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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第三回イベント『勝ち抜きトーナメント』編
119/147

「必殺、畳返し!」

「モフ!」


【モフモフ師匠がスキルを使用した。百万障壁】


「キミにはこの戦術が一番効果的だモフ」


 そう言って、モフモフさんは拳を構えながらステップを踏んでいる。

 百万障壁……。バトルロイヤルの時にゼノさんが使っていたスキルだ。大ダメージを与えた時、そのダメージは強制的に百万まで下がってしまうという効果。

 そう、モフモフさんのクラスは『ソルジャー』だ。万能型とも言われるし、器用貧乏とも言われるらしい。


「さらに!」


【モフモフ師匠がスキルを使用した。ダメージプロテクション】

【モフモフ師匠がスキルを使用した。ベルセルク+5】

【モフモフ師匠がスキルを使用した。鍛冶研磨+5】

【モフモフ師匠がスキルを使用した。鋼鉄化+5】


 一気にいろんなスキルで守りを固めている。なんか初めて見るのもあるよ……

 けど、私だって百万障壁の弱点は分かっているつもりだ。

 このスキルは一度攻撃を受けると効果が切れてしまう。だからその度に掛けなおさなくてはいけないという隙がある。

 ずばり使うのは連続攻撃。一発目は防げても、二発目以降はダメージをちゃんと与えられるから。

 そして私の特技で連続攻撃が可能なのは、『咆哮連牙』。これを叩き込めれば私の勝ちになる。


「さぁ行くモフよ!」


 モフモフさんが一気に襲い掛かってきた! そのスピードは忍者顔負けの速さだと言える。

 そして熊の手には何も武器がないように見えるけど、ナーユちゃん曰く、鋭い爪が装備品なのだという。

 本当にソルジャーは色んな武器を装備できて、多種多様なスキルを使うクラスだよ。

 モフモフさんはギュンと一瞬で側面に迫り、その爪を振るってきた。私はその攻撃をギリギリまで引き付ける。

 ……今だ!


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 私も負けじと高速でモフモフさんの背後に回り込む。


【沙南が特技を使用した。咆哮連牙】


 相手の攻撃を誘い、回避しつつ背後に回り込む。完璧なタイミングで特技を繰り出せた!


【モフモフ師匠が詠唱を開始した】


 しかしモフモフさんが急に横へ飛び退いで、私の攻撃を寸前で回避した。

 今のは詠唱キャンセル。むぅ、なかなかやるよぉ……


「危ないところだったモフ。まさかソニックムーブをあんな絶妙に使いこなしてくるとは思わなかったモフ……」

「私もね、今のが避けられるとは思わなかった」

「まぁ、僕くらいのレベルになればソニックムーブの動きにだって対応できるモフよ」


 さすがに一筋縄ではいかないみたい……


「さぁ、お返しモフ!」


【モフモフ師匠が特技を使用した。烈破斬】


 そのぬいぐるみのような体をクルクル回転させて、その遠心力を加えて私に爪を振るってきた。

 けど、こういう攻撃はまだ見切りやすい!

 私はその爪に押し返すように前に進んだ!


【沙南のアビリティが発動。ブロッキング】


「モフ~!?」


 このチャンスで防御力無視を使うよ! これならダメージを与えられる可能性がある!


【沙南が大技を使用した。奥義、咆哮牙・極】


 自分の手のひらを熊さんのふくよかなボディに思いきり叩き込む!

 ドスンという衝撃と共に、モフモフさんは吹き飛んだ。


【モフモフ師匠に0のダメージ】


 しかし、全くダメージうけてくれない……


「ええ~!? これでもダメなの~!?」

「当然だモフ。僕が使った『ダメージプロテクション』というスキルは、受けるダメージから50万を減らしてくれるモフ。それに見ればわかる通り、僕はダメージを軽減させる防具だっていくつも装備しているモフ」

「いや、お店の前で風船を配ってる着ぐるみにしか見えないけど!?」


 一度ちゃんと鏡の前に立たせて自分を知ってほしいよ……

 そんな事よりも、やっぱりダメージを与えるには百万障壁を剥がすしかないみたい。


【モフモフ師匠がスキルを使用した。百万障壁】


「さぁ、キミの力はそんなもんモフか?」


 爪を立て、クイックイっと私を煽る。

 正直、その可愛らしい姿で挑発されても全く悔しくもないんだけど、ここはあえて攻める!

 私はモフモフさんにダッシュで距離を詰めようとした。

 その時……


【モフモフ師匠がスキルを使用した。雷震】


 その拳で地面を叩こうと腕を振り下げている。それを見た瞬間に私の頭が危険を知らせた。

 地面を叩く。振動。衝撃。行動不能。

 ヤバめの情報が一気に押し寄せてきて、私は反射的に小さく飛び跳ねていた。

 ドスン!

