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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「けど私だって、まだ本気じゃないもん!」

「ふーん。けど私だって、まだ本気じゃないもん!」


 正直に言うとかなり悔しい。だって攻撃力だけが私の自慢だから。

 けど本気じゃないっていうのは嘘じゃないもんね。私には相手のDEFを無視する技がある。どんなにスキルでDEFを上げても、この防御無視の大技なら確実にダメージを与えられるんだから!

 ……けど、気になるのはあの『百万障壁』っていうスキル。多分これまで、イベント上位を取ってきた時の上位報酬なんだ。

 言わば、ユニークスキル……


「へっへへ! 強がり言ってる場合ッスか!」


【ゼノがスキルを使用した。ベルセルク+5】

【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】


 ベルセルクは素早さに特化する事ができるクラスが持つスキルだよ。ソルジャーってホント色んなクラスのスキルを少しずつ習得する万能型なんだなぁ。AGIを高めたって事は、スピード勝負で来るはず!


【沙南がスキルを使用した。クリティカルチャージ】


 切れたバフを掛け直して、次こそ一撃でやっつける!

 ジリッと地面を鳴らしたゼノさんが、猛スピードで私に突っ込んで来た!

 攻撃を仕掛けてくるかと思いきや、ジャンプで私の頭上を飛び越える。その際に空中から大剣で水平に薙いできた。

 トリッキーな動きで一瞬虚を突かれたけど、水平切りは私にとって見切りやすい動きだよ。その動きに合わせるように、自分の腕を同じように薙ぐ!

 大剣と私の腕がぶつかると、電気が弾けるようなエフェクトが発生した。


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


「なぁ!? ブロッキング!?」


 ブロッキングの効果で動けなくなったゼノさんが、頭から地面に落ちてくる。そこに私はもう一度打撃を叩きこんだ!


【沙南が大技を使用した。奥義、咆哮牙・極】


 直撃したゼノさんは吹き飛んで行く。防御無視の一撃なら、間違いなくダメージを与えられるはず!

 私は戦闘ログに目を向けた。


【ゼノに3万1250のダメージ】


 え……えぇ~!? なんでこんなにダメージが少ないの!? 私の攻撃力なら、普通に一億くらい与えられるよね!?

 仮にゼノさんが、アクセサリーを含めて五つ全てにダメージ半減効果のある装備をしていたとしても、このダメージはおかしいよ!!

 だって、一億の半分の半分の半分の半分の半分でしょ? そしたら……いくつになるんだろう? 一千万くらいかな?


「うひ~、ブロッキング上手過ぎでしょ。こりゃジークのこと笑えないッスね……」


 起き上がったゼノさんが大剣を構え直していた。

 ま、まずい。このままじゃ勝てないよぉ……


【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】


 そうだ、このスキル……

 効果は分からないけど、私が攻撃を当てるごとに張り直してる。多分、一発攻撃を受けると切れちゃうから、その都度使わないとダメなんだ。……だとしたら、まだ可能性はある!


【沙南がスキルを使用した。クリティカルチャージ】


 私は息を整えてから前傾姿勢を取った。


「お? 今度は娘さんの方から攻めてくれるんスか?」

「……うん。ゼノさんは強いよ。だからね、本気で行くから!!」


 ここで言う本気っていうのは、力一杯殴るという意味じゃない。

 ……全力で勝負を終わらせると言う意味だ。


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 ギュン!

 自分自身でさえ見失いそうになるスピードを、足の感覚だけで調整する!

 そして私は、一瞬でゼノさんの背後を取った。


「なっ!? 早――」


――【沙南が特技を使用した。咆哮連牙】


 ガガン! と、ゼノさんが反応するよりも早く、私は両手の二連撃を浴びせて吹き飛ばす。


【ゼノに0のダメージ】

【ゼノに16万3721のダメージ】


「やった! ダメージが通った!!」


 戦闘中にも関わらず、つい嬉しくなってピョンと跳び上がってしまった。


「くぅ~やられたッス~……」


 起き上がったゼノさんは再び大剣を構えていた。


【ゼノの命の欠片が砕け散った】


 そっか。まだ終わりじゃない。課金の復活アイテムを持っている人だっているんだ。


「いや~攻撃力の低い特技なら、俺っちの防御力で耐えられると思ったんスけどねぇ。シンギさんの言う通り、娘さんの攻撃力マジ怖ぇ~ッス。……けど、今使った特技はもうリキャストタイム入ったッスよね? ここはお互いに休憩しないッスか?」


 ……確かに。もう私には連撃を繰り出す特技は残されていない。

 咆哮連牙のリキャストタイムが終わるまで休憩の提案を飲む? いや、ここでこの人を自由にしたら、それこそお父さんと合流されて数で攻められる。


「言ったでしょ。本気で戦うって。私はゼノさんを逃がすつもりはないよ!」

「くぅ~。逃がしてくれたら楽なんスけどねぇ。仕方ねぇッス」


 そう言って、お互いに再び構えを取った。


【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】

【沙南がスキルを使用した。クリティカルチャージ】


 ……私はこのイベントが始まってから、極力ソニックムーブは使わないようにしていた。誰が見ているか分からないので、もし地下ダンジョン攻略部隊のメンバーに見られたとしたら、すごく警戒されてしまうから。

 けど、今はもうそんな事を言ってる場合じゃない。私の持てる技術の全てを使って、ゼノさんを倒す!


