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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「いやいや、そんな事で恨まれても困るよぉ……」

『そうですね。もちろん簡単とは言いませんが、それでも沙南ちゃんはどの相手にも勝てるだけのスペックはありますよ。強いて言うなら『盾士』にだけは気を付けた方がいいと思います』


 そうシルヴィアちゃんに助言をもらった事を思い出す。

 その盾士は今、数人のプレイヤーの先頭に立ち、私に巨大な盾を向けている……


「って、なんでチコちゃんが私と戦う流れになってるのぉ!? 攻撃するつもりはないって言ったよねぇ!?」

「はぇ? なんででしたっけ? そう! 攻撃するつもりはありませんけど、び~すとふぁんぐに入りたいなら、私の防御力を見せつけてアピールをした方がいいよって『ソウルレクイエム』の皆さんに言われたのですよ」


 あぁ、このクラン、ソウルレクイエムって読むんだね。ってそんな事よりも!


「いやいや、私、このイベントが終わったら歓迎するって言ったよね!? 別にアピールする必要なくない!?」


 するとチコちゃんは口を半開きにしながら小首を傾げて考え込む。


「た、確かにそうなのです! じゃあ私は先輩の応援をするのですよ!」


 そう言って、チコちゃんは私の方へと歩み寄ろうとした。

 しかし、後ろにいる女性がチコちゃんの肩を掴んで引き留める。


「チビ子、私達と一緒に戦ってくれないの? 『今は』私達のクランでしょ!?」

「そ、そう言われてみれば……じゃ、じゃあやっぱり、皆さんと一緒に戦うのですよ!」


 ええ~!? リアルアバターを作った下りの時も思ったけど、この子、周りに流され過ぎじゃない!? すぐに懐柔されちゃってるよ!!


「チコちゃん! 私はチコちゃんと戦いたくないよ! チコちゃんはどうなの!?」

「わ、私も先輩とは戦いたくないのです……。やっぱり私は抜けるのです!」


 それでも後ろの女性はチコちゃんの肩を離さない。それどころか自分に引き寄せて真剣な表情で語り掛ける。


「酷い! チビ子は私達の事を仲間だと思ってないの!?」

「そ、そんな事はないのです……」

「私達は短い間でも、チビ子の事を真の仲間だと思ってた! 一緒に戦ってくれるって信じてた! それなのにチビ子は私達を助けてくれないの!?」

「うぅ~……。わかったのです。やっぱり皆さんを全力で守るのです!」


 え~……。これじゃあラチがあかないよぉ。というか、どうしてこの人達は私を攻撃してくるんだろう?

 見た所、ほとんどのメンバーが私よりもレベルが高い。中には400を超えている人もいる。自分よりもレベルの低いプレイヤーを倒してもイベントポイントは増えないはずなんだけど……


「えっと、なんであなた達は私に攻撃をしてくるの? 私、何か恨まれるような事した?」


 するとチコちゃんの後ろにいた女性が前に出てきて、私を睨みつけながら話し始めた。


「前回のイベント、デブピヨ討伐を覚えているな? 私達のクラン『soulソウル Requiemレクイエム』は最高報酬が貰える50位ギリギリをキープしていたんだ。もう残り時間もなく、確実に50位に入れると確信して、私達は喜び合った! しかしお前達び~すとふぁんぐは、どういうインチキを使ったのか知らないが直前で46位まで急速に上がってきたんだ! そのせいで私達は51位に転落! 結果、初めての最高報酬を取り損ねたんだ!」


 あ~、時間ギリギリでレアボスを倒して一気に追い上げる作戦がうまくいった経緯のやつだね。って、別にインチキじゃないよぉ!


