ルパンとアブゥと真澄と太一と泰二。
「ニャンダイチ! 本当に大丈夫なのか!」
「あの猫にできて私に出来ないことなんてありませんよ!」
ああ……まさかニャームズ亡き後にこのヘネコプターに乗ることになるとは……
(まっ。色々言いたいことはありますが。ルパン本亀に訊いてみましょうや)
タマがそんなことを言ったので急遽こうして警備が頑丈になった動物園に侵入するため、ニャンダイチの操縦で動物園の上空をフラフラしている。
「あそこがゾウガメのコーナーかな? 着陸します!」
「ひえぇぇ!」
垂直落下はやめてぇぇ!
……
なんとか……なんとか亀池に着地できた。
「あいたたた……」
「大冒険……いやぁニャー冒険だった」
「おいおーい。だれだーい? 飼育員のとっつぁんかーい?」
ノッシノッシと歩いてくるゾウガメ。
あれがルパンか?
「夜分遅くすみません。私はタマ、こちらがニャトソン先生。ニャンダイチ先生。ルパンさんですか?」
「おーう。おーれしゃまがルパ~ンシャ~ンセイよぉー」
見た目の重々しさとちがって声は甲高い。
他の亀のゴエモンとジゲンは遠くから注意深くこちらを観察している。
「なぁーんのよぉーだぁーい? とっつぁーん」
「クリカン……いや、ルパンさんに少しお訊きしたいことが……」
なぜ逃げ出したか、どうやって逃げ出したか、どこにいたのか、どうして急に見つかったか……タマは彼に質問を投げかけた。
「かぁーんたんよぉ。おれしゃまは自由が好きなのさぁ。おれしゃまの変装と素早さと知識をもってすりゃあ脱走なんてチョロいチョロい。捕まったのは……ここに置いてきたメスガメのふぅーじぃこちゃあーんが気になったからさぁ」
「……そうですか」
タマは満足したようだった。
「じゃ、おいとましますか?」
「……ええ」
またあのヘネコプターに乗らなくてはいけないのか……。
想像しただけで吐き気が……。
「……おっと。ルパンさんにもう一つ質問。本物のルパンさんはお元気ですか?」
?
何を言っているのだ? タマは?
ルパンは目の前にいるじゃないか。
「……何をいっているんだ?」
ルパンの声色が変わった。
低く重い声だ。
「また来ます。そして……彼を来させます」
「余計なことをするな……」
「……あなたもじっくり再会を楽しみたいでしょう? 私はあなたを尊敬しますよ」
「お見通しってか?」
「あらかたね」
……
「……わかってきましたね」
「……そうじゃなぁ」
帰りのヘネコプター。
タマとニャンダイチ、二匹だけで頭のいいやつトークをしている。
あー、やだやだ。
どーせ私にはなにもわかりませんよ。
ふんニャッ!
「明日になったらルパンを捜すとしましょう。なんとなく目星はつきましたしな」
ルパンがいるのにルパンを探す……わからない。
こいつにヒントがあるのだろうか?
私は資料を読み返した。
二十年前《廃墟になる前のあの家にアルダブラゾウガメのアブゥが飼われていた》
驚いたのは飼い主だ。
飼い主は鈴木真澄。
息子の名前は……太一。
真澄は妻との離婚をきっかけに引っ越しを決意……太一と東京へ。
アブゥを連れていったかは不明。
だが、経済状況やワゴン車一台での引っ越しだったため、アブゥを連れていったとは考えづらい。
ここからはタマのレポートである。
《鈴木太一、泰二親子があの家にやってきた》
子供だった太一が大人になってこの家に帰ってきた。
シングルファーザーのようだ。
ふむふむ……血は争えないか。
で。
太一はイエイなる写真を飾っていた。
これは真澄であると考えられる。
ほうほう。
「……で?」
二つの資料を読み返してもさっぱりわからん。
偶然ってあるもんだねってぐらい。
……
「……」
「いくらなんでも馬鹿げてませんか?」
「う……む」
貝柱山を歩く私たち三匹……タマの肉きゅうには折れ曲がった針金。
ダウジングとかいうらしい。
「反応あり! ……わっ!」
「……タマさん!?」
タマの姿がいきなり消えた。
落とし穴か?
「落ち葉で隠れていたのか……」
穴というよりなだらかな坂道のようだ。
「転がっていったタマさんを追いかけよう!」
……
「……驚いたなぁ」
こんな場所があったとは。
温泉が近くを流れているからか、蒸し暑い、草木は繁り、苔は光り、鳥や蝶まで飛んでいる。
「湧き水もあります。室温、食料、広さ……どれをとってもゾウガメが生きていくのに何ら問題ない」
「タマさん。怪我は?」
「ノープロブレム。行きましょう」
……
「やるねぇ。とっつぁーん。俺も年貢の納め時かねぇ?」
奥へ奥へと歩いていくと……信じられないことにルパンがいた。
なぜ!?
「君の邪魔はする気はない。ただワシの知的好奇心を満たしてくれればよい」
「ほぉう?」
本物のルパンから訊かされた話は私には到底信じられぬものであった。
……
(動物園ってのは楽だ。飯はタダだし働かなくてもいい)
人間の好奇の視線に耐えるのも……まぁ悪くない。
これまでの生活に比べたら……。
「パパ。亀さん」
「……そうだな」
親子か?
ふんっ……少しサービスしてやるか……って。
「……太一くん」
間違いない。
太一くんだ。
どうして?
「……アブゥ」
「た……太一くん」
あの猫たちのしわざか?
くそっ!
もうだめだ……
「パパ……あの亀さん泣いてる……どうしてパパも泣くの?」
「アブゥ……ごめんなぁ」
「太一くん……」
つづく。
完結編とエピローグ式プロローグにつづく。




