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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「それで倒せるのなら、望むところ!」

 ズドン――


 カウンターによって出現した光玉は、忍者の体に激突する。すると、


 ――ドロン!


 ぶつかった瞬間に忍者の体は丸太に変わり、本人の姿が消えていた。

 これが『空蝉』の効果による絶対回避!

 けど本番はここから。2HITするようになったカウンター効果がどこまで反応するか……

 そして丸太と入れ替わった本体の忍者が少し後方に出現した。するとカウンターとなった光玉は再び動き出す。

 忍者が反応をするよりも早く、電光石火の一撃が忍者の体を貫いていた。


「ぐはっ!?」


 忍者がその場にうずくまる。

 や、やった。ついに一撃を与えたんだ!


【チコリーヌを倒した】

【服部半蔵の命の欠片が砕け散った】


 別のクランなので『敵』と認識されているログに心が痛む。そんなチコリーヌに私達は駆け寄った。


「アンタ凄いじゃない! あの忍者に一撃を与えたのよ!」

「えへへ……でも復活アイテムを持っていたのです。ごめんなさい。私にはこれが精一杯なのでした……」


 そしてチコリーヌの体は光となって消えていく。

 私達のために命を賭けてくれた女の子。沙南とどういう関係で、どんな会話をしたのかは分からないけど、初対面の私達を全力で守ろうとしてくれた。それだけで本当に純粋な子なんだという事はわかる。


「謝るのはこっちの方よ。支援できなくてごめん……」

「構わないのです。それではみなさん、次はイベントが終わった後で会いましょう……」


 そうして、チコリーヌは完全に光となる。私はそんな小さな手を、感覚が消えるまで握っていた。

 ああ、そうだね。また会えるんだもんね。次に会う時は、精一杯おもてなしをしよう。アンタのおかげで地下ダンジョン攻略部隊の上位実力者を倒したんだよって、そんな土産話を引っ提げてさ!


【瑞穂が詠唱を開始した】

【瑞穂のアビリティが発動。高速詠唱+1】


 やっと回復した魔法の詠唱を開始させて、私はルリに視線を送る。

 私の目の動きを見て、ルリは少し驚いた表情になった。ちゃんと私が何を考えているのか理解してくれたんだ。


【瑞穂がアイテムを使用した。回復薬】

【ルリがスキルを使用した。オメガヒール】


「ぬうぅ……まさか命の欠片を使わされるとは。だが問題はない。任務続行でござる」


 忍者が立ち上がって、短刀を構える。それに合わせて私達も杖を構えた。


「無駄でござる。お前達では我を倒す事はできぬ」


【服部半蔵がアイテム使用した。回復薬】

【服部半蔵がスキルを使用した。空蝉】


 確かに、あの絶対回避のスキルがある以上、私達の二連続で放つホワイトフレアでも倒す事はできない。けど、作戦が何もない訳じゃない!


【瑞穂が魔法を使用した。オメガブラスト】


 放った炸裂弾は一本の柱へと向かって飛んで行く。


「ぬ? どこを狙っているでござる!?」


 柱が爆破されると、この建物全体が揺れ始めた。

 そう、この廃ビルはもう内部はボロボロだ。

 最初から私が魔法を使いまくってあちこち壊しているし、狩人やチコリーヌが壁を壊している。ルリも盛大に魔法を使用しているから、あと一押しってところだった。


「この揺れは……ま、まさか!?」

「気付いた? アンタならもちろん飛来物ダメージを知ってるわよね?」


 忍者の表情が焦りを帯びていく。

 飛来物ダメージ。それはプレイヤーの攻撃とは別に、飛んでくる物体にもダメージ判定があるというシステムだ。

 プレイヤーが石を投げつけた時に、その石の大きさやスピードでダメージが算出されるらしいんだけど、投げたプレイヤーの攻撃力は関係ないので大きなダメージは期待できない。

 あくまでもリアルに寄せただけの仕様であり、普段はあまり気にもしない。けど、こんなビルが崩壊して無数の瓦礫が降り注いだとしたらどうだろう?

