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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第三回イベント『勝ち抜きトーナメント』編
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「これで終わりモフ!」

「魔……法? まさか、詠唱キャンセルに使っている魔法を普通に使ったモフか!?」


 そう。地面から岩石を掴み取るときに詠唱キャンセルをしたと見せかけて、そのままいつでも発動できるように待機状態にさせておいたんだよね。


「飛来物ダメージでも百万障壁を剥がせるってわかったから、威力の弱い魔法でも剥がせるって思ったんだ。うまくいってよかったよ」

「ボールライトニング……誰でも習得できる初期魔法で、自分の周囲にならどこにでも出現させられる設置型の魔法……モフか。詠唱キャンセル用に選んだ魔法がたまたまここで役に立つなんて……」


 モフモフさんはがっくりとうなだれていた。


「たまたまじゃないよ。私は魔法を選ぶ時に、こうなる可能性も考えて選んだんだから。せっかく覚えるなら、少しでも役に立つ魔法の方がいいでしょ?」

「モ、モフ~……」


 本当は自分の周囲に設置して、それに接触した相手を仰け反らせる事ができたら隙を作れるかもしれないという理由で選んだんだ。けどこのゲームはダメージが0のだと、ノックバックは発生しても仰け反る事はなかったりする。

 しかもこのボールライトニングはノックバックすら発生しないタイプだったため、今までは出番がなかったんだ。

 さぁ、これで私が転身ルートだよっ!


【モフモフ師匠のアビリティが発動。雷神化】


 モフモフさんの体が光だして、電撃がほとばしる。


【沙南がスキルを使用した。神獣転身】


 それに呼応して、私も神化を完了させる。


『さぁ、沙南選手が転身ルート、モフモフ師匠選手が暴走ルートだぁ!! 沙南選手はこれまで転身ルートで相手を圧倒しています! 今回もその力を見せつけるのかぁ!?』


 モフモフさんが立ち上がり、拳を構える。その姿は……全く同じ姿の熊さんだった。


「ちょ……モフモフさん姿が変わってないよ!? その着ぐるみのせいじゃないかな!?」

「んん~? そんな事ないモフよ。ほら、体中にパリパリと電流がほとばしるエフェクトが追加されて凄く強そうモフ」

「クマさんの体毛に静電気が走っているようにしか見えないよ! 私、ソルジャーの神化って見た事ないからその着ぐるみ脱いでほしいんだけど……」

「それはダメモフ。うちのクランは動物好きの集まりで、ケモミミを付ける決まりになってるモフ」

「じゃあ着ぐるみを脱いでケモミミを付けてくれればいいんじゃないかな?」

「ダメモフ。僕のアバターはおっさんだから、ケモミミつけたら気色悪いモフ」


 じゃあなんでそんな制度にしたの!?

 もう廃止にしたらいいんじゃないかな!?


「こ、声は少年っぽいのに……」

「ボイス変更アイテムを使っただけモフ」


 もうなんでもアリなキャラだね……


「沙南たんのクランでは何か制度を決めたりしていないのかモフ? こういう制度を作った方がみんなをまとめやすいんだモフ」


 そっか。うちはまだ人数が少ないからいいけど、モフモフさんの所みたいに大所帯になるとまとめるのが大変だもんね。だからこんな変な制度を作ってるんだ。


「うちはねぇ~、ん~っと……みんな仲良くっていう制度だよっ!」

「…………フッ……」


 鼻で笑われた!?


「さぁ、おしゃべりはここまでだモフ! 早く決着をつけるモフ!」


 自分から話を振っておいて!?


「行くモフよ! 雷神の力、見せてやるモフ!」


【モフモフ師匠がスキルを使用した。雷光伝達】


 そうして私に向かって一直線に走ってきた。そんなモフモフさんに、私は腕を振り上げる。


【沙南が大技を使用した。神技、爪薙】


 指から伸びた巨大な爪が、地面に五本の傷跡を残しながらモフモフさんを襲う!

