ニャームズの隠れ家
新章
「またか……」
ここはアイラ島の僕の隠れ家……ここでのんびりとアイラウイスキーを飲むのが僕の楽しみなのだが……
「そこをなんとか」
僕の大事なリラックスタイムに訪れてきたのはニャーランド誌のモーガン・ホッチナーである。
「『また』ニャトソン君がスランプなのかい?」
「はい……重症です」
「まったく……」
紹介なんてしてやらなければよかった。
ニャトソン君が執筆に滞る度、僕がその埋め合わせをするのだ。
「百万猫の読者がアナタの冒険のお話を待っています。最近では人間の読者もいるようで……お願いします」
「むむ……」
これを言われると弱い。
まったく……携帯小説サイトに冒険記を勝手に投稿するとは……大胆なことをしてくれる。
※ニャトソン君が携帯小説サイトに冒険記を投稿し始めるお話はまた今度の機会に語るとしよう。
「『マンボウ町の決闘』事件時にあなたがどこで何をしていたかが読者は気になっているようです」
「あぁ……ニャンダイチを鍛え直した事か……悪いがそれはトップシークレットだ」
僕のファンが減る。
「そうですか……それではそのあたりのお話でなにかファンタジーなものを……」
「……ファンタジー? なんだいそりゃ? 指定があるのか?」
「人間の読者はですね。ファンタジーが好きなようです。ここらで人間の読者を増やすために……」
「マンボウ町の決闘あたりのお話でファンタジーを騙れと? そう都合よくあるわけ……」
いや……待てよ? 飛びっきりのがあったな。
「ふむ……ファンタジーね……それは恐竜やドラゴンなんかはどうでしょう?」
モーガンは肉きゅうを叩いて立ち上がった。
「ほほぉ! ありますか!? そんなファンタジーなお話が!?」
「まあまあ……落ち着いてくれよ。そうだねぇ……ファンタジーと言えばファンタジーだね。人間の友情というのは……」
「人間の友情?」
「そうさ」
僕は2つのグラスにロックアイスを入れ、並々とアイラ・ウイスキーを注いだ。
「まっ、飲みながらゆっくり話すとしよう」
アルペン・ザルツを肉きゅうに乗せ、それをチビチビと舐めながらウイスキーを飲んだ。
「ほら。君もやりたまえ」
「はっ、お言葉に甘えて……」
モーガンはウイスキーを一口のみ、顔をゆがめた。
「いやはやこれは……ピーティーといいますか潮くさいといいますか……」
「慣れればアイラのこの香りは癖になる。さて……このお話は恐竜とドラゴンが……いや、友情が頑なな男の心を溶かすファンタジーの物語だ」
僕はそっとグラスを置いて語り始めた。




