マンボウ町
今回の事件は私にとって実に印象深い事件となった。
初めての恋……初めてのニャームズ無しでの事件解決……まぁ結局はニャームズにあれやこれやと肉きゅうを回してもらったわけだが、私が活躍したことには変わりはない。
私は闘い、そして勝った。
そして立ち向かう勇気は大事だと知った。
胸を張って『我が息子』に自慢できる勝利だと思う。
随分含んだ前置きになってしまったが、読者諸君はニャーブティーでも飲みながらくつろいで読んで欲しい。
「ずっとニャームズさんのことは噂で聞いていて……私ずいぶん憧れたんですのよ?」
「いえいえ……憧れるほどの者では……」
「ニャームズさん。是非お力をお貸しください……もう頼れるのはあなたしかいないのです」
「ははぁ。なるほどお困りですか? それではそちらにおかけになってください」
「はい」
ことの始まりはこの美しい白猫『ナタリー』が私の元を訪れてきたところから始まる。
彼女はどうやら私をニャームズと勘違いしているらしく、私は精一杯ニャームズを演じながら彼女の話を聞くことにした。
なぜ私がニャームズの役をやらねばならぬのだ?
しかし彼女の私を見たときの心底安心した表情……よほど思い詰めていたのだろう。
今更『私はニャームズではない。ニャームズはここにはいない』などといえるだろうか? 否。言えるはずもない。
あと彼女は可愛い。
嫌われたくないし、好かれたい。
「私は『マンボウ町』に住んでいるのですが……」
「ほほう? マンボウ町に?」
『マンボウ町』は古本の町として全国的に有名な町である。
「ニャームズさんはよくマンボウ町に来られるのですよね? 私は箱入り猫なのでお会いできませんでしたが……」
「えっ……えぇ……」
マズい……ニャームズは確かによくマンボウ町に足を運んでいたようだが私は読書といったらニャーランド誌発行のニャース・ペーパーの4コマ漫画『ニャボちゃん』ぐらいしか読んでいない。
ボロがでてはマズい。
話を進めるとしよう。
「ええ。マンボウ町にはよくいきますよ。それでどうなさいましたか?」
「あらやだ私ったら……ミーハーで……プライベートのことを詮索するなんて野暮なこと……」
「いえいえ。お気になさらず」
照れたところもまた可愛い。
「私の飼い主はマンボウ町で小さな小さな古本屋を営んでいるのですが……」
やれやれ……やっと話が始まるみたいだな……。
ボロがでないよう、最後まで気合いを入れてニャームズを演じなければ……
「ニャームズさん? どうかされましたか?」
おっといけない。不安そうな顔をしていたのだろうか?
「いえ。続きをどうぞ」




