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「ごめんなさい!!」


「お姉ちゃ~ん!」


 聞き覚えのある声がして、小さな妖精の少女が私に突っ込んでくる。それは紛れもなくプニちゃんだった!


「プニちゃん!? よかった~」

「うわ~ん、本当にまた会えたよぉ~」


 プニちゃんはまたまた泣いていて、私に顔を埋めていた。


「沙南さん、もうログインしていたんですね」


 すぐ近くでナーユちゃんがログインをして、私に駆け寄ってきた。


「ナーユちゃん、ありがとう。本当にありがとう!」

「ふふっ。いいんですよ。それよりもこちらで決まった対応を話しますので、一度拠点に移りましょう」


 そうして私とナーユちゃんは、落ち着いて話のできるび~すとふぁんぐの拠点まで移動をした。


「それでナーユちゃん、プニちゃんの対応って?」

「はい。メンテナンス前に言われた通り、プニプニさんの削除が賢明ではない事を伝えたところ、割とあっさりと了承してくれました。というのも、明らかに自我を持ったプニプニさんのAIはプログラマーの予想をはるかに超えていたようで、バグの件も含めてきちんと解析できるまではこのまま残しておくとの事です。もちろん今回のメンテナンスでプニプニさんのデータを弄ったり、書き換えたりもしていません」


 よかった~……。安心したら力が抜けちゃったよ。


「あ、あの……ナーユ……」


 プニちゃんは私の頭の上に乗っかるようにして、そこからナーユちゃんに声をかけた。


「色々とありがと。いっぱい攻撃しちゃってごめん……」


 そう言ってからスッと私の陰に隠れて出てこなくなる。

 そんな様子が微笑ましくて、私はナーユちゃんと一緒に笑ってしまった。


「それでですね。一応今のところは削除はしませんが、沙南さんには少しばかり条件があります」


 条件かぁ。まぁ普通なら守護精霊の運用自体を停止されるところを、こうしてそばに置かせてもらえるんだから仕方ないよね。

 これからもプニちゃんと一緒にいるためには運営さんの言いつけを守らなくちゃ。


「まずはさっきも言った通り、プニプニさんのプログラムはまったく弄っていません。つまり、未だにバグの力が使える状態にあります。ですが当然、それを使わせてはいけません。沙南さんにはそれも含めて、プニプニさんの監視とブレーキ役をしてもらいます。かなり責任が付きまとう条件ですが、私も同じように監視を命じられていますので、一緒に頑張りましょう」


 それはつまり、私がプニちゃんをいい子に育てないとダメって事だよね。なんだか本当のお姉ちゃんになったみたいだよ。


「それとプログラム解析のため、定期的なメンテナンスを行うことも決定しました。今回のようにデータを弄ったりはしないので安心してください」


 詳しく話を聞くと、どうやらプニちゃんはメンテナンスの最中でも意識はあるとの事だった。それ以前にゲームを落としても活動できるらしく、その間は暇だから人間と同じように寝て過ごすのだという。

 ……完全に独立してるよぉ。


「とまぁこんな感じですが、質問はありますか?」

「はい! 守護精霊を使ったプレイヤーバトルはどうすればいいのかな?」

「バグの力を使わずに、レベルを上げた時の能力だけを使えば戦ってもいいとの事ですが……正直言って私はあまり戦ってほしくないですね。ボロが出るかもしれませんし……」


 確かに。戦闘で熱くなって、つい変な力を使っちゃったら大変だもんね……


「脅かすつもりではありませんが、本当に崖っぷちである状態だという事を忘れないでください。これでもかなり優遇しているつもりです。もし他のプレイヤーから何かがおかしいと察知された場合、運営側は即削除する事もいとわないと思ってください」


 ごくりと、プニちゃんが息を呑む。


「大丈夫だよプニちゃん。みんなの言う事をちゃんと聞いて、いい子にしていればいいんだから。できるよね?」

「う、うん。あたしだって消されるのはイヤだもん……。それに、もっとお姉ちゃんと一緒にいたいし……」


 ふわ~! 懐いてくれるプニちゃんに感動だよ~!

 私は人差し指でプニちゃんの喉元をコチョコチョとくすぐった。するとプニちゃんは猫のように人差し指にじゃれ始める。

 そんな時だった。


「こんばんちゃ~。誰かいますか~?」


 そう言ってシルヴィアちゃんが入ってきた。

 いや、シルヴィアちゃんだけじゃない。その後ろからはび~すとふぁんぐのメンバーがぞろぞろと入ってきて、あっという間に全員終結になった。


「あ、プニプニ無事だったんだ。沙南よかったね!」


 ルリちゃんが両手を合わせて祝ってくれる。みんなもほっとしたような表情を浮かべていた。

 だから私は、プニちゃんを両手で包んで目の前に持っていく。


「プニちゃん、みんなプニちゃんを助けるために協力してくれたんだよ? 頼りになる仲間なんだよ? そんなみんなに迷惑をかけたんだから、私と一緒にごめんなさいしよ」

「う、うん……」


 プニちゃんは素直に頷いて、背中の羽で浮かび上がるとみんなが並ぶその前に出た。


「あ、あの……その……あたしのせいでみんなに迷惑かけたっていうか……だからその……ご、ごめんなさい!!」

「ごめんなさい!!」


 私も一緒に頭を下げる。そんな私たちに、みんなは暖かい言葉を送ってくれる。そうして、新ダンジョンの実装から始まったバグ騒動はとりあえず一段落ついた。

 すべてが終わったわけじゃない。むしろこれからが大変かもしれない。けど、何が起きたってみんなと一緒に解決していけばいいんだ。私も、プニちゃんももう一人じゃないんだから。

 みんなに弄られ、揉みくちゃにされるプニちゃんを見ながら、私はそんな風に思うのだった。

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