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ゲーマー幼女 ~訳あって攻撃力に全振りする~  作者:
第二回イベント『バトルロイヤル』編
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「『び~すとふぁんぐ』というクランはマジ卍だな」

* * *


 ――キンッ! ガギンッ!!


 激しい剣戟を繰り返しながらも私はこの足を止めない。常に動き続けていないと隙を突く事ができないから。

 正面から瞬時に背後に回り込む足捌きで、私は彼の背中を斬り付けた。


【GMナーユの攻撃】

【ハルシオンに0のダメージ】


 全然効かない……。盗賊って攻撃力低いからなぁ。

 それに相手は地下ダンジョン攻略部隊、レベル1200を超えるクランマスターだから、相当ステータスが高いはず。おまけにクラスは物理防御が高い剣士で課金装備っぽいゴージャスな武装してるし……

 これ、私ダメージ与えられるのかな? とりあえず、次は特技を使ってみよう。


【GMナーユが特技を使用した。ダブルスラッシュ】


 もう一度背後に回って攻撃を仕掛けてみた。けど、今度は見事に回避され、二撃目は剣で受け流されてしまった。


「さすがの速さだ。だが、俺に同じ動きは通じないぞ」


 余裕の笑みを浮かべながらそう言われた……

 大体戦うプレイヤーは二通りに分けられる。一つは同じ攻撃を何度でも喰らってくれる、対応力の低い人。

 そしてもう一つは、戦っている最中でも常に頭を動かして、同じ攻撃は通じない対応力の高い人。

 どうやらこの人は後者のようだから、戦闘が長引けば不利になる。

 さて、短期決戦が望ましいけど、うまくいくかしら?


【ハルシオンの攻撃】


 私の攻撃を綺麗に捌いた彼が反撃を仕掛けてくる。


【GMナーユが魔法の詠唱を開始した】


 詠唱キャンセルで攻撃モーションを解除して、その反撃の反撃に出る。


【GMナーユが大技を使用した。奥義、急所突き】


「なに!? 詠唱キャンセルか!?」


 理解したであろう時には、私の突きは見事に決まっていた。


【ハルシオンに0のダメージ】


 ……それでもダメージを与えられない。これ、本格的にまともな戦い方じゃ勝てないかも……


奥義、急所突き:攻撃力7倍。50%の確率でダメージが1.5倍になる。


 この大技でダメージ0って事は、1.5倍になったとしても一撃で倒すのは無理よね。

 あとは絶技でダメージを与えられるかどうかかぁ。……なんだか絶技でも無理な気がするけど……


「ふっ。俺はあなたを倒すために物理防御力を出来る限り上げてきた。生半可な攻撃では傷一つ付ける事はできない」

「むぅ~……」


 確か、ゲームマスターを倒すと称号が貰える、という噂があって、それが本当かどうかを確かめるために私を倒したいらしいけど、それにしてもガチすぎないかな?


「さらに俺は絶対に油断しない。どんな状況でも全力で迎え撃つ!」

「絶対に油断しない、ですか。その割には私達の奇襲が成功して、すでに何人かメンバーが減っちゃってるみたいですけど?」


 ちょっと揺さぶってみる。


「な、こいつぅ!!」

「マスター! 俺達全員でやっちゃいましょう!!」


 意外にも怒り出したのはクランマスターじゃなく、少し離れている所で見守っていた仲間の方だった。

 一人はローブを装備している魔術師風の男性。もう一人は槍を装備している槍士風の男性。

 この二人が悔しそうに私を睨みつけていた。


「落ち着け。お前達は待機していろ。それにゲームマスターの言う通りだ。俺は自分の目的で頭がいっぱいで、こんなふうに奇襲される事なんて想定していなかった」


 さらに意外にも、彼は怒るどころか自分の非を認めてしまった。


「ふっ。愚かな事だ。どうせ今回のイベントも歯向かう者はいないと過信して、気が付けば多くのメンバーがいつの間にか戦闘不能になっていた。完全に予想外だったよ」


 彼……ハルシオンさんは青年のアバターを使っている。冒険モノの主人公のような、元気溢れる若者のアバターだ。

 だけどその中身は物凄く落ち着いている。この態度から中身は結構な大人なんじゃないかと思えるほど、クールでこっちのペースには乗って来ない。

 もしかすると、バリバリ仕事とかしてるビジネスマンだったりするのかも? いやでも、レベル高すぎるからやっぱり学生かな?

 う~んわからない……


「全く、あなたの所属している『び~すとふぁんぐ』というクランはマジまんじだな」


 ……うん? 今なんて?

 マジ卍って、うちのクラスの女子が使ってるのを聞いた事があるよ? 私も意味がわからなくて聞いてみた事があるけど、どうやら特に意味はなく、その時の気分で盛り上がった時に使うらしい。この言葉は主に活力にあふれる女子高生が使うってイメージがある。

 いや、私は使わないけどね! 私は言葉は正しく使いたいって思うほうだから!

 ……でも、という事はだよ? この人女子高生なの? いやいや……

 私が混乱しながら彼を見ると、キメ顔で満足そうだった……

 ……もうよくわからない。もしかして使ってみたかっただけ、とか……?


「おい。やっぱり俺達も手伝おうぜ?」

「けどマスターが手を出すなって……」


 なんだかマスターの年齢が気になっていると、離れている二人がなにやらコソコソと話をしているのが聞こえた。

 何を話しているのかはよく聞こえない。

 とにかく私がする事はただ一つ、絶技を使ってダメージが入るかどうかを確かめる事! この人の中身を気にしている場合じゃないんだからっ!


「さぁ、いきますよ!」

「こい!!」


 私が武器を構えて、地面を蹴る足に力を込める。

 その時だった!


 ――シュルシュルシュルシュル!


 突然地面から触手が伸びて、私の体に巻き付くのだった。

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