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「バカなの!? ねぇ、私の闘い方ちゃんと見てたの!?」

「ルリちゃんルリちゃん! 瑞穂ちゃんって頼りになるねぇ!」

「ん……最初はアホの子かと思ってたのに……」


 私達は地下7階の広い通路を走って行く。

 まだまだ先は見えないから、相当な距離があるっぽい。


「アンタらねぇ……それ褒めてんの? バカにしてんの?」


【魔物の群れがあらわれた】


 そんな事を言いながら走っていると、再び魔物が沸き始めた。


「さっきと同じ闘い方でいいんだよね? よぉし頑張るよぉ!」


 私は二人よりも前に出て、拳を握る!


「あ、私はさっきの闘いで魔法のほとんどがリキャストタイムに入ってるから、今回の援護は控えるわね」


 えぇ~!? それってかなりピンチなんじゃないの!?


「大丈夫。沙南は私が守る! ムフー!」

「ルリちゃんお願いね! ちゃんと助けてよ! 絶対だからねっ!!」


 前方から、まず五匹の魔物が飛びかかってきた。


【ルリは魔法を使用した。ブレイズウォール】


 地面から巻き上がる炎の渦に、全ての魔物が焼き払われた。

 しかし当然のように、次から次へと魔物は増えていく。今度は十匹の魔物が攻めてきた。


【ルリは魔法を使用した。オメガスラッシャー】


 ズバッ! と並んで走る魔物が、風の魔法で一斉に斬撃を受けて消滅する。


「ちょ、ルリ? 飛ばしすぎじゃない? 範囲の広い魔法は後の方に取っておいて、最初は沙南に任せていいのよ?」

「そんなのダメ! 沙南は私が守るの!」


【ルリは魔法を使用した。オメガブラスター】


 前方の通路が大爆発を起こし、魔物が一掃された。当然、私の所には一匹も来ない。


「だああ使い過ぎだっての!! 後半が持たなくなるから!!」

「くっ! もう範囲魔法が残されていない。不覚をとった……」

「バカなの!? ねぇ、私の闘い方ちゃんと見てたの!?」


 後ろからメチャクチャ不穏な会話が聞こえてくる。

 最初の闘いを思い返す限り、今はまだまだ中盤と言ったところで、これからさらに多くの魔物が押し寄せてくるはずなんだけど……

 そしてそんな予測を裏切るはずもなく、大量の魔物が奥からドンドン湧いてくる。


「もうこうなったら、これしかない!」


【ルリは大技を使用した。奥義、魔導砲】


「ちょ、待――」


 瑞穂ちゃんの止めようとする言葉も虚しく、ルリちゃんは私よりも一歩前に出て奥義をぶっ放した。

 これによって目の前に大量の魔物は消滅したが、まだまだこれで終わりじゃない。さらに大量の、波が押し寄せるような魔物の群れがすぐに押し寄せてきた。


「バカルリ! こんなにバカバカと無駄撃ちばっかして!」

「むぅ……バカばっか連呼しないでほしい……」


 ここはバカバカ言ってる場合じゃないんだけど……

 あ、でも私、いい事を思いついた!


「もうここは、私と沙南の秘技で乗り切ってから体勢を立て直すしか……」

「ちょっと待って! 私ね、試してみたい事があるの! 二人は残された魔法を駆使して、魔物の数を減らしてほしい」

「いや無理でしょ! 確かにまだ多少は使える魔法を残しているけど、それだとアンタの所に攻め込んでくる魔物の数はかなり多くなる!」


 私は拳を構えて強く答える。


「大丈夫! 十匹ずつならなんとかするから!」

「そんな数を同時に相手できんの!? ああもうわかったわよ! その代わり、これ以上は無理だと判断したら私の秘技で一掃するから!」


 そうして二人は数少ない魔法を駆使して魔物を減らし始めた。当然、私の元には多くの魔物が集まって来る。

 私はそんな先頭の魔物に殴りかかった!


【沙南の攻撃】


 魔物は一撃で吹き飛び、消えていく。しかし次々と絶え間なく襲い掛かってくる。


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】


 瞬時に次の魔物を攻撃して撃退する!


