北方ワン三
読者諸君ご存知の通り、私の職業は一応は『作家』である。
私の著書『ニャーロック・ニャームズ』シリーズは動物界ではまあまあ知名度があり、熱狂的なニャームズファン。
『ニャーロッキアン』なる者たちまでいる。
私は作家としてそこそこ成功したといえるだろう。
しかし私は未だに『センセイ』と呼ばれるのに違和感しか感じない。
私はニャームズの事件記録を引っ張り出して、それを多少エンターテイメント要素を強めに物語風にしているだけで『0から物語やキャラクターを創り出して』いるわけではない。
つまり作家というよりは私は『ニャームズの記録係』といった方がいいだろう。
そんな私が『サッカセンセイ』と呼ばれたり、時に賞なんかを貰ったりするのだから猫生とはわからないものだ。
そんなことをぼんやりと思っていたら私が『初めて文学賞にノミネートされた時のこと』を思い出した。
……おおそうだ。
今回はあの『北方ワン三』の事件によってついて書いてみよう。
ニャーロッキアンの読者諸君。
これは私がまたニャームズ役をやらされた物語である。
ニャーロッキアンの諸君には私がメインの物語はウケが悪いのだが、ニャームズもしっかり『活躍してるのやらしてないのやら』しているので安心して欲しい。
……コトン。
私が家からでると猫ポストになにやら投函された音がした。
なんだろうと私がポストを開けると手紙があり、果たしてそれは招待状だった。
『NWニャトソン様』
誰からだろう?
『どうも北方ワン三です』
「き……北方ワン三!?」
この時、私は歯ブラシをもっていたのたが驚きのあまり地面に落としてしまった。
『北方ワン三』……『一国史』を代表作とするハードボイルドやミステリーまでこなす動物作家の超大御所である。
そんなワン三が私に招待状!?
『本年より『北方ワン三ミステリー大賞』なる賞が誕生しました。仕事も忙しいのに出版社もまた面倒な事を……と愚痴をこぼしながらもやはり自分の名前のついた賞というのは誇らしいし、『北方ワン三ミステリー大賞』というからには私が審査員をつとめなならんと仕事の合間に千切っては読み、千切っては読み……』
そして私の作品にたどり着き、北方ワン三ミステリー大賞にノミネートしたというらしい。
『架空の二枚目探偵ニャームズが華麗に謎を解き、作者をモデルにしたであろうニャトソンが三枚目の助手役を務め記録風に綴る。その発想が素晴らしく……』
「参ったなぁ……」
手紙を読む限りワン三氏はニャームズを実在の猫だと思っていないようだ。
『是非私とノミネートされた動物たちとで私の家でミステリー談義に花咲かせたいものです』
北方ワン三氏の家には言ってみたいがミステリー談義というのは勘弁願いたい。
そんなものが催されたら私は端っこにちょこんと座って真顔でジッとしているしかない。
ミステリーに関する知識なんてないのだから。
『私が是非お会いしたい期待のミステリー作家だけに招待状をおくりました。どうかお越しください。お待ちしております』
「北方ワン三が会いたい作家たちか……おいおいおいおいおい……」
『招待者一覧』がまたすごい……
とんでもない執筆スピードで有名な『猫極ナツヒコ(ピョウゴクナツヒコ)』。
女流作家の『鳥野夏生』。
『新宿猿』シリーズでおなじみ『大猿在昌。
映画化多数の『伊佐猫小太郎』。
トラベルミステリーの第一人者『牛村京太郎』。
『作家オリス』シリーズの『オリス川オリス』。
『全てが卵になる』の『鳥ヒロシ』。
ミステリー界の巨匠であり巨象……『島田象司』
……そして最後に『ニャーロック・ニャームズシリーズ』の『NWニャトソン』と書かれていた。
冗談じゃない。
こんなオールスターメンバーに囲まれたら私はおしっこを盛大に漏らしてしまうではないか。
欠席だ欠席。




