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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
72/147

「イベント始まる。こっちこっち」

「沙南、早く早く!」


 私とナーユちゃんがダンジョンから出ると、その入り口でルリちゃんやら皆が待ってくれていた。


「イベント始まる。こっちこっち」


 そうして手を引かれて連れて行かれると、そこは前回のイベントでも使われた街の外へと続く道で、立て札には『イベントエリア』と書かれていた。

 そこを通ると見晴らしのいい草原が広がって、色々な人達が待機していた。

 そこには、『イベントが始まるまで今しばらくお待ちください』と書かれた掲示物があった。


「うへぇ、間に合った~……」

「どうしたの? 沙南疲れてる?」


 ルリちゃんが心配してくれているのに対して、私は大丈夫だよとだけ答えておいた。

 実はナーユちゃんとソニックムーブを使っての競争をしていたところ、ついつい熱くなって何度も往復しちゃっていた。

 軽く50往復くらいはしたんじゃないかな……?

 もう途中からは勝敗とか関係なく、修行じみたタイムアタックみたいになっちゃってたし……


「それじゃあみなさん、準備はいいですか? 基本的には事前に立てた作戦通りに行きましょう。後は向こうに飛ばされてから細かい指示を出します。……って、本当に私が指示を出していいんですか?」


 シルヴィアちゃんが不安そうにそう言った。


「うん! やっぱりシルヴィアちゃんが一番向いてるんじゃないかな? 大丈夫だよ。別にどんな結果になったって責めたりしないから」

「わかりました。出来る限り最善の選択で指示を出すよう努力します!」


 そして時間となる。すると、そこで待機していたプレイヤーは光となって消えていく。

 私もまた、目の前が輝き出して光に包まれるのだった。

「う~ん……」


 光が治まると、私は別の場所に立っていた。

 そこは一言でいうなら朽ち果てた世界だった。

 巨大なビルがそびえ立っているけど、あちこちがボロボロで今にも崩れそうに傾いている。コンクリートで覆われた地面は亀裂が入り、所々割れて陥没している箇所もあった。

 まるで、世界が終焉を迎えた後のような光景だ。


「建物の中には入れるのかなぁ?」


 私は窓が割れている所から中へ入ってみた。中もまたボロボロだけど、身を隠すくらいはできるかもしれない。

 ……けどこれ、崩れてきたらそれだけで死ぬんじゃないかな?

 そんな事を考えている時だった。クランチャットにメッセージが届く。


シルヴィア:みなさん、現在地を教えて下さい。


 バトルロイヤル開始位置はランダムで決まるから、位置を報告しなくちゃいけないんだった。周りが珍しいから、つい探索しちゃってたよ。

 私はコマンドから、イベントの覧を開いた。どうやら私はCエリアにいるらしい。


沙南:私はCエリアだよ。


 イベントエリアはA~Zに分かれていて、一つ一つがかなり広い。


GMナーユ:私はYエリアですね(・ω・)ノ


シルヴィア:なら丁度いいですね。沙南ちゃんはA~Nエリアを担当して、ナユっちはO~Zエリアを担当して下さい。


シルヴィア:……あと、顔文字可愛いですよw


GMナーユ:(*ノωノ)


 担当区域を分けるのは事前に話し合っていた事だ。

 その時はこんな事を言われた。


『聞いて下さい。イベントが始まったら、ナユっちと沙南ちゃんには特に負担がかかると思います。なぜならば、普通は戦う相手に相性があって、なるべくなら苦手な相手とは戦わずに済ませたいものです。けど二人はあまりにも規格外と言いますか、恐らくどの相手と戦っても勝率が高いんです。なので、私達は地下ダンジョン攻略部隊のメンバーを見つけてその場所を教えるので、二人はその場所へ向かって討伐するという流れが基本になります。どうか許して下さい』

『ううん。元々私一人で戦おうとしてたんだもん。手伝ってくれるだけでも感謝だよ』


 という作戦だ。

 私とナーユちゃんでこの広いイベントエリアを二分にぶんして、動ける限り地下ダンジョン攻略部隊のメンバーを殲滅する!


シルヴィア:ではルリっち、ミズっち、蜥蜴丸さんはA~Nを。私と子狐ちゃん、小烏丸さんはO~Zで地下ダンジョン攻略部隊のメンバーを捜索します。敵を見つけたら自分と相性がいいかどうかを判断して、無理そうなら仲間に報告して下さい。


 了解! と、みんなが返信をしてからチャット覧が静かになる。

 みんな動き出したんだ。イベントの制限時間は二時間。私も早く探さないと!

 私は崩れ落ちそうなビルから飛び出して路上に出た。

 そうだ、スキルを使っておこう。今はもう常に戦闘モードだから、私の頭上にはHPゲージが出現している。スキルもいつだって使えるんだ。


【沙南がスキルを使用した。コンボプラス】

 コンボプラス:消費40。その戦闘中、どんな攻撃でも1コンボ加算されるようになる。


 これでよし! さ、まずはこの周辺を探してみようかなぁ。


 ――ザッ!


 横から足を擦るような音が聞こえた。目を向けると、ちょうど建物の陰から現れた男性と目が合った。

 そして、しばし硬直する。


「て、敵か!?」


 男性は剣を取って身構えた。

 私は落ち着いて、その男性の頭上に表示されている簡易ステータスを見てみた。

 上から順番に――

 トミー LV134

 グリーダ遊撃部隊

 0

 0

 そしてHPゲージが表示されている。


 あれ、一番上は名前とレベル、その下がクラン名でしょ? その下の0っていう数字はなんだっけ?

 ……そうだ! この簡易ステータスはオプションとかで表示変更できるから、オプションを開いてみればいいんだ!


