正気のカラス?
カンッ……カンッ……カンッ……
私とニャームズは非常階段をゆっくりと昇っていく。
肉きゅうなのになぜカンカン足音がするんだ? 不気味だな。
「みえてきたね」
「うむ」
こわい。
くちばしも羽も刃物の化け物かぁ。
その話を生き残りの猫に聞きに行ったのはいいのだが、彼はドムの言う通り、《化け物がでた! うわぁ!》としか言えない猫になっていた。
精神が壊れるほど恐ろしいものを見たのだろう。
情報は得られなかったので、仕方なくこうして直接あの部屋のベランダに向かっているのだが……ニャームズがいくら強いとはいえ大丈夫だろうか?
「……あっ!」
鳥たちと目があった、夜行性のくせにクキャーと奇声をあげ、こちらを威嚇する。
あれは餌をみる目だ。
「心配するな。脚をみろ」
「ん? 紐か?」
鳥たちの脚には丈夫そうな紐……。
それはそうか。
紐でもついてないと逃げ出してしまうもんな。
少し安心した。
「すみません。少しお話を伺いたいのですが!」
「クワセロー!」
「クイテー!」
……会話にならん。
全員よだれをダラダラたらし、眼は血走っている。
どんな飼われ方をすればこうなるのだ?
「……甘やかされてるな。糞尿臭い。餌だけ与えられたペットはこうなることが多い」
「ここの手すりに乗って飛べばベランダまでいけないことはないな?」
行こうとは思わないが。
ベランダまで飛んだら間違いなく襲われる。
それに全身刃物の怪物鳥。
「よっ!」
「ええっ!?」
ニャームズはピョンと飛んでベランダに着地した。
「突然失礼。お話をきかせ……むぅ」
はえー。
相変わらず猫離れした戦闘力だ。
襲ってきた鳥たちを一瞬で気絶させた。
目にも求まらぬ早業。
「突然お邪魔してすまないのだが、喰われるわけにはいかないのでね……失礼した」
帽子をとって一礼。
うーんニャンディー。
「なんだぁ。おめぇは?」
カラスだろうか? ロシア訛りも鳥訛りも強いがなんとか聞き取れる。
「どうやらあなたは話が通じそうだ」
「……どうかな?」
……
気絶させた鳥を室内にいれて窓を閉め(悪臭がした)、私もベランダにピョンとんだ。
「全身刃物の化け物ねぇ……俺が来てからはそんな奴みてないが……」
このカラスは最近アムリアに捕まえられたそうだ。
捕まえた鳥も飼っているのか……。
「……そう言えば猫の肉をくったことがあったなぁ……気を悪くしたか?」
「いいえ」
「いいえ」
弱肉強食。
猫が鳥に倒され喰われた。
やられたら喰われる。
あたりまえのこと。
いちいち反応してられない。
「あのときは……アムリアしかいなかったから……どうかなぁ? ここにはたくさんの鳥がいてな。正直交流もないし、見たこともないやつもいる」
詳しく聞くとアムリアもベランダに猫が入ってくると刃物で殺して鳥に食べさせるらしい。
恐ろしい。
ここまでわかったことはアムリアもここにいる鳥たちの大半もクレイジーだというだけだ。
窓から部屋をみた。
この部屋のどこかに化け物がいるかもしれない……。
猫背がゾワッとした。
つづく。




