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「小狐丸、お座り!」

* * *


「メンテナンス明けだぁ!」


 私は学校が終わってから、すぐにダンジョンクエストにログインをした。

 だって今日はイベントの報酬が届くのと同時に、七日目のログインボーナスとしてガチャチケットが貰えるんだから! 大丈夫、いつもやってる家の仕事は夕方からやれば問題ないよ! ……多分。

 そしてプレゼントボックスに新着アイテムが届いている事に興奮を覚える。クランのみんなと一緒に力を合わせて勝ち取った、イベントSランクの最高報酬!

 好きな能力を選べるんだけど、私はアビリティを取る事に決めていた。

 だって、一人で無効貫通を発動させるためには多くのアビリティが必要になるからね!

 取り出した報酬から、『アビリティブースト』を選択する。この時ルリちゃんは、魔法の『ホワイトフレア』を選択していた。

 なんでも、必中効果で回避する事ができない魔法らしくて、もし私がプレイヤーバトルでこの魔法を使われたら一巻の終わりらしい。だからその対策を練るために選んだとの事だった。

 はうぅ。ルリちゃんは優しいよぉ~。無事に能力を習得した次はガチャを引かなくちゃ!

 引くのは私だけなんだけど、ルリちゃんが付き添いでついて来てくれた。


「にょわああああ!!」


 気合を入れてガチャを回す。

 出てきたのは、『状態異常打撲付与』というアビリティだった。


状態異常打撲付与:近距離物理攻撃で、かつ打撃系の攻撃を与えた時、その相手に状態異常打撲を付与する。


「打撲ってどんな効果なんだろう?」

「ん……確か、痛くて素早い動きが出来なくなる効果だったはず。けど沙南は誰でも一撃で倒すからあまり意味はない」

「AGI減少って事? でもまぁいいや。無効貫通が発動するための条件を満たせるし、さっきのアビリティブーストの倍率もあげられるから」


 次に私達は、新しく実装されたフィールドエリアに足を運んだ。ここで拠点を作ったり、自由にプレイヤーバトルが楽しめたりできるらしい。

 私達はここで、少しの間バトルで遊ぶ事にした。ホワイトフレアをジャストガードできないか検証したり、ソニックムーブの使い方を徹底的に試してみた。


【沙南は新たな称号を手に入れた 音速の拳法家】

 音速の拳法家:高速移動を巧みに駆使して相手に攻撃を行える者に送られる。アビリティ、ソニックスマッシュを習得できる。

 ソニックスマッシュ:高速移動中に攻撃を当てると攻撃力が2倍。


 そんな試行錯誤を繰り返すと、新たなアビリティを習得出来たりと成果は上々だった。

 少し日が落ちてから、シルヴィアちゃんやナーユちゃんがログインしてきた。私達は取りあえず、おしゃべりも兼ねて酒場に集まる事になる。するとそこへ刀剣愛好家の人達がやってきて、クラン結合の話が始まった。

 これが、イベント終了後の七日目の出来事だった。

「ほわ~! 私達の家だ~!」


 クランメンバーが一気に二倍となった次の日。

 私とルリちゃんがログインすると、フィールドエリアにび~すとふぁんぐの拠点となる家が出来ていた。というのも、昨日のクラン結合の一件が終わったあと、私がみんなに頼んでおいたのだ。今日はログインするのが遅くなりそうだから、拠点はみんなで決めて構わない、と。


「みんなと相談して、それなりの拠点を作っておきましたよ!」


 そうシルヴィアちゃんが誇らしげに言った。

 その家は、一言で言えば山の中に建てられた別荘のような建物だった。丸太を加工して組み合わせたような、木の匂いが充満する広間。それに合わせたように家具や置物も木材で統一されている。

 二階や屋根裏部屋まであるらしく、広さもかなりある。それは、とても広い山小屋といった雰囲気だった。

 まぁ、クランのメンバーって最高で30人まで登録できるから、このくらい広い方がいいのかもしれない。


「姫様、お気に召しましたでしょうか? もし不満があれば言って下さい。作り直しますので」


 狐ちゃんは私を『姫』と呼び、すごく気を使ってくれるんだけど、なんだかちょっと恥ずかしかったりする。


「ううん。不満なんてないよ! すごく落ち着く感じの家だね。気に入っちゃった」

「姫様が気に入ってくれたのなら何よりです」


 こうして私達は拠点となるこの住処で、しばらくの間おしゃべりをしていた。

 なんだかこうしてみんなと一緒にいる。ただそれだけで満たされるような気持ちになっていた。

 みんなとの仲良しな時間、楽しい!