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 ギュン! と、私はまた超速でゼノさんに拳を振るった!


【沙南の攻撃】


「おわっ!? あっぶね!」


 さすがに同じ手は喰わないみたい。

 私の攻撃は避けられてしまった。


「チャンスッス!」


 私が空振った隙を見て、ゼノさんが反撃をしてきた!


【ゼノの攻撃】

【沙南が詠唱を開始した】


 その反撃を私は紙一重で避ける。


「なっ!? 攻撃モーション中じゃ――」


 今度は攻撃を空振ったゼノさんに隙が生まれ、私はその体に飛びかかる!


【――沙南の攻撃】


 私の一撃は彼のお腹に突き刺さった!


【ゼノに0のダメージ】


 ノックバックが発生して、ゼノさんが吹き飛んだ。

 けど、私だって攻撃を休めるつもりはない。あのスキルを張り直す前に攻撃を当てなくちゃいけないんだから!


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 ブレーキをかけて止まるゼノさんの頭上に、私は一瞬で移動する。


【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】

【沙南の攻撃】


 私は構わずに、ゼノさんを地面に叩きつけるように上から下へと拳を振り下ろす。

 ガズン! と、後頭部に拳がヒットして、ゼノさんは地面にめり込むんだ!


【ゼノに0のダメージ】

【沙南が詠唱を開始した】

【沙南が特技を使用した。震脚】


 地面に叩きこんだゼノさんを、全力で踏みつける!

 そんな私にハッとしたゼノさんが、慌ててスキルを張り直そうとしていた。


【ゼノがスキルを使用した。百万障壁】

【ゼノに0のダメージ】


 地面が窪む!

 凄まじい衝撃で、地が揺れ、その反動か私の体は僅かに浮かび上がる。


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南が大技を使用した。秘技、獣王咆哮波】


 そのまま足元に手をかざし、即座にエネルギーを解き放つ!


「くっ!? 百万障へ――」


 ――ズガアアアアアアン!!


 ゼノさんの声が轟音にかき消されて、窪んだ地面はさらに抉られた。

 地面との距離が近いせいで、自分で放ったエネルギーの衝撃波を全身に浴びる。自ら吹き飛んだ私はなんとか身を捻りながら着地を成功させた。

 そしてそのままログを確認する。


【ゼノに87万8330のダメージ】


 確かに、ログにはそう残されていた。

 ついにやった! ユニークスキル持ちを倒せたんだ!


「くぅ~……きっつ~……」


 巨大なクレーター状となった地面の真ん中で、ゼノさんは光に変わりながらそんな事を呟いていた。

 そして……


【ゼノを倒した】


 完全に光となって消えていく。そんな様子を、私はクレーターの外から見下ろすのだった。


「ゼノさん。お疲れ様!」


 私もそんな事を呟いてから、いそいそとチャット画面を開いて文字を打ち込んでいく。

 どうしてもあのスキルが気になったから……


沙南:ゼノさん撃破! ところで、百万障壁ってどんな効果?


 すると、すぐに返信がきた。


シルヴィア:百万以上のダメージで攻撃された場合、受けるダメージは強制的に百万となり、そこから装備効果や防御アビリティやなんかの計算に入るスキルですね。確か数か月前にやってたイベントの上位報酬になっていて、かなり珍しいユニークスキルです。


 なるほど。私の攻撃は百万ダメージに変えられて、それを装備効果で半分の半分の半分の……とにかく沢山軽減されていたんだ。

 まぁとにかく勝った! すぐにここから移動しよう。お父さんが向かってきてるっぽいしね。

 そう思った時だった。プレイヤーの頭上に表示されている簡易ステータスが、瓦礫の奥から透過して見える事に気が付いた。

 私が歩き出すと、コソコソと隠れながらその簡易ステータスはついて来る。

 ……あ~、だから私、隠れててもすぐに見つかっちゃったんだね。簡易ステータスで丸わかりだよぉ。


「ねぇ、そこに隠れてるのだぁれ? 出てきて」


 簡易ステータスがビクンと震えると、そのままプルプルと小刻みに震え出す。まるで体の動きと連動しているみたいだ。いや連動してはいるんだよね。


「このゲームは隠れても無駄なんだからねっ! 出てこないと攻撃しちゃうよっ!」


 ついさっきまでの自分がそんな感じだったけど、ここは少し強気でいくよ!


「ま、待って! 今出て行くのです……」


 なんだかやたら可愛らしい声が返ってきた。女の子?

 拍子抜けした私の前に出てきたのは、なんと大きな盾だった。子供が一人隠れられるくらいの巨大な盾の後ろからアホ毛がピコピコと揺れ動き、そのアホ毛のさらに上には簡易ステータスがプルプルと震えているのだった。

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