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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
閑話休題
169/203

ナタリー&ニャームズ

「ご注文繰り返します。カリカリに焼いたカリカリ~春野菜を添えて~が、お一つ。猫缶のマリネ地中海風がお一つ。ね紅茶は食後でよろしいですか?」


ここは私の店『ナタリー&ニャームズ』。


若いうちに何でもとっておくものである。

猫理師ぴょうりし免許を持っていた私は作家を止めた後、この店でバーレストランのマスターをしていた。


口の周りに生えた白髪を黒く染めたら奇跡的に染めた場所が『八』の字になり、私はすっかりイカしたヒゲの生えたタキシードの似合うレストランのマスターである。


「ニャトソンさん。『フィレオフィッシュタウン・エンターテイナーズ』のお話をきかせてください」


「バカね。ニャーロッキアンなら『生命と廃棄物の間』事件からきかないと」


「それもそうねぇ……すみません。リクエストが決まったらまた呼びます」


「ごゆっくり。それでは失礼します」


鰹が丘の森の中にあるニャームズの別荘をレストランにした『ナタリー&ニャームズ』はニャームズのファン『ニャーロッキアン』にとっての聖地となった。


私は作者として、ニャームズの生き証猫として、たまに客のリクエストに答え、テーブルにつき、『あの事件はああだった~』『その時ニャームズは実はこういった~』などとウンニャカ語る。

料理よりも私の話を目的訪れる動物達も結構な数いた。


ニャームズとニャームズを愛するニャーロッキアンが集まる店……ニャームズもこの改装を喜んでくれているだろう。


これでいい。


私の余生はこれでいいのだ。


のんびり死に近づこう。


「マスター。オーダーよろしいですか?」


「すぐに伺います」


耳用の穴を開けたハンチング帽をかぶったウサギが鼻と口をヒクヒクさせながらメニューを見ていた。


ああ。


彼ほど小さいとメニューが大きすぎるな。


正面から見るとメニュー表が喋っているようだ。


小動物用のメニューも発注せねば。


「お待たせしました。それではご注文をどうぞ」


「うさぎの丸焼きを」


「えっ!?ご注文はうさぎですか!?」


ウチの店は人間の世界のペットフードに野菜や果物を使って調理したものを提供している。


そんな生々しいものはない。

これは困った。


それに共食いではないか。


「……というのは冗談で……わたくしこういうものです」


「ははあ。お名刺拝借。『猫学館ピーター』様?」


『ピョウガクカン』と読むのだろうか?


名前からして出版社?


私は物書きを引退した身だ。

パソコンの使い方も忘れた元作家猫になんのようだ?


警戒心が湧く。


「お仕事お忙しそうですね。閉店まで待ちます。ニャトソン先生にお願いが。是非話をきいてください。それまで一杯やるかな?『アームチェアディテクティブ』を一つ」


アームチェアディテクティブはニャームズをイメージしたカクテルだ。


イギリスウイスキーにブランディーとロゼを混ぜシェイクし、最後にひとかけらの焦がし玉ねぎを落とす。


「わかりました。ごゆっくりどうぞ」






閉店をしらせるパッヘルベルのカノンのオルゴールバージョンが流れる。


「お疲れ様です」


ピーターはテーブルの上に座っていた。


椅子は大きすぎたか?


やはり小動物用のセットをそろえなければ……確かピーターはアームチェアディテクティブを三杯やったはずだ。

あれは強い酒だが、ピーターは顔色を変えずに相変わらず鼻と口をヒクヒクさせていた。


強いなぁ。


私も机の上に乗って向かい合った。


「……お話とは?」


「ニャトソン先生は最近の出版界をどうおもいますか?」


「どう思うと言われても……」


「私から言わせればどれも中身は空っぽだ。読後感がない。ニャトソン先生やアニャン・ポー。コニャンドイルの時代はよかった……あれが動物出版界の黄金期だったな。子ウサギだった私は無我夢中で兄弟と取り合いながらニャーランド誌を読んだものです」


「……」


ポーやドイルは私とは百歳は年が離れてるのだが……。


「特に今はミステリーなんて絶滅寸前だ。そこでです。ニャトソン先生には我がピョウガクカンから創刊される子供向け小説雑誌『動物一年生』に一筆いただきたい」


「一筆……?推薦文かなにか?」


「とんでもない!『ニャーロック・ニャームズ』の新作を一本お願いします!」


「……冗談じゃない!」


妻に先立たれ、イギリスの大学を卒業した息子は行方不明。

ニャン金と印税もらい、ほとんど趣味のような店のマスターをやってのんびり暮らしている私に一筆とな?

勘弁してくれ。

私にとって執筆とは『終えたはずの苦行』なのだ……とピーターに伝えたが彼はとても長い耳を聞く耳として使ってくれなかった。


「この店に訪れるお客をみる限り、まだまだ世界にはニャーロッキアンがたくさんいます。人間たちだって先生の作品を待っているファンがたくさんいるのですよ?」


「本当かね?それは?」


私は代人をたてて人間界のミステリー大賞に参加したが二度落ちた苦い経験がある。

三度目はどうなったっけ……?


覚えてない。


特別賞ぐらいはもらったのだったろうか?


「全ての動物や子供に読書する喜びを……いいお返事を期待していますよ」


「……ありがとうございました」


ピーターは赤い木の実が何個か、なった枝を一本置いて去っていった。

ウチの店の会計はこんな感じだ。


「子供に読書する喜びをかぁ……」


お年寄りや子供には私はとても弱い。


……新作かぁ。


どうしたものか?



「……今日は寝るか」


立ちっぱなしで肉きゅうが疲れた。


自室に戻ってハンモックに揺られて寝よう。



……おニャすみー。





アルファポリスミステリー大賞参加中です。


おニャすみー。

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