 そんな時だった。


「お~、中々いい感じじゃない」


 瑞穂ちゃんが入ってきた。


「って、アンタ達何やってんの?」

「何って、特にやる事がないからおしゃべりしてたんだ」


 すると、瑞穂ちゃんは少し困惑したような表情になった。


「やる事がないって、ダンジョンに行かないの?」


 え? ダンジョン? あ~……。


「そういえばそんなのもあったね。イベントやプレイヤーバトルばっかりだったから忘れてたよ」

「いやなんでよ!? 忘れちゃダメでしょ!? 特にアンタはマスターのくせしてレベルが一番低いんだから、ガンガン潜りなさいよ!」


 てへへ、怒られちゃった♪


「そうだね。それじゃあダンジョンを進めて来ようかな。ルリちゃんも行くでしょ?」

「ん……私は沙南について行く」


 私はルリちゃんにパーティー申請を送った。


「アンタ達、今何階を攻略してるの?」

「地下五階だよ」

「ふーん。ま、私もやる事ないから一緒について行ってあげるわよ。大丈夫だとは思うけど、地下五階って確か回復無効だから人手が多い方が有利だし」


 そう言って、瑞穂ちゃんが私に申請を飛ばしてきて、私はそれを承認する。


「そういう事でしたら、私もお供させてください。私は姫様の刀。お守りするのは私の役目です!」

「ならば自分も!」

「もちろん拙者も!」


 狐ちゃんと烏さんと蜥蜴さんも申請を飛ばしてくるので、私はそれを承認した。

 なかなかの大人数パーティーだよ。


「じゃあシルヴィアちゃん、ナーユちゃん。私達、ちょっと地下五階に潜って来るね」

「はい。行ってらっしゃい」


 そして私達はフィールドエリアから街へ戻り、街にある転送装置から地下五階へと向かった。

 地下五階。そこは岩石地帯といってもいいような、ゴツゴツとした所だ。前に一度来て、隠しエリアの報酬だけを持って行ったんだよね。

 私達六人は、そんな地下五階を進んでいく。すると目の前に魔物が現れた。


「姫様、お下がりください! ここは危険です!」


 狐ちゃんがそう言って、私の前に出る。


「魔物は自分達にお任せください。主殿」

「沙南様には指一本ふれさせぬ!」


 烏さんと蜥蜴さんも続いて前に出る。

 私を守ろうとしてくれている三人が一斉に魔物へと切り込んでいき、あっという間に瞬殺した。


「さぁ姫様、こちらです!」


 誇らしげな顔で私を誘導する狐ちゃん。

 うん。みんな凄く強いね。本当に強いんだけども……

 あれ? これって戦略シミュレーションゲームだったっけ? 私はただ仲間に指示を出すだけ?

 なんだかプレイしているゲームのジャンルが変わってきている気がした。


「あいつらが戦ってくれると楽よね~。……暇だけど」


 そうそれだよ! 瑞穂ちゃんが言う通り、私何もしてないから暇なんだ!

 けどだからと言って攻撃に参加するなとは言いにくい。私の事を必死に守ろうとしてくれている分、余計に言いにくいよね……


「小狐丸。私達暇だから戦いたいんだけど」


 突然ルリちゃんがそう告げた。


「しかしルリ様、怪我をされるかもしれません。ここは私達にお任せを」

「普通の魔物なんかにやられたりしない。平気だから」

「し、しかし、万が一という事もあります。皆様を守るのが刀の役目ですから」


 狐ちゃんも引こうとしない。そしてまた次の魔物が現れた。


「さぁルリ様、下がってください!」


 再び狐ちゃんが魔物に斬りかかろうとした時だった。


「小狐丸、お座り!」


 ぺターン!

 ルリちゃんの命令に反応して、その場にへたり込むように両手を付く狐ちゃん。


「小狐丸はそこで見てて! トカゲとカラスも手を出しちゃだめだから! 魔物とは私と沙南で戦う!」


 おお! ルリちゃんナイスだよぉ。

 暇だった分、私達は張り切って魔物へと飛びかかっていく。


「ふわ~!? 姫様どうか無理をしないで下さい~!!」


 後ろから狐ちゃんの悲鳴にも似た叫び声が聞こえてくる。


「左です! 魔物が左から狙っています!」

「ああ、危ない!! そいつは飛び道具を使います!!」


 蜥蜴さんと烏さんも必死過ぎるほど口を出してくる。


「いやどんだけ過保護なのよ!? アンタら昨日とはキャラが違いすぎるでしょ!」


 そんな三人に、瑞穂ちゃんはしっかりとツッコミを入れてくれるのだった。

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