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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「どうせ逃げるなら、二人で逃げる!」

【シュウトに3万6525のダメージ】

【シュウトに5万0020のダメージ】


 魔法で爆発した狩人は宙を舞い、そして地面に落ちていく。


【シュウトを倒した】


 そして、光となって消えていった。

 やったんだ。私達が、1000レベルを超える相手を倒したんだ!


「や……やったーーーーーーーー!!」


 嬉しくて嬉しくて、私はルリに抱き付いた!

 ルリを持ち上げてクルクルと回った。

 感極まって頬ずりもした。

 そうして、そんな事をした後になってようやく我に返った。


「わあ~~!? ご、ごごご、ごめん! つい嬉しくて……」


 急に恥ずかしくなってルリから離れる。

 ルリは、ずっと忍者から目を背けずに警戒をしていたのだから。

 しかし――


「ううん。私も瑞穂と一緒に敵を倒せたの、すごく嬉しいから」


 なんとも予想だにしていないなかった言葉をもらい、さらにはニコッと微笑みかけてくれた事で、私の胸はドキンと高鳴った。

 ……ルリはいつもボーっとして、何を考えているのか分からない表情をしている。

 そんな表情のまま毒を吐いたり、非常識な事を口走ったりするから困りものだ。

 だけど私は知っている。そんなルリでも、意外と寛容があるという事を。

 というか初めて出会った時に、本気で潰しに来た私に『遊ぼう』と手を差し伸べてくれたのだから、その器は計り知れない。

 ……もしかすると、何も考えていないだけかもしれないけど……

 とまぁ、そんな経緯もありこのクランに興味を持った私だが、ここに入ってはっきりとした事があった。

 それは、ルリがとにかく沙南にベッタリだという事だ!

 何を見ているのかと思い、その視線を追ってみると沙南をジッと見ていた、なんて事は日常茶飯事。沙南が動くと連動して動いたり、そもそもこいつの行動原理や思考回路は基本的に沙南を基準として動いている。

 本当に、金魚の糞か! って思うくらい沙南の後ろに付いて離れようとしない。

 そんなルリに最初はやきもきしたものだけど、今はなんて言った?

 私と一緒に敵を倒せたのがすごく嬉しい? しかも笑顔で?

 強敵グッジョブ! 協力して深まる仲間意識にバンザイ!


「って、何考えてんだ私ぃ~……」


 カァ~ッと顔が熱くなるのを感じて、自分の顔を揉みくちゃにしてみる。


「何やってるの? 変な瑞穂」


 ガーン!! 一番へんてこりんな奴に変って言われた……


「気を抜いたらダメだよ。戦いはまだ終わってない。というか、未だ絶望的な状況に変わりはない」


 絶望的? あとは忍者だけだから、二対一でそこまで状況は悪くないような気がするけど……

 と、私がそんな風に考えていると、またまた狩人が開けた穴から人影が現れた。


「なんか時間が止まったり爆発が聞こえたりしてたんだけど、どういう状況なん? あれ? シュウトはどこ行ったん?」


 その男の人は剣と軽装で装備を固め、少し軽い感じがする短い金髪だった。

 レベルは1042。地下ダンジョン攻略部隊と表記されている。


「え……ちょ、まだいるの……?」


 エサを持っている人に群がる鳥のように、次から次へと1000レベルを超える相手が現れる。喜んだばかりだと言うのに、もう泣きたくなってきた。


「シュウトはやられた。向こうもなかなか油断できぬ相手でござる」

「うへ~マジなん? タイムストップとか使われてたし、結構な課金者なんかね?」


 忍者と軽装の人がそう話している。

 この人、データで見たけどどんなクラスだっけ? あまり覚えていないんだけど……

 名前もついでに見ると、『グレン』と書かれていた。

 あ~。確か魔法剣士の人だ。どちらかというと仲間を守る防御特化にしていたはず。


「瑞穂も気付いてたでしょ? 私と蜥蜴、そして瑞穂の所に一人ずつ地下ダンジョン攻略部隊が攻めてきた事を」

「う、うん。だから自分の身を守るのが精一杯で、ずっと逃げ回ってた」

「それは私も同じだったの。今、瑞穂の所に助けに来れたのはうまい具合に相手の隙を見つけただけで、決して倒してから駆け付けた訳じゃない」


 え……? つまりこいつはルリを追っかけてきた訳だから、こいつも倒さなくちゃいけないって事!?


