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【21】 お茶会準備 ―隠れて準備―

冷たい風が、木々を揺らし本格的な冬がすぐそばまで来ているのを感じながら

テーブルクロスに刺繍を施しています。いま1つの隅に花を咲かし終えました

あと、3つの隅と4つの側面!気を抜かず頑張る!!



「こんなところにいたのか、寒くはないのか?」



「ウィルソン様…」


2つ目の隅に2本の花を咲かせ終えると、

いつもの心地いい低い声で私を気遣うウィルソン様がお出でになりました。

“こんなところにいた”…とは、私をお探しになっていたのでしょうか?

しかし、お聞きすると


「そうではない…ただの、散歩だ」


と、返ってきました。ロダムさんが知らないだけで、

ウィルソン様は結構花壇の方に来られるのかもしれないですね。

よかったですね、ロダムさん!


「隣、空いているか?」


「はい!は………申し訳ございません。片付けます」


休憩されるはずの場所には、ランチバスケットと裁縫道具が

我が物顔で(?)居座っていたのでベンチ後ろのブロック塀に

置いておきます。刺繍するだけなら糸とハサミだけあればいいし。


静かに腰を降ろしたウィルソン様は持っていた本を開いて静か読み始めました



「……………………………」


「……………………………」



……これ、何かしゃべらないといけないかな?



別に隣に誰かいても、黙々と刺繍する事は出来ますよ?

でも、それではご当主を放置してるとか…不躾とか言われないかしら?


「あ、あの、よくこの庭に来られるのですか?」


うはぁぁぁぁ、ありきたりすぎる

“今日はいいお天気ですね”と同じくらい定番の会話じゃないの!

もぅ、ちょっと楽しませたりするネタとか出ないのかしら。私の口は。


「いや…今日は、たまたま時間が空いただけだ」


「そうなんですか…………」


“そうなんだ”で終わらせちゃだめぇ!!

あうー。何か楽しく過ごすお話とかないかな。うーうーうー。



うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~!!!!!!!



「お茶会とやらに間に合いそうか?その刺繍は」


「ほ!は…まだわかりませんが、全力で頑張ります!

ウィルソン様は来られますか?お茶会。色んなお茶とケーキを揃えて

食べ比べとかもするんですよっ!」


な、なんとかウィルソン様に助けていただきました。

さすが、大人な方ですね。場の空気を盛り上げたり話術が長けてたりと

するんでしょうね。デビュー1周年にはまだまだないスキルです…


「せっかくの女性だけの茶会に、私が行っては気詰まりだろう

いつも2人は窮屈な邸内にいるのだから楽しんできなさい」


「……は、はい。ででも、お時間ありましたら少し覗いてみてください

みんな頑張って準備したんですよ!いつも私達がどんな話をしているのか

だけでもいいですから、いらしてください!」


お兄様の参加で、レフィリア様もお喜びになるかもと

常々思っていた私はかなり力入ってお誘いしてしまった

はしたなかったかな?女の子から男性を誘うなんて……


でも、ウィルソン様はその辺気にならなかったようで

「わかった」と仰って微笑まれた(ような気がした)

お顔全体はそう変化なかったけど、雰囲気と瞳が、ね。優しい感じになった?

フワ…とか、フ…とかそんな感じ。そんな感じ!!


思わず、ドキッとしてしまってまた刺繍に戻った。


こんな時、自分の局地的な集中力発揮を褒めてあげたい!

隣の美形オーラに屈することなく、黙々と縫い上げていったわ!


黄色と陰の部分の薄橙の色の配色加減で1つだって同じ色にしないんだから!

私は、鮮やかな黄色が多めの方が好きだけど

レフィリア様が、“鮮やかで”って仰るくらいだから

薄橙が多い方がいいのだろうなぁ。でも、そればかりだと

つまらないから橙をほんのちょっと入れてみたり、

反対にレモンイエローを端に入れてみたり色々バリエーション豊富にしてみた





「っあ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~、きゅうけぇー」





つっかれたぁぁぁぁ…



「ぷっ…」



「!!?」


しししししししししし、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ととと、隣にウィルソン様いらしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

誰よ“隣の美形気にすることなく集中できる!”って言った人出てきなさいよ!


はい、ジブンデス。


って、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

恥ずかしい恥ずかしすぎるよ!!


もうやだぁ。


「今の…忘れてくださぃ………」


恥ずかしくて、消えたい。今なら花壇の土にだってもぐるわ、自分で!


「失礼、あまりに自然体なので、つい…」


ついって何!?


肩揺らして、笑いをこらえる“つい”って何ですか!!?もうやだー。



「コホン…疲れたのなら、屋敷でお茶でも飲まないか?」


「飲まな……!じゃなかった、も、もう一段落ついたら帰…」


「今日は、フルーツがたくさん乗っているケーキだと聞いた」


「!?」


「添えるアイスの出来栄えもいいらしい」


「!!?」


「今行けば、暖かい紅茶がすぐ飲めるだろうな」


「!!!」


「では、行くか」


「っは、い…」



なんだか、乗せられた感がするけど…


ウィルソン様をお待たせするわけにもいかないので

すぐ片付けて荷物を1つ持っていただいてお屋敷に戻りました。

(荷物渡したわけじゃないの奪われたの!しかも、重い方の裁縫箱をっ!

取り返そうとしたらあの長い足でスタコラ歩いていかれるのよ!

でも、置いていかれず奪おうとすると早歩きされて私が諦めると

私のペースに戻るので“私が持つと言ったのだから奪うな”という

意思表示なのだろうけど、館の主に持っていただくって

傍から見たら、あつかましい人だ、私…)




でも、ケーキとお紅茶は、大変美味しかったです。

“乗せられた感”ではないです。“完全に乗せています”(笑)


ココットは、外で開放的な気分を味わいながら刺繍する人です。

部屋に篭ってじっとお刺繍するのは、レフィリアのほう。

そして、伯爵は決して“話術に長けて”いません!!(笑)

“興味のない人には話しかけない話さない”

という人なので、対話スキルが他の貴族よりもかなり下です。


今日の、モルトバーン伯は彼の中で精一杯頑張りましたww


その結果何とかラブいものになったでしょ?(え?まだまだ?)

次から、お茶会です。

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