 モフモフさんが地面を殴りつけると、そこから波のように振動が広がっていく。縄跳びを飛ぶように空中へ逃げた私の足元を、その振動は通り過ぎていった。


【沙南が特技を使用した。震脚】


 着地と同時にお返しをする!

 モフモフさんは対応できずに、その衝撃で空中に跳ね飛ばされた。


「モフ~!?」


【モフモフ師匠に0のダメージ】


 やった! これで百万障壁が剥がれた!


【沙南が詠唱を開始した】

【沙南が特技を使用した。咆哮弾】


 震脚の硬直をキャンセルして、すぐに追撃の遠距離攻撃を撃つ!


【モフモフ師匠がスキルを使用した。空中蹴り】


 宙に投げ出されたモフモフさんは、二段ジャンプで私の追撃を回避した。

 むぅ~……でもまだ着地狩りすれば……


【モフモフ師匠がスキルを使用した。百万障壁】


 あ、ダメだ。また張りなおされた……

 これは本当に厳しい。前に戦った地下ダンジョン攻略部隊のゼノさんよりも動きがいいから、百万障壁を剥がす事が難しいよ……

 私が頭を悩ませていると、足に何かがぶつかった。さっきモフモフさんと二人で振動を起こしたときに、無数の石ころで地面が荒れているんだ。

 しかし、それを見た時に閃光が駆け抜けるような妙案が浮かんだ。

 私は地面に転がっている石を、モフモフさんに向けて蹴り飛ばした!

 地面に着地する寸前のモフモフさんは、その石を避ける事が出来ずポコンとぶつかる。


【モフモフ師匠に0のダメージ】


「……」

「……」


 ほんの少しの間、私とモフモフさんは見つめ合う。


【モフモフ師匠がスキルを使用した。百万障壁】


 張りなおした! 飛来物ダメージで0のダメージでも張りなおした!

 つまり、ダメージ判定が入れば百万障壁は剥がれるんだ!


「いいこと知っちゃった~♪」

「モ、モフ……」


 私は足を振り上げて、全力で地面を蹴り上げる! 靴で地面を抉るようにして足を振りぬくと、地面がめくれ上がって巨大な岩石がモフモフさんに飛んでいく!


「必殺、畳返し!」

「いやそれ畳じゃなくて岩盤だモフ!」


 モフモフさんは驚きながらも爪を振るった。


【モフモフ師匠が大技を使用した。秘技、天山爆波】


 私が蹴り飛ばした岩盤が粉砕して、さらに地面に傷跡を残しながら私に迫ってくる。

 扇状に広がりながら襲ってくるその衝撃波は、まさに爆弾が爆発したかのよう。


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 ギュンと外壁を沿うように大回りをして、モフモフさんの攻撃を凌ぎながら距離を詰める!


【沙南の攻撃】


 腕を振り下ろすけど、モフモフさんには簡単に避けられてしまった。


【沙南が詠唱を開始した】


 ズン!

 振り下ろした腕は地面に突き刺さる。私はそこから、またしても固い岩石を引っこ抜いた。


「そ~れ!」


 その岩石をモフモフさんに向かって投げ飛ばす。当たれば百万障壁を剥がせるからね。


「キャッチボール感覚で岩石を放り投げるなモフ!」


 モフモフさんはヒョイと避ける。


【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 自分で投げた岩石を追い抜いてキャッチする。そしてそれをまたモフモフさんに投げ飛ばした!


「自分で投げた物を自分でキャッチするなモフ!」


【モフモフ師匠が特技を使用した。ワイルドスィング】


 その爪で岩石を切り刻む。そうして私のボールは塵になってしまった……

 野球で打ったボールが粉々になったらどうなるんだろう?

 そんな考えを与える暇もなく……


「今度はこっちから行くモフ!」


 とてつもない速さでモフモフさんが突っ込んできた!

 元々高いステータスに、AGIを上昇させるスキルを使っているために忍者や盗賊レベルに速い!

 私を正面から堂々と殴り倒すべく、その太い腕を振り上げていた。


【沙南が魔法を使用した。ボールライトニング】


 バチン!

 モフモフさんの目の前で光の球が弾け散る。


【モフモフ師匠に0のダメージ】

【沙南がスキルを使用した。ソニックムーブ+1】


 この光を目くらましにして、私は一瞬でモフモフさんの頭上まで移動した!


【沙南が大技を使用した。絶技、獣神咆哮牙】


 一瞬とはいえ、視界を奪われたモフモフさんが現状を理解する前に、私は渾身の一撃を頭に叩き込む!

 ズガアアアアアアアアン!!

 頭に入れた一撃によって、モフモフさんは地面に叩きつけられてそのまま沈み込んだ!


「モ……フ……!?」


【モフモフ師匠に175万6660のダメージ】


 ログに表示されたその数字を確認して、私は安堵の息を漏らすのだった。

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