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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「わ、私、ケモミミが生えちゃった!」

「復活アイテムはもう使えないはずなのに……。もしかしてHPが僅かに残っていた!?」

「いや、そんなはずねぇ! ダメージは1億を超えたんだ。確実に死ぬだろ!」


 お父さん達が困惑しているのが見える。

 まだ体は動かないけど、宙に浮いているから変な感じ。っていうか、なんかすっごい光ってて普通に眩しい。


【沙南は新たな称号を手に入れた。神獣の化身】


「な、なんだ!? おい、この称号知ってるか!?」

「わ、わかりません! 聞いた事も無い称号でパネェッす!!」


【沙南のアビリティが発動。神獣化】


 バチンバチンと体のあちこちから変な音が聞こえてくる。そんなよく分からないアビリティが少しずつ落ち着いて、私はようやく地面に降ろされた。


「お、おい沙南、なんだその体……」


 お父さんが目をまん丸くして私を指差してくる。


「え? 特になんともないけど……?」

「ステータス開いて自分の姿見てみろ!」


 言われた通りにステータス画面を開いてみた。

 ここには自分の使っているアバターを装備も含めて見る事ができる。そこに表示されている私の姿は驚くものに変わっていた。

 頭からは獣の耳が生え、腰のあたりからはモフモフの尻尾が伸び、顔や手足の肌には異様な文様が浮かび上がっていた。


「わ、私、ケモミミが生えちゃった!」

「いや、驚くところはそこじゃないけどな……。ってそんな事よりも!」


 冷静にツッコんだお父さんが私に近付いてきた。


「さっき取得した称号、ちょっと見せて見ろ!」

「う、うん」


 称号一覧を開いて、さっきの称号の解説を開いてみる。するとお父さんがズズイっと私にくっついて画面を覗き込んできた。

 えへへ~♪ お父さんと頬っぺたぴったんこ~♪


 神獣の化身:絶技・獣神咆哮牙を習得し、使用回数を一定以上にする。さらにその状態で戦闘不能になると低確率で暴走状態に陥る。アビリティ、神獣化を取得する。


「……なんだこれ。あのクソ運営、密かにこんな機能を実装してたのかよ!」


 ふぇ~……。クソ運営なんて言ったらナーユちゃんが怒っちゃうよぉ。


「次だ! 他にもアビリティを習得しただろ!?」

「うん、けど見ちゃっていいの? お父さん、こういうのは自分で習得した時のお楽しみにするタイプだったよね?」

「ぐ……仕方ねぇだろ! こんなの見ないと気になり過ぎて収まりがつかねぇよ!」

「はいはい」


 まったく、お父さんも子供なんだから。


 神獣化:バトル中に戦闘不能になるとHP全快の状態で復活できる。さらに元のステータスにHP100万。それ以外は1万をプラスする。


LV :154

HP :1013540

MP :10915

ATK:17960(25144)

DEF:11165

INT:10263

RES:10648

AGI:11354

DEX:11028


「……最悪だ……」


 お父さんが私の隣でそう呟いた。


「よりにもよって沙南がこの能力に一番乗りかよ。いや、俺とのバトルでこれが発動した事が一番の不運か……」


 お父さんは苦笑いを浮かべていた。

 好きなゲームでの新たな発見。けどそれが自分にとっての不運。そんな複雑な気持ちなんだと思う。


「で、どうする? 戦闘再開する?」

「お? おう! そうだったな……」


 私がおずおずと聞くと、お父さんは我に返ったように私から距離を取っていく。


「こうなりゃヤケだ! やってやんぜコンチクショー!!」


 そして気合いを入れて武器を構えた。


「それじゃあ行くよ!」


 私のほうから動いてみる。するとギュンと信じられないほどのスピードが出た!

 AGIに1万が加算された事で、ソニックムーブほどではないにしても高速で動けるようになったみたい。


「あはは。何これ凄く速く動ける! 楽しい!」

「くぅ~、攻撃力特化のくせにスピードまで速くなるとか反則だろ。こうなったら……」


 私は高速で動き続ける。お父さんは目だけで私の動きを追っていた。

 攻撃のタイミングを考えていると、さっき使った特技が使えるようになっているのに気が付いた。どうやらこの状態に変わるとリキャストタイムも完全に回復するみたい。

 自分のスピードに慣れた私は、お父さんの背後に踏み込んだ! そして拳をかかげて真っすぐに突いた!

 まずはほんの小手調べ!


【沙南が特技を使用した。咆哮牙】


「そこかっ!」


 お父さんが動いた! 私の攻撃に合わせるように、押し返すようにして飛び込んで来た!

 バキンっ!!


