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「……やっぱり、私も何かしないと……」

* * *


「はっ!? 私は一体何を!? ここはどこ!?」


 目を覚ますと、私は自分の部屋で横になっていた。

 カーテンの隙間から朝日が差し込んで、外はすでに明るいようだ。


「今日は何曜日!? 今何時!?」


 時計を見ると、金曜日の午前六時だった。

 思い出せ! 昨日の事をちゃんと思い出せ私ぃ~!

 そう、昨日は地下8階を攻略してて、その階層はなぞなぞが多くて、楽しみにしていた隠しフロアのスキルもすでに持ってるもので、ショックでその後の記憶が曖昧で……

 そう! その後にボスと戦う事になって、ボスを攻撃してスカッとしようと思ったら普通の攻撃が効かないタイプのボスで、ダメージを与えるためにはボスが出題してくるなぞなぞに答えるしかなくて、私は全然わかんなくて、ルリちゃんと瑞穂ちゃんに頼りきりで、ボスは倒せたけどもはや疲労困憊で……。その後すぐにログアウトしたんだっけ。


 どんだけ頭弱いんだろう、私は……


 自己嫌悪で憂鬱な気分のまま、何気なく自分の机を見ると、出しっぱなしの教科書やノートが置かれていた。昨日学校で提出された宿題のプリントもそのままになっている。

 そしてそれを見た瞬間、私の意識は覚醒する。


「しゅ、宿題やってない!!」


 ゲームに疲れた私は、宿題すらやらずに寝てしまったんだ!

 まずいまずいまずい! ただでさえ頭悪いのに、宿題もやって行かなかったら完全におバカなキャラにされちゃうよ! おバカで、ルリちゃん以外に友達のいない残念な子だと思われる!

 幸いなことに、まだ学校までは時間がある。私は急いで宿題を終わらせるために、机に向かうのだった……

 ルビーアイを狩る者:レア魔物であるルビーアイを討伐した者に贈られる。ステータスに100ポイントの振り分けができる。

 なぞなぞ博士の討伐者:なぞなぞ博士を討伐した者に贈られる。HPが400。それ以外のステータスが40増加する。


 何この称号。私こんな称号取ったっけ?

 どうやら昨日、地下8階でレア魔物とボスを倒した時の称号みたい。正直、なぞなぞの影響で意識が朦朧としててよく覚えていない。

 だけど、ちゃんとガチャチケットも一枚あるし回収する物は回収しているらしい。取りあえずガチャは次の地下9階をクリアしてから一気に引こうかな。


「じゃあ沙南、地下9階に行こう」

「ちょっと待ってルリちゃん。昨日みたいに瑞穂ちゃんも誘おうよ。……ほら、またなぞなぞみたいな階層で私役に立たないかもしれないし」

「沙南が卑屈になってる!?」


 なぞなぞ怖い! クイズ怖い! 勉強怖い!!

 とにかく、フレンドリストから瑞穂ちゃんの状況を見てみると、ログイン状態にはなっている。私はメールでメッセージを送ってみることにした。

 チャットだと気付かないかもしれないからねっ!


『瑞穂ちゃん今どこにいるの? 今から地下9階に潜るんだけど、付き合ってくれない?』


 送信っと!

 ちょっとだけ待つと、すぐに返信が届いた。


『ごめん。今から用事あるから一緒にはいけない。けど地下9階は実力が全ての階層だから、アンタ達なら二人でもクリアできると思う』


 そう書いてあった。

 用事ってなんだろう? まぁいいか。


「瑞穂ちゃん行けないってさ。でも私達ならクリアできるって言ってる」

「じゃあ行こう。久しぶりに沙南と二人きり~♪」


 また仔犬のように、スリスリと頬をすり寄せてくるルリちゃんを連れて、私達はダンジョンへと向かった。


【地下9階】


 ――ズウゥン! ズウゥン! ズウゥン!!

 地面が揺れ、テンポよく地響きが鳴る。地下9階に降り立ってからすぐにそんな現象に見舞われた。

 そう。まるで、巨大生物が近付いて来るような……


【サイクロプスが現れた】


 広いフロアに姿を見せたのは、正に巨人の鬼だった。手には棍棒を持って睨みつけてくる。

 なんだか最初のフロアからやったら広くて天井が見えないと思ったら、こういうデカい魔物が出現するからかぁ。デカいというだけで迫力があって強そうだよぉ。


【大魔神×2が現れた】


 今度は両サイドから超巨大な悪魔が出てきた。武器は何も持っていないけど、その拳で積極的に攻撃をしてきた。

 私達が飛び退いで回避すると、拳を叩きつけた地面が割れてクレーター状になった。

 あれ? これ防御とか無駄なんじゃないかな? どんなにDEFが高くても潰されて即死するんじゃない? もしかしたら防御しないで回避だけで進んでいく階層なのかもしれない。けど、そういう趣向なら瑞穂ちゃんが私達だけでもクリアできると言った訳も納得がいく。


「ルリちゃん。敵の攻撃力がヤバそうだから、全部回避していこう」

「う、うん……」


 あ、そうだ。これで修行したらどうかな!


「ねぇねぇ、確かルリちゃんもソニックムーブが使えたよね? ここでうまく扱えるように練習したら?」

「ええ~!? 私、沙南みたいに制御する自信ないよ……」

「けど、もうすぐで地下ダンジョン攻略部隊と戦う事になるし、少しでもスキルを使いこなせるようになった方がいいと思うよ? ここの敵って強そうだけど動きは遅いから、練習には丁度いいような気がするんだ」


 けど、ルリちゃんは青ざめてガタガタと震えていた。


「大丈夫だよ。危ない時は私が助けるから」

「う、うん……。それじゃあコツとか教えて欲しい……」

「う~んとね、慣れるしかないよ! こう、ギュ~ンって動いたら、グイ~ンって曲がって、ググッてブレーキを踏むの!」

「……沙南、何言ってるか全然わかんない……」


【巨神兵が現れた】


 さらに巨大な戦士風の魔物が出現した。


「ほらほら、早く動かないと逃げ場がなくなっちゃうよ?」

「ひぎゃーーーーー!?」


 こうして、私はルリちゃんのスキルが上達するまで見守る事になった。


* * *


シルヴィア:フラムベルクとの交渉に成功しました。(≧▽≦)ノ


 私がログインすると、クランチャットにそんな書き込みが載っていた。けど、イベント開始直後から協力してくれるわけでは無くて、どうやら私達がある程度戦っているのを見てから参加するようだ。


「何それ、そんなの意味ないじゃない……」


 その戦っている最中にやられたら元も子もない。沙南やナーユは強いからその心配はないかもしれないけど、私やルリは開幕からやられる可能性だってあるんだから……


「……やっぱり、私も何かしないと……」


 その時だった。着信音が鳴り、私宛にメールが届いた。


『瑞穂ちゃん今どこにいるの? 今から地下9階に潜るんだけど、付き合ってくれない?』


 沙南からのメールだった。私はその誘いを断るメールを送り、今一度頭の中を整理する。

 私だって、今はび~すとふぁんぐの一員なんだ。勝つために、自分のできる事をやろう!

 そうして、私は目的地に向かって歩き出すのだった。

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