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ep.1 ある少女の望み

少女ーーー少女は一人、何の目的もなくただ街を歩いていた。


今日は一年に一度訪れる“父の日”。

普段あまり口にすることの出来ない感謝の思いを、父に伝える大切な日だ。

街中で周りを見回せば、父親と手を繋ぎながら楽しげに買い物をする親子の姿が、少女の目に頻繁に映り込んで来る。


「ーーー父親、か」


親子の姿を哀しげな目で見つめながら少女は呟く。

少女は父を幼い頃に病気で亡くし、母と2人助け合いながら生きてきた。

幼い頃のおぼろげな記憶は、父の顔すらはっきりとは写さない。


「…会いたいな」


叶うはずもないその願いは、誰にも聞かれることなく夕暮れの空に消えて行くのだったーーー。


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