「け、結構きつくない?」

「だから未だ絶望的だって言ってる。瑞穂は大技残ってる?」

「……ごめん。全部使ってリキャストタイム入ってるわ。ルリは?」

「私も同じ。ついでに魔法や特技もほとんどがリキャストタイム入ってる」


 え? 何これ。めっちゃピンチじゃん。


「もしかして私達、詰んでる?」

「だから未だ絶望的だと……略す」


 だけど、まだ希望がないわけじゃない!


「時間を稼ごう。そうすれば沙南が助けに来てくれるかもしれない」

「……それはない。瑞穂、クランチャット見てない?」


 当然、忍者から逃げ回るのに必死で見ていない。


「沙南は今、お父さんと対峙してる。だからここに助けには来れない」


 えぇ~……。ま、まずい。本格的にまずいって……


「グレン。我のサポートに回れ。慎重に、確実に相手を倒すでござる」

「いいけど、半蔵さんは少し慎重すぎるんよ。もう少し急いでたらシュウトさんもやられずに済んだんじゃないん?」

「否。急がば回れよくという。勝ちを急げば逆に窮地に陥る事となる。自分のペースを乱してはならぬ」


 なんだか相手も話し合いのようだ。


「ルリ、こうなったらアンタだけでも逃げて。ここは私が食い止めるから、アンタは沙南と合流して二人で行動するのよ」

「そんなのダメ! 瑞穂を置いていけない!」


 あれ? ルリってこんな仲間想いだったっけ?


「そんな事を言ってる場合じゃないでしょ! 今回のイベントは沙南の願いを叶える事が最優先なんだからね!」

「わかってる。わかってるけど、きっと沙南ならこんな時に仲間を見捨てない! そんな事をしてまで願いを叶えようなんて考えない!」


 す、すごい! ルリが私の心配をしてくれてる!? 沙南の願いよりも、私を助ける事を優先してくれている!? なんかめっちゃ嬉しい!!

 ……まぁ、沙南の思考を真似しているだけのような気もするけど、でもやっぱり嬉しい!


「どうせ逃げるなら、二人で逃げる!」


 そう言うと、ルリは私の体を担ぎ始めた。


「しっかり掴まってて!」


【ルリがスキルを使用した。ソニックムーブ+5】


 ギュン! と急加速をして一気に壁の穴から外に出ようとする!

 しかし……


「甘いでござるよ!」


 一瞬にして忍者がその穴の前に立ち塞がる。


【服部半蔵が特技を使用した。三日月斬り】


 そして小刀をルリに向けて振るってきた!

 凄まじい加速をまだ制御できないせいか、ルリは方向を変えられず、その一撃を体に受けてしまった。


「あうぅっ」


 体ごと弾き飛ばされ、私もまた投げ出される。

 ルリは倒れたままだった。


【ルリの命の欠片が砕け散った】


「ルリ! 逃げて!」


 私が叫ぶと、ヨロヨロと体を起こして立ち上がろうとする。けれど、その正面には忍者がすでに小刀を構えていた。


「はっはー! 半蔵さんはそのままその子を倒しちゃってほしいんよ! 自分はこっちの子を相手にするかんね!」


 まだ立ち上がれていない私に、魔法剣士が突撃してくる。

 まずい! そう思った時には剣を振りかぶって――


「これでまず一人目~!!」


 思い切り振り下ろした。


 ――ズガアアアアアアン!!


 その瞬間にまたしても壁が粉砕して、巨大な穴が開く。

 そしてその時の岩の破片が飛んできて、魔法剣士の頭にゴンとぶつかった。


「いってぇ!」


 今の衝撃でなんとか攻撃が中断され、みんなの視線が爆発した壁に集中する。すると――


「でええやあああ!! 助っ人参上~なのです~!!」


 そこから出てきたのは巨大な盾だった。

 巨大な盾がこっちに向かって突撃してくる。


「なんなん? 盾士?」


 その巨大な盾からブンと七色の剣が顔を出し、魔法剣士に飛びかかっていく。


「グレン! 避けるでござる!」


 忍者がそう叫んだ!


「へん! 盾士の攻撃なんて大した事ないんよ!」


 魔法剣士は装備している小型の盾で防御の構えを取ると、相手の攻撃をガードした。すると……

 ズシャッ!!


【グレンに1億0563万6595のダメージ】


「ぐっほおおおおおっ!?」


 防御特化であるはずの魔法剣士は破格のダメージを受けてブッ飛ばされていた。

 当の盾士はというと――


「初めましてなのです! 私、沙南先輩から言われて、び~すとふぁんぐの救援にやってきたのです!」


 ――そう、とても小さな女の子は言うのだった。

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