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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
イカ刺し山ダンディー
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牧場へ

『ニャー・チューブ』……猫の世界の無料動画投稿、閲覧サイト。


『ニャーチューバー』……?


「ほう……なるほど?」


「どうした?」


 私はニャームズのPCを覗いた。


「なんだ……『ニャー・チューブ』じゃないか。これがどうした? 探偵を止めてニャーチューバーにでもなるのか?」


「いやいや。諏訪間ミートについて調べていたらたどり着いた。これは諏訪間ミートがテレビ出演した時の映像のようだ」


「どれどれ?」


 諏訪間ミートの社長『諏訪間正』が牧場を歩いている。


『こうしてね。恵まれた環境で育てているから我が社のお肉は美味しいんです』


 諏訪間もまた人の良さそうな中年男だった。


『厳しい大自然で生きるより、ここでのんびり生きた方が動物にとっても幸せだと思うのです。動物たちは殺される時も感謝しているような実に穏やかな顔をしています』


「……」


 これに関してはニャームズも私もノーコメントだ。


 動画ではリポーターが『少人数編成とは思えないほどの業績について』という質問をしていた。


『愛情を注いでいるのはね? 動物たちだけでなく社員たちにもです。私は社員皆を家族だと思っています。手厚い保障……それぞれに向いた仕事、労働時間の調整……頑張れば頑張った分だけ給料も上がりますしね。それに家具、家電付きの社員寮……社員の家族も私の家族ですから。愛情を注げば社員たちはこちらの思った以上の仕事で応えてくれます。それが業績につながっているんじゃないかと』


『なるほど~諏訪間ミートには『愛』が溢れているんですね?』


 その後はつまらない見学動画だった。


「ふむ……」


「どうした?」


 ニャームズは動画を切り、数字の並ぶページを開いて読み始めた。


「それは?」


「諏訪間ミートのデータさ。確かにこれは……」


 どうやらニャームズは自分の世界に入ってしまったようだ。

 こうなっては声をかけても無駄だ。

 私はジッと待った。




……




「脱げ」


「なぜだ?」


 諏訪間ミート潜入の夜……私はジャパニーズ・ニンジャ・ルックでやってきた。


「忍装束というらしい。目立たなくていいだろう?」


「猫のままでいいんだよ。余計に目立つ」


「そんにゃ……」


 気に入っていたのに……手裏剣まで用意したのに……私はしぶしぶ脱いだ。


「手裏剣とマキビシはしまっとこう」


「好きにしなよ。……ほっ!」


 ニャームズは偽造カードをカードリーダーに通した。

 鋼鉄の扉が開く。


「そのカード……君が作ったのか? ほとんど犯罪者だな……」


「正義だ悪だなんてのは大した問題じゃない。僕は僕のやりたいようにやっているだけさ。正義と悪……その2つをやたらと定めたがる奴が一番のガンなんだ。いこうぜニャトソン」




……






「よおよお! 猫じゃないか!」


「本当だ! 猫だ!」


「バカ!」


 ニャームズにあれほど目立つなと言われた私だが、あっさりと鶏と豚に見つかってしまった。


「よおよお! 猫! 外の世界はどうだい?」


「ねえねえ。きかせてよ!」


 ニャームズは私に耳打ちした。


「彼らは近いうちに殺されて喰われるんだ。そんな奴らとしゃべって情が移ったらどうする?」


「ニャームズ。彼らは外の情報に飢えている。少しくらいいいだろう?」


「勝手にしたまえ……僕はいく」


 私とニャームズは別行動ということになった。


「さて……私の冒険の話をしようかな?」


「きかせてくれ!」




……





「……というわけさ」


 一通りの冒険の話を彼らにした。


「いやぁ!」


「面白かった!」


「……」


 私の話をイキイキと聞く彼らに私は訊ねた。


「ここからでたくないのかい? 君たちはいずれその……殺されて食べられる」


 彼らは笑った。


「仕方がないよ。外敵もなく、毎日楽しく楽させてもらってその報いが食べられることなんだ。俺たち諦めてるよ」


「そうそう。飼育係に悪いしね。ここで逃げ出したら食い逃げよ。あっ! 食べられるのは私たち!」


「ブッ!」


 二匹はワッハッハと笑い出した。


「あー……今日はあんたのおかげでいい夜になった。スペシャルルームにいる仲間にも聞かせたかった」


「スペシャルルーム?」


「そうさ。高級豚や鶏はスペシャルルームでもっと快適な生活をしているらしい」


 なるほど。

 そう言えば牧場にしては数が少ないと思った。


「ニャトソン。呆れたね。ずっと話をしていたのか? 収穫はなしだ。帰ろう」


 暗い表情のニャームズが帰ってきた。


「ん? ああ……ニャームズ。帰ってきたのか……」


「いこう」


「それじゃあ二匹とも……」


「おう!」


「またね!」


 私は肉きゅうを振って別れた。

 辛い……彼らにはもう会えないかもしれないのだ。




「……だから言ったろうニャトソン」


 ニャームズが私の心を読んだかのようにそう言った。


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