「だから私達は誓ったんだ! お前らび~すとふぁんぐに会った時は、この無念を晴らすために叩きのめすとな!!」

「いやいや、そんな事で恨まれても困るよぉ……」

「うるさい! お前にわかるか!? 最高報酬を目の前にして、ハイタッチで喜びを分かち合っていたのに、いざランキングを見たら51位に落ちていたあの衝撃を!! ハイタッチで振り上げた両手を、微妙なテンションのまま静かに降ろさなくてはならなくなった私達に謝れ!!」


 えぇ~……そんなこと言われても、私達だってギリギリのせめぎ合いだったしなぁ。気持ちは分かるけど、イベントってそんなものだよぉ……


「チビ子、お前の防御力で私達を守ってくれ! 多分これが、最初で最後の大チャンスなんだ!」

「わ、わかったのです。先輩と戦うのは嫌ですけど、これが最後なのですよ!」


 ダメだ。チコちゃんをうまく丸め込んで味方にしてる。

 そんな私が声を掛ける暇もなく、ソウルレクイエムのメンバーが一気に動き出した!

 もう戦うしかない!


【沙南がスキルを使用した。回復功】


 まず最初にゼノさんとの戦いで減ったHPを回復させる。

 ソニックムーブは使うだけでHPが減っちゃうからね。


「沙南! 覚悟ぉ!!」


 巨大な斧を振りかぶり、戦士風の女性が先陣を切ってきた。


【戦子の攻撃】


 私はその攻撃をギリギリまで引き付けてから回避する。そして、隙だらけとなったその女性に拳を構えた!


【沙南の攻撃】

【戦子に151万2458のダメージ】

【戦子を倒した】


 よし! チコちゃん以外なら通常攻撃で倒せる!

 そう思った時、少し離れた位置から遠距離攻撃が飛んでくる。


【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】

【沙南のアビリティが発動。ジャストガード】


 なんとか防いでいるうちに、今度は背後に回り込んだリーダー格の女性が剣を振り下ろしてきた。

 私はその剣に頭突きをするようにピョンと飛び跳ねる。


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


 そして動けなくなったその女性に、私は攻撃を仕掛けた。


【沙南の攻撃】


「させないのです!」


 そこへチコちゃんが滑り込んでくる!


【チコリーヌに0のダメージ】


 くっ! やっぱりチコちゃんの防御力はかなり高い。けど守れるのは一人だけだ。焦らずに一人ずつ倒していこう!


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 私は遠くから魔法で私を狙っていたプレイヤーとの距離を一気に縮める。そしてそのまま背後を取って攻撃を仕掛けた!


【沙南の攻撃】

【魔女子に410万1012のダメージ】

【魔女子を倒した】


 これで二人目!

 そろそろゼノさんとの闘いで使った特技のリキャストタイムが回復する頃だ。秘技を使えば向こうで固まっている相手を一掃できるかもしれない。

 ……けどダメだ。向こうにはチコちゃんがいる。

 シルヴィアちゃんが言ってた。盾士がある条件を満たしたら、最強の戦士へと変貌するって。その為の特技を習得しているかはわからないけど、今は警戒しておかないと……

 私は焦らずに、一人ずつ確実に仕留めていく事にした。


「ちっ! おいお前ら! 何をぼさっと見てるんだい! 今が絶好の稼ぎ時だよ!! 派手に暴れようじゃないか!!」


 ソウルレクイエムのマスターさんが大きく叫んだ。すると物陰から隠れて見ていたプレイヤー達が触発されて、一斉にこの乱闘に加わった!

 そ、そうか。自分達だけじゃ人数が足りないって思ったソウルレクイエムは、この騒ぎで集まったプレイヤーを混ぜようと考えたんだ!

 大きな乱闘にして、その中で私がどさくさに紛れてやられれば良し。そうでなくとも、これだけごちゃごちゃとした争いになったら嫌でも隙が生まれる。

 けど私だって負けるわけにはいかないよっ! 出来るだけ広い位置に移動して、全体を見渡して状況を把握すれば大丈夫!

 ……まぁ、チコちゃんが私の周りをウロチョロしているのが気になるけど、でも盾士は攻撃力がめっぽう低い。自ら攻撃してくる事は無いはず!

 そうして、私は気を張り直して襲って来るプレイヤーに身構えるのだった。

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