「くっ!? やるか!? やっちゃうのか!? おいお前、やったりするのか!?」


 男性はテンパってマゴマゴしてる。今のうちに確認しちゃおっと。

 オプションを開いてみると、どうやらイベント限定で表示される、『イベントポイント』と『撃退数』らしい。

 なるほどねぇ。この数字を見れば、戦うかどうかの参考にできるんだね。


「よ、よく見たらお前、レベル154か。お前を倒せばそのレベル差で、イベントポイント20ゲットだぜ! 丁度いい相手じゃないか!」


 私が色々と確認している間に、向こうは戦う事に決めたらしい。見た所クラスはソルジャー。しかもなんだかイベント初参加っぽい挙動をしている。

 まぁ私も初参加だけどね。

 取りあえずスキルを使っておこう。


【沙南がスキルを使用した。力溜め】

【沙南がスキルを使用した。ベルセルク】

【沙南がスキルを使用した。クリティカルチャージ】

【沙南がスキルを使用した。気功術】


 気功術:消費40。しばらくの間、気を体全体に纏わせる事で近距離物理攻撃に魔法属性を加える。さらにATKとDFEが1.5倍。


 これは地下10階の隠しフロアから手に入れたスキルだ。

 そして私は早めに魔法薬を使ってMPを回復させる。アイテムにもリキャストタイムがあるからね。


【トミーがスキルを使用した。力溜め】

【トミーがスキルを使用した。鋼鉄化】

【トミーがスキルを使用した。鍛冶研磨】


「いくぞ~、てや~!!」


 そして武器を振りかざし、彼が突撃してきた。

 ……けど、はっきり言ってその動きは遅く、のっしのっしとゆっくりと迫って来る。

 なんて言うか、装備とかが重くて早く動けないけど、一度走り出したら止まらない! みたいな走り方だと感じた……


 ――ブンッ!


 剣を縦に振り下ろして攻撃をしてくるけど、動きの遅い攻撃はもはや命とりだ。

 一度攻撃を仕掛けると攻撃モーションが発生する。だからそれを狙って、ギリギリで回避をして反撃をすると、相手は避ける事ができない!


【沙南の攻撃】


 相手の剣を避けた瞬間に反撃をすると、私の拳は見事にヒットした。


【沙南のアビリティが発動。コンボコネクト+2コンボ】

【沙南のアビリティが発動。先手必勝+1】

【沙南のアビリティが発動。カウンター+2】

【沙南のアビリティが発動。HPMaxチャージ】

【沙南のアビリティが発動。状態異常打撲付与】

【沙南のアビリティが発動。MPMaxチャージ】

【沙南のアビリティが発動。プレイヤーキラー】

【沙南のアビリティが発動。アビリティブースト】

【沙南のアビリティが発動。無効貫通】


「ぐぼぉーーーー!?」


 相手の男性は勢いよく吹き飛び、廃ビルに激突していった。


【トミーに1334万3576のダメージ】

【トミーを倒した】


 ……わぁ~、アビリティ沢山覚えたなぁ。

 まぁそんな事よりも、これで私の『討伐数』が1になったはずだよね?

 そんでもって、自分よりレベルの低い相手だからイベントポイントは入らない。

 そんな確認をしている時だった。


「おわっ!? 凄い音が聞こえたと思ったら敵か!」

「ね、ねぇ、どうすんの!?」


 男女の二人組が駆けつけていた。


「どうするって、やるに決まってんだろ。俺達のレベルと近いし、こっちは二人掛かりなんだ!」

「う、うん、わかった!」


 そうして二人同時に飛びかかって来る。

 ここは仕方ない。特技を使おうかな。

 いつ地下ダンジョン攻略部隊のメンバーと戦いになるか分からないから、あまりリキャストタイムを発生させたくないんだけど、制限時間がある以上モタモタしていられない!

 二人が私の攻撃範囲に入った所で、トンッと足を強く踏みつける。


【沙南が特技を使用した。震脚】


 すると強い揺れが生じて、二人は天高く吹き飛んだ。


「どわあああ~~……」


【ジュウを倒した】

【リアを倒した】


 イベント開始位置はランダムなのに、すぐ仲間に会えるなんてラッキーだったね。そのまま慎重に行動していれば……

 あれ? もしかして私って、他人から見たら弱そうに見えるのかな?

 そんな事を考えた瞬間だった。


 ――パラパラ……


 上から細かい砂が降ってきた。


「もらったー!! 漁夫の利でござるぅー!!」


 真上から一人のプレイヤーが降ってきて、私に刃を振り下ろしていた。

 けど惜しかったね。砂がかかった時点で気が付いていたよ。

 私はその刃を押し返すように手を翳す。


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


「な、なにぃ!?」


 その男性は空中で仰け反り、動けなくなる。

 そんな彼に、私は拳を叩きこんだ!


「ぶげらっ!?」


 そして彼も廃ビルに激突して、煙を巻き上げる結果になった。


【忍者丸を倒した】


 ふぅ。バトルロイヤルだから仕方ないけど、色んな人が襲って来るなぁ。

 そう思いながらも、私は何気なく戦闘ログを確認する。するとそこには、


【沙南のアビリティが発動。コンボコネクト+8コンボ】


 と表示されていた。

 これって、もしかして私がダメージを喰らわない限り、どんどんコンボが増えていって攻撃力が増加していくんじゃないかな? だとしたら、『沙南の本気の一撃でもノーダメージに出来る』って言ってたお父さんを普通に倒す事だって出来ちゃうんじゃない!?

 そんな期待に胸を膨らませて、私のイベントは幕を開けるのだった。

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