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】


 流れるように、迫る魔物を連続で殴りつける。


「何あの動き!? まるで特技を使った乱舞のような攻撃じゃない!」


 これは『詠唱キャンセル』と呼ばれるテクニック。

 普通、攻撃を仕掛けると『攻撃モーション』と呼ばれる動作が作動する。だから一度攻撃を仕掛けると、次に攻撃を仕掛けるまでに隙が生じてしまう。

 けれど、攻撃が敵に当たった瞬間に魔法の詠唱を入力すると、その攻撃モーションをキャンセルする事ができる。そしてその詠唱もすぐにキャンセルすれば、すぐにまた攻撃を仕掛ける事ができるという仕様だ。


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】

【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】

【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】

【沙南が詠唱を開始した】

【沙南の攻撃】


 私は、このナーユちゃん直伝のテクニックをいつか試したいと思っていた。ここはそれを試す丁度良い練習場所だよ!


「沙南凄い! 流れるように敵を倒してる!」

「うん。確かに凄いんだけど、戦闘ログが気持ち悪い事になってる……」


 私は一心不乱に魔物を攻撃し続ける! 今はただ、詠唱キャンセルを意識して魔物を攻撃する事だけに集中する!


【沙南のレベルが92に上がった】


 うん。なんだかレベルが上がってるけど、そんな事を気にしている場合じゃないんだ。魔物はまだまだ流れ込んでくるからね! 忙しいからまた後で確認するね!

 私は気にすることなく次のターゲットを瞬時に切り替える。


【沙南は新たな称号を手に入れた。クリスタルメイジを狩る者】

クリスタルメイジを狩る者:レア魔物であるクリスタルメイジを討伐した者に贈られる。ステータスに100ポイントの振り分けができる。


 あれ? 今なんかレア魔物を倒したりした? もう魔物の外見すらまともに見る余裕なんて無いから、どんな感じだったのかすら記憶にないよ! とにかく集中集中!!


【沙南は新たな称号を手に入れた。キリングアドベンチャー】

キリングアドベンチャー:魔物の討伐数が500を超えた。ステータスに100ポイントの振り分けができる。


 何!? 今何を手に入れたの!? 全然確認するだけの余裕がないよ!! というか、むしろこの集中したいタイミングで余計な情報は気が散るんですけどぉ……。後にして後に!!

 とにかく確認は後回しにして、今は目の前の敵に意識を尖らせる。


【隠しスイッチを作動させた】


 隠し!? えぇ!? なんでこのタイミング!? 私が魔物を蹴ったり殴ったりして、あっちこっちに吹き飛ばしてるから偶然ぶつけちゃったとか!? っというか、そのスイッチ押すとどうなるの!?

 突然のラッキーイベントに私の集中力が切れ始め、意識がユラユラと揺れ動く。


【なんと隠し扉が開いた】


 いやどこ!? 辺り一面魔物だらけで、どこが開いたのかなんて全然見えないんだけど!! 隠し扉なんてプレイヤーなら誰だって気になるのに、その場所が分からないなんてモヤモヤするよ!


【魔物の群れがあらわれた】


そしてさらに増えていくぅ!? もういい加減に集中力が切れそうで頭の中がパニックになってきたよぉ……


「ナイス沙南! もう十分だから、その場に伏せて!!」


【瑞穂は大技を使用した。秘技、マジックブレイカー】


 はわっ!?

 私が咄嗟にその場で身を屈ませると、まばゆい光が一面に広がった。

 音が割れるような轟音を響かせて、魔導砲よりも一回り大きなエネルギー体が放射される。左から右へ、魔物を薙ぎ払い、音が治まった後には魔物の姿は綺麗さっぱり消えていた。


「沙南、お疲れ様。すごい連続攻撃だった!」

「人の事はいいから、アンタはもう少し考えて攻撃しなさい!」


 駆け寄って来るルリちゃんの後頭部に、瑞穂ちゃんがチョップを叩きこんでいた。


「それよりも、どこかで隠し扉が開いたってログに載ってた! あ、あそこ!」


 周囲を探すと、通路の壁に横穴のような入り口が出来ていた。


「隠しフロアなら魔物も襲ってこないから、全員のリキャストタイムが回復するまで休みましょ」


 そっか。今更気がついたけど、戦闘が終わっても私達の頭の上にはHPゲージが表示されたままなんだ。つまり、この階層も常に戦闘状態になっていて、魔物との闘いが終わってもアイテムや特技のリキャストタイムは継続しているんだね。

 それに私も必死に戦って少し疲れちゃった。


「休憩だ~! それに報酬なにかな~♪」


 そうして、私達はその隠しフロアに入ってくのだった。

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