 しかし、その爪の軌道を完璧に把握しているような動きで、モフモフさんは宙返りで私の攻撃を回避してしまった。


「雷光伝達は相手の攻撃タイミングや効果範囲を雷の速さで脳に伝えるスキルだモフ。これがある限り、闇雲な攻撃は僕に届かないモフ!」


 そう言って、素早い動きで滑り込むようにして私の懐に潜り込んできた。


「そして、これで終わりモフ!」


【モフモフ師匠が大技を使用した。神技、雷恐撃(らいきょうげき)


 その瞬間、視界が暗転した。

 周りが暗くなったかと思うと、バチバチと炸裂する光が現れる。それはモフモフさんの拳で、その拳をおびただしい光が包み込んでいた。

 動こうと思っても体が動かない。これって!


「この技はゼロ距離で使うと特殊仕様になる技だモフ。相手の動きは封じられ、僕の攻撃をただ見つめる事しかできなくなるんだモフ」


 やっぱりそうだ。私の暴走ルートで使える獣神滅砕牙と同じ効果。相手のステートを奪う能力!

 モフモフさんの拳に集まる光がバチバチとスパークして、はち切れんばかりの輝きを放つ。青白い雷光を振りかぶり、足を地面に踏み込ませた!


「喰らええぇぇ!!」


 肩を大きく揺らしながら、光り輝く拳を全力で振るう!

 その渾身の一撃が私の額に直撃した!!


 ――ガウゥゥン!!


 大きな衝撃音がこだまして、私の体がグラリと揺れた。

 ……そして、そのまま闇に消える。


「……ん? なんだモフ? 体が動かないモフ!」


 拳を振るった姿勢のまま、モフモフさんは困惑していた。


「暗転返しだよ」


 モフモフさんの後ろから、私はそっと囁いた。


「なっ!? なんで後ろに!? どうなってるモフ!?」

「ログ、見ればわかるよ」


 その言葉にモフモフさんは視線だけを動かして、そして驚いたように体を震わせた。


【沙南が大技を使用した。神技、牙抉がえつ


「し、神技!? 二つ持っているモフか!? いやでも、僕の神技を喰らったはずじゃ……」


 私は腕を上げる。

 右腕は頭の高さまで。左腕は腰の辺りまで。


「ごめんねモフモフさん。この技はね、当身なんだよ」

「あ、当身!?」


神技、牙抉:消費6000。この技は作動してから攻撃を受けると当身として発動する。相手の特殊仕様を受けている間でも使用可能。この技は発動させると特殊仕様となり多段ヒットとなる。攻撃力45倍。


 両手を上下に広げて固定する。指を開くと、その格好はまるで獣が口を開いて牙をむき出しにしたかのようだ。

 それを一気に閉じる! 腕を振りぬき、両手を交差する!

 上下の牙が交差して、獲物を引き千切るように力強く、荒々しく!


 ――グシャア!


 モフモフさんが獣の牙に引き裂かれるエフェクトが発生した。


【沙南のアビリティが発動。コンボコネクト+12コンボ】

【沙南のアビリティが発動。カウンター+2】

【沙南のアビリティが発動。HPMaxチャージ】

【沙南のアビリティが発動。状態異常打撲付与】

【沙南のアビリティが発動。プレイヤーキラー】

【沙南のアビリティが発動。スキルブースト】

【沙南のアビリティが発動。アビリティブースト】

【沙南のアビリティが発動。無効貫通】


 そのままモフモフさんは一瞬の間、宙を舞い、無残にも地面へ転がった。


「ぐ……あ……」


【モフモフ師匠に110億4403万5072のダメージ】


 凄いダメージが出た!?

 私が転身ルートで神化したときの攻撃力は装備効果を含めて39452。

 今回はモフモフさんの百万障壁でヒット数が増えて、さらに牙抉の多段ヒットでここまでのダメージになったのかな。


【沙南が新たな称号を手に入れた。ダメージ100億を超えし者】


ダメージ100億を超えし者:100億ダメージを叩きこんだ者に贈られる。ATKが100増加する。


『け、決着ぅぅぅ!! 信じられない展開です! なんと沙南選手、暗転を暗転で返して100億超えのダメージを叩き出しました! これにより、準決勝進出決定~~!!』


 解説の声が消えるよりも早く歓声が沸き起こる。

 大きく、熱狂的な歓声を浴びて、私は思わず周囲の観客に小さく手を振るのだった。

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