新たな猫生。
「ニャトソンさん!」
ナタリーがリングに上がり私を抱きかかえた。
「ナタリー……」
「私……結婚は出来ませんわ」
「そうか……」
悲しいが仕方ないだろう。
私は見返りを求めて戦った訳ではない。
ただ彼女に幸せになって欲しかっただけだ。
「私。ニャームズさんとは結婚出来ません。だって私はニャトソンさんと結婚するから……」
「むっ!?」
それは……つまりは……!?
「ニャトソンさん。幸せにしてくださいね?」
「……ニャイドリアーーン!」
やった! 私はやったのだ! 彼女の愛を手にした! ニャイドリアンが誰だかはわからないが、そう叫びたくなった。
「ニャイドリアーーン!」
「ニャッキー!」
私たちは抱き合った。
「……」
私たちに向けられたブラカリの面々の視線が痛い……しまった。
「逃げなきゃ……奴らが……」
ボスが負けた腹いせに襲ってくるかもしれない……あぁ……私はなんと考えが及ばないオスなんだ……ニャームズならこんなミスはすまい……
『全員動くな! ドーサツだ! 窃盗の疑いでお前ら全員逮捕する!』
そんな声が聞こえた気がした。
「……ケーブ? ショカツ? あっ……」
「ニャトソンさん!」
もう1%も体力はない。
私はとうとう意識を失った。
……
「……はい。ニャ~ン」
「ニャ~ン♪」
ここから先は後日談だ。
私はナタリーに柔らかくしたカリカリを食べさせて貰っている。
「しかし……」
『やはり冷たい風がピープー吹くこの季節はお風呂ネ! みんなもマイ・桶を作ってお風呂を楽しもう!』
テレビではニャモさんが浴衣を着て『柳沢桶店』と書かれた風呂桶を持っている。
「ニャームズの奴……まさかニャモさんと知り合いとは……帰ってきたら問いつめてやろう」
柳沢氏は西岡氏に本を返し謝罪し、柳沢桶店はニャモさん効果で注文が殺到しているらしい……『風が吹けば桶屋が儲かる』……まったくうまいこと言ったもんである。
ブラックカリカリはどうしたって?
あぁ……新入りのニャーバンがミスを犯し、そこから芋づる式にメンバーが捕まり、解散したよ。
『彼らはしっかりと団結したチームだが、ほころびはある。例えばブラカリに新しくメンバーが加入したメンバー……彼なんかは……』
これまたニャームズの言ったと通りになった。
逮捕までの手回しをしたのもニャームズらしい。
おかげで私たちはブラカリに襲われずに済んだ。
……凄いオスだ。
頭が上がらない。
「あなた。どこか痛むの?」
「ちょっと考え事を。平気さナタリー」
幸せだ。美しい妻に産まれてくる子供。
……しかしこのままでいいのか?
私はフジンに養われている実質ニャートだ。
オスとしては何とか自分の力で二匹を養ってあげたい……
こんな悩みを解決してくれたのはやはりニャームズだった。
……
「どうもこんにちは。ここはニャームズさんのご自宅で間違いありませんかな? 」
訪ねてきたのは物腰柔らかな初老の猫だった。
「そうですが? 何か?」
「私こういう者で……」
名刺を受け取り声に出して読んだ。
「『ニャーランド誌……モーガン・ホッチナー』……ニャーランド誌!?」
「我が社をご存知ですかな?」
「ご存知もなにも……世界一有名な猫雑誌だ。ニャーランド誌の方が私なんかになんの用で……あっ! 私はニャームズじゃありませんよ!?」
もうニャームズ役は御免だ。
憧れのニャーランドの猫……ナタリーも目を白黒させている。
「ニャトソンさんですよね? わかっています。ニャームズさんからよく聞かされています」
「ニャームズが!?」
驚いた……ニャームズは本当にニャーランドの猫と知り合いだったのか……
「あなたの書いたニャームズ先生の冒険記……読ませてもらいました」
「えぇっ!?」
あの作文を!? ニャーランド誌の猫が!
はっ……恥ずかしすぎる!
「それでね。どうでしょう? 『ニャーロック・ニャームズのニャー冒険』というタイトルでウチで連載を持って見ませんか?」
「「えぇー!?」」
私とナタリーは声を合わせて叫んだ。
「おカリの方は言い値で……私共も何度もニャームズさんに冒険記のオファーを出したのですが受けてもらえず……しかしニャームズさんはニャトソンさんならば自分の冒険を書くことを許すと……」
言い値て……まいったぞ? いきなり作家になれなどと……
「あなた! 是非うけて! 私あなたのサポートをするわ! 私の夢を叶えて!」
「……夢?」
あぁ……そうか。
『本に関わる仕事がしたいんです』
彼女はそう言っていた。
ニャームズは彼女の夢まで叶えてくれたのか……
本当に……本当にあのオスにはかなわないな……
遠く離れた地で何度も私たちを救ってくれた。
「ニャトソンさん。お返事を……」
「……」
もう答えは決まっている。
……見てろよニャームズ。
私だってお前並みに有名になってやる。
「喜んでお受けします」
「おおっ!」
私はモーガン氏と握手をした。
「……待てよ?」
「?」
ニャームズに追いつくためにニャームズの小説を書くのか……
結局ニャームズ頼り……
「やっぱりかなわない」
私は今回。自分を取り戻し、あたらしい自分を見つけ、妻と子供と職を得た。
そして……我が友の偉大さを。
「ふむ」
『ニャームズが帰ってきたらまた二匹で飲もう』
私はそう思った。
……酒のお供はもちろん私の今回得たとびきりの武勇伝であるのは言うまでもない。
2015年。ニャーランド誌掲載。
『マンボウ町の決闘』
完。
今回から2015年掲載です。




