はそういう若者の勢いや盲信を心配します。


今一番の心配は、「自転車で不審者から逃げきれるから」と

夜まで居座る子供の友人ですね。自転車はスタートダッシュ遅いんだぜ?


それよりもさ、伯爵どさくさにまぎれて抱〔この後のコメントは削除されました〕

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