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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「だからこそ忍者は最強。故に我は最強!」

【グレンの命の欠片が砕け散った】


 私は突然現れた女の子に困惑している。

 地下ダンジョン攻略部隊にとんでもないダメージを与えたその子は、得意気なドヤ顔をしていた。

 クラン名には、soul Requiemって表示されているけど、沙南の事を知っているみたいだった。


「み、味方なの!? 沙南の知り合い?」

「はい! 私はチコリーヌ。沙南先輩とはすでに一度会って話をしているのです! クランは違えど、今の私はび~すとふぁんぐの味方なのです!!」


 どうやら本当に私達の救援に来てくれたらしい。原理はわからないけど、こんな攻撃力の高い子が助けに来てくれるのは嬉しい誤算だ。


「く、くくく、つまり俺達の敵って事なんよね? 全員倒せば問題ないんよ!!」


 ブッ飛ばされた魔法剣士が怒り狂った表情で立ち上がってきた。


「グレン、落ち着くでござる。慎重に行動しなければ危険な相手でござるぞ」

「はぁ~!? こんなレベルの低い相手なんか怖くないんよ!! 俺一人で十分だかんね!!」


 そう言って、ためらいもなくこの盾士……チコリーヌに突撃してきた!


「さっきのお返しなんよ! 喰らえぇ!!」


【グレンが特技を使用した。マジックインパクト】


 魔法剣士の武器が魔力を纏い怪しく輝く。そしてそのまま武器を振り下ろした!

 チコリーヌはその体をすっぽりと隠せるだけの巨大な盾で、その一撃をガードする。


【チコリーヌに0のダメージ】


 全く効いてない!!

 1000レベルを超える地下ダンジョン攻略部隊の攻撃でも、全くものともしていない!


「お返し! なのです!」


 反撃と言わんばかりに、再び七色に光る剣をブンと振るう。


「くっ!?」


 大きく飛び退いで、魔法剣士は一旦離れてしまった。


「グレン、むやみに攻撃を仕掛けるのは得策ではないでござる! 恐らくあれは盾士の絶技で作られた武器。性能が分からない以上、下手に攻撃をすれば『相殺』が発動してやられるのはこちらでござる」

「はん! 要は相殺が発動しないように攻撃すればいいって事なんね。簡単なんよ!」


 明らかに冷静さを失っている魔法剣士はチコリーヌしか見えていない。

 一撃をもらったのが相当悔しかったみたいね……

 そんで忍者の言う通り、相殺を発動させることが出来ればまず間違いなく一撃を与える事ができるはず。

 確か相殺の発動条件は……


相殺:自分と相手の攻撃をぶつけた時、威力の弱い方は打ち消される。物理なら物理。魔法なら魔法。さらに近距離技、遠距離技と性能を合わせないと発動しない。


 だったはず。


「あの武器、ユラユラしてて魔法なん? いや剣だから物理? ああ~もうわかんねぇけど、これなら安全に攻撃できるんよ!!」


 魔法剣士が剣を顔の真横へと持っていき、その先端をチコリーヌに向ける。


【グレンが大技を使用した。奥義、魔導砲】


 そして一気にチコリーヌへ突き出すと、エネルギーが解き放たれた!


「な~の~で~す~!!」


 チコリーヌも真似をして剣を突き出すと、なんとその剣が伸びて魔導砲を激突した!


【チコリーヌのアビリティが発動。相殺】


「なぁ~!?」


 当然のようにチコリーヌの一億を超える威力に勝るはずもなく、魔法剣士は再度吹っ飛ばされていった。


【グレンを倒した】


「す、すごい……。その武器の判定って遠距離魔法攻撃なの?」


 私が目を丸くしていると、チコリーヌが自分のステータス画面を開いて私に見せてくれた。


武器:獣王咆哮波

獣王咆哮波:遠距離物理攻撃と、遠距離魔法攻撃の両方の属性を持つ。


「……獣王咆哮波。沙南の秘技だ。って事はやっぱり沙南の力を借りて?」


 沙南マニアのルリが食いついた。


「はい! この力は沙南先輩が私に与えて下さったのです!」

「イケる! これなら勝てるよ!!」


 私がそう意気込んだ時だった。


2×1=にんいちがにん! 2×2=ににんがにん! 2×3=にさんがにん! 2×4=にしもにん!」


 またあのへんな呪文が聞こえてきた。


2×5=にごがにんにん、2×6=にろくにん! 2×7=にしちもにんで、2×8=にはににん!」


 経文を唱えるような一定のリズムと音域で、その不気味な声を響かせていた。


「に、2×9がない……」

「語呂が悪くなるからじゃない? そこまででちょうど端切れよかったし」


 そういう問題なのかな?


「にんにん。全く不甲斐ない者達よ。勝ちを焦れば足元をすくわれるのは当然の事。我は決して油断せぬ。慢心せぬ。焦りはせぬ。忍者とは常に冷静に、残酷に、慎重に相手を追いつめる。だからこそ忍者は最強。故に我は最強!」


 ゆらりゆらりと、ゆっくりと近付いてくるその動きが逆に威圧感を感じてしまう。

 圧倒的な存在感に息が詰まるほどだ。


「さ、三人で囲んで攻撃をするわよ!」

「……けど、まだほとんどの技がリキャストタイムに入ってる。それに下手な攻撃は反撃の危険性もある」


 確かにルリの言う通りだ。私達は相手の攻撃を一撃でも喰らったら、多分即死する。


「私がいくのですよ。お二人は下がっていてほしいのです」


 チコリーヌが一人で前に出た。


「い、いくらアンタでも一人じゃ無茶よ!!」

「お二人は遠距離攻撃が得意なクラス。リキャストタイムが回復したら、その時に援護してほしいのですよ。それまで私が時間を稼ぐのです!」


 そう言ってチコリーヌが忍者と対峙する。


「瑞穂、私にしっかりと掴まってて」


 ルリが真剣な表情でそう言った。


「え!?」

「多分、激しいぶつかり合いになる。忍者も隙あらばこっちを狙って来ると思うから、私はソニックムーブで回避に専念する」

「わ、わかった」


 ルリの体に捕まってチコリーヌを見守る。

 二人は睨み合った後に、同時に駆けだしていくのだった。

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