【シンギのアビリティが発動。ブロッキング】


 弾かれた私は大きく仰け反ってしまった。


「っしゃあ!! 一か八かの賭けだったが成功したぜ!! ブロッキングが自分だけの得意技だと思うなよ!」


【シンギが特技を使用した。雷切破斬】


 真上に掲げた剣に電撃が迸る。それを一気に振り下ろして私の体を切り裂いた。


「あぅっ!!」


【沙南のアビリティが発動。神の領域】

【沙南のアビリティが発動。タフネスガード】

【沙南のアビリティが発動。神獣の加護】


【沙南に13万8835のダメージ】


「は……? はぁ~!?」


 お父さんが口をあんぐり開けて驚いている。


「ちょっと待て! レベル1050の俺がどうしてこれだけしか与えられないんだよ!? おかしいだろ!!」


 そしてなんだかいちゃもんを付け始めた。

 まぁ私はアビリティを確認した時に見たから知ってたんだけどね。

 どうやらこの状態を『神化かみか』といい、いくつか能力が追加されるらしい。今発動したアビリティも神化専用のアビリティだ。


 神の領域:神化していない相手のダメージが50万を超えた時、自分が受けるダメージは50万となる。


 タフネスガード:HPが全快の時、受けるダメージを半減する。


 神獣の加護:神獣化している時、DEFとRESが10倍になる。


 つまり、相手が神化できないのであればほぼ負ける事はない。


【沙南がスキルを使用した。回復功】


 ピロリン!

 私のHPが全快となった。


「あ~! おい汚ぇぞ沙南!」

「いや、私に文句言われても……」


 このアビリティを見る限り、連続攻撃には気を付けた方がいいかな。それが唯一の弱点っぽい。

 まぁお父さんには教えないけどね。


「くっそ! ここにきて無課金でも強くなれる要素をぶっこんでくるとは……」


 お父さんが唇を噛みしめている。

 ちょっと可哀そうだけど、これは勝負なんだ。私だって負けられない!


「次はこっちの番だよ! 覚悟してねっ!」

「くっ!?」


 一気に滑り込むようにしてお父さんの懐に潜り込む。そのまま私は技を使用した!


【沙南が大技を使用した。神技、獣神滅砕牙じゅうしんめっさいが


 その瞬間、私達の周囲が闇に包まれて薄暗くなる。


「な、なんだ!? 神技だと!? それに体が動かねぇ!!」


 私の右手にバチバチと電撃が迸る。周りが暗黒に包まれているせいで、その光は一層際立っていた。

 そんな状況で、お父さんはただ突っ立っているだけ。どうやら本当に動けないみたいだ。


「ま、まさか……この技、ステートを奪っているのか!?」

「どうやらそうみたいだね」


 神技、獣神滅砕牙:消費1000。攻撃力30倍。神化していない時の全ての能力を無視できる。ゼロ距離で発動させると特殊仕様に変わる。


 この特殊仕様というのがステートを奪い必中になる効果みたいだね。

 ステートを奪うというのは、格闘ゲームでよく使われるプログラムだ。

 キャラクターが超必殺技を使った時、最初の一発目がヒットするとボコボコと乱舞に繋がって規則的な動きを見せたりする。

 またキャラクターがしゃべったり、攻撃の準備をしている間、相手は動く事ができなくなってしまう。

 つまり攻撃の演出を魅せる時に使われたりする技法で、発動さえしてしまえばこっちの攻撃が終わるまで動けないのだ。


「大丈夫だよお父さん。ステートを奪ってるという事は、そのうちステート抜けのアビリティも実装されるはずだから」

「ぐっ……うっ……」


 私は一歩、足を前に踏み出した。すると地面に亀裂が走り、蜘蛛の巣状に広がって行く。

 これがいわゆる必殺技の魅せ演出だ。


「お父さん言ってたよね。運も実力のうちだって。それがそのバトルの運命なんだって。だから、私は堂々とこの力で勝利を宣告するよっ!!」


 バチバチと弾ける右手を引いて構えを取る。その光は膨れ上がり今にもはち切れそうだった。


「これで、決着だよっ!!」


 大きく振りかぶった右手を一気を突き出して、お父さんの体に直撃させる。その瞬間に眩い光がお父さんを包み込んで、炸裂するように弾けとんだ!


「があああああああ!? ちっきしょおおおおおお!!」


【シンギに5億8555万9232のダメージ】


 断末魔が響き渡り、吹き飛んだお父さんが遠くの瓦礫に激突した。

 モクモクと砂煙を上げながら、その中でお父さんは光となって消えていく。


【シンギを倒した】


 ついに倒した。倒す事ができた!

 私はお父さんに勝ったんだ!!


「くぅ~……」


 嬉しい! 飛び跳ねて喜びたい気分だよっ!

 ……だけど。

 私はクルリと方向転換をして、もう一人の人物を見つめる。


「ひっ!」


 そこにはお父さんと一緒に来たカズさんというプレイヤーが強張っていた。


「えへへ~、ごめんね。恨みはないけど、勝負のためだから」


 そう言って、握り拳を構えて近付いていく。


「あ、あはは。見逃してほしいって言ったら、許してくれません?」

「だ~め♪」


 どっごーーーーーん!!

 そしてまた、大きな轟音と共に一人のプレイヤーが消えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ケモナーって獣娘とかに性愛を抱く人のことなんだけど…( ˙-˙)
[良い点] ついに明かされた絶技の伏線、土壇場の状況で引き当てるのはさすがですね あと戦闘中だと言うに、仲良くステータス確認する父娘がよきよき
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