廃棄肉
ニャーの字……わからん。
「ついでだ。これを見なよ。急げ。そろそろ犬が僕たちに気づいた頃だ。彼らは主人に従っているだけだ。戦いたくはない。歩きながら頼む」
「……」
元気な奴だ……私はヘネコプターにガッツリ酔っているというのに……しかし犬が来るのはまずいな……なになに?
「『廃棄肉取り扱い書』?これは?」
「諏訪間ミートに忍び込んだとき見つけたんだ。おかしいとは思わないか?」
「なにが?」
「あのなぁ……あれだけしか家畜がいないのに肉が余るわけがないだろう?」
「あぁそうか」
「廃棄肉処分……埋めるか焼くかだよな。ここは諏訪間ミートの土地からほど近いね?」
ここで私はニャームズの言いたいことがわかった。
「『ここに廃棄肉を棄てている』?」
ニャームズはタマネギシガーを取り出し、歩きながら火をつけた。
歩きタマネギはマニャー違反なのだが。
「『廃棄肉』があるなら……その可能性もあるかもね。ところで君は通せんぼのあの男が日本人ではないのに気づいていたかい?」
「犬の飼い主の? ……えっ!? 彼らは外国人なのか?」
見た目はほとんど日本人だったような気がしたが……
「気づいてなかったか。見た目も違ったがね。君には難しかったか。一番の違いはイントネーションだ。僕の耳は誤魔化せない。港に現れた不審な船……外国人。廃棄肉……ムッ! 伏せろ!」
「おっと!」
諏訪間ミートのマークの着いた作業服を着た男が地面を掘り、『肉らしき物』を埋めていた。
私たちは腹ばいになって近づいた。
「臭い……これは確かに廃棄肉だ……いったいどこに廃棄肉が……」
「ニャトソン……とんでもない事件になりそうだぜ?」
「……?」
肉の臭いを嗅いだニャームズの顔が歪む。
「僕はこの肉の臭いを何度か嗅いだことがある。死の臭いだ……」
「死の臭い……?」
『てめぇらそこで何してやがる!』
「むっ! いかん! 犬だ! 走れニャトソン!」
「うむっ!」
とは言ったものの私の足はかなり遅い……ダイエットせねばな……
「じれったいな! 追いつかれるぞ!」
「わわわ……」
『噛み殺してやる!』
犬はよだれを垂らしながらスピードをあげる……
「どうしよう!?」
「戦うか……そうだ!」
「くすぐったい!」
ニャームズが私の毛皮から何かを取り出しそれを地面に撒いた。
『……いてぇっ!』
「すまないな!」
「ニャームズ! 何を撒いた!?」
「マキビシさ。君の忍者セットの。今はとにかく走れ!」
「なるほど……わかった!」
私たちは命からがら逃げ切った。
……
「……スペシャルルームか。一体どこに? 犬を呼ぶわけにはいかないし……仕方がない。『彼』を頼るか……」
「ヒュー……ヒュー……彼?」
ニャームズは息一つ切らさず切り株に座り、私はニャーの字に倒れていた。
「ニャトソン。君にも彼を紹介しないとね。僕の人間の協力者さ。名を『乾一』という。探偵さ」