 リアルに寄せているという事もあり、高レベルでもまず助からないはずだ。


「くっ!! そうはいかぬでござる!」


 忍者が一直線に外へ逃げようと動き出す。だがそれと同時にルリも動いていた。


【ルリがスキルを使用した。ソニックムーブ+5】


 忍者よりも速い動きで、その腰にタックルを入れてしがみ付く。そして必死に足止めをしていた。


「な、何を!? 心中するつもりでござるか!?」

「それで倒せるのなら、望むところ!」


 攻撃を仕掛けると『空蝉』が発動して抜けられる。だからルリは攻撃はしないで、必死にしがみ付いていた。


「このぉ!!」


 忍者が武器を振り上げて、ルリの背中に突き刺した!


【服部半蔵の攻撃】

【ルリがスキルを使用した。オメガヒール】


 攻撃されては回復をして、何度も何度も堪えていた。


「しつこいでござる!!」


 それでも、忍者の攻撃は激しさを増して、ついにルリのHPが空になってしまった。


【ルリはやられてしまった】


 体が光りになって、それでも完全に消える最後までルリは必死になって押さえつけていた。

 そして、ついに建物の崩壊が始まった!

 壁が、天井が、何もかもが崩れ落ちる。そんな私の目に最後に映ったのは、大きな瓦礫に押し潰される忍者の姿だった。

 ごめんね、ルリ。こんな馬鹿な作戦に付き合わせて。でも、本当にありがとう。私もすぐにそっちに行くからね……

「う~ん……」


 ここはどこだろう? 視界が暗くて周りがよく見えない。

 死んだとしたら、イベントが始まった最初の草原に戻されるはずなんだけど……


「んっしょ……」


 体を起こしてみると、ガラガラと周りの石が押しのけられていく。

 あれ? ここって倒壊した廃ビル? 私って生きたまま埋もれてるの!?

 差し込んできた光を頼りに、ログを表示させてみる。


【服部半蔵を倒した】

【瑞穂のアビリティが発動。マジカルクッション】


 あ、マジカルクッションって確か、飛来物ダメージを魔法の力で激減させる、魔法職特有のアビリティだ! あまりにも地味で、今まで役に立った事なんてないからすっかり忘れてたわ……

 HPを見ると、僅かだけど体力が残っていた。

 私はなんとか這い出そうと力を込めてみる。するとアビリティの効果のせいか、割と楽に瓦礫を押しのける事ができた。

 這いずって、なんとか外に出る事ができた私は、大きく深呼吸をしてから瓦礫に体を預けるようにもたれかかった。

 勝ったんだ。あの地下ダンジョン攻略部隊の上位陣に!

 けど、その代償としてチコリーヌとルリと蜥蜴丸を失った。その中で私だけが生き残って……

 偶然とはいえ、私なんかが生き残って良かったのかな。明らかにチコリーヌやルリの方が戦力になったはずだ。


「ええ~い! 頑張れ私! 役に立ってみせるって決めたんでしょ!!」


 自分で自分を励ましてみた。

 そう、私はもうび~すとふぁんぐの一員! 沙南とルリの、と、とと、友達! だからみんなのために、生き残った私が頑張らないといけないんだ!!

 もっともっと頑張ろう。そうしたら沙南は喜んでくれるかな? これから私の事、頼りにしてくれるかな?

 ルリも私の事、見直してくれるかな? もっと沢山おしゃべりしてくれるかな?

 もっともっとみんなにかまってもらいたいから、そのためにいっぱい役に立たなくちゃ。


「って、何考えてんの私~!!」


 今はそんな浮かれてる場合じゃなんだからねっ!!


「よし! 休憩終わり! とりあえず沙南と合流しよう」


 そう決めた時だった。

 ザッ! と、足音が聞こえて、私は咄嗟にその方向へ視線を向けるのだった。

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