ドゥッ♪ドゥッ♪
結果にコネッコ……猫のコミット。まずコミットがわからん。
人間達が住むアパートの二階の空き室……それがその頃の僕たちの住処だった。
マイクロネコは洒落た皿に乗ったグロテスクなものをテーブルに置いた。
どうやらこのウゴウゴと動く青色の何物か今日のディナーらしい。
「……」
「残さず食べなさい。お前はまだ育ち盛りなんだから」
両親が他界した今、僕の面倒を見ているのはマイクロネコなわけだが……彼はありとあらゆる事に優れた猫ではあったが壊滅的に料理のセンスがなかった。
彼の料理は大概焼け焦げていたし、味付けはデタラメだった。
それにしても今日のはひどい。
「ふん……」
僕だって胃袋に収まって栄養になってくればそれでいい。
僕は彼の作った料理を胃に流し込んだ。
生乾きの洗濯物の香りのような後味が喉に残った。
「ニャーロック。あれを見てご覧」
「ん?」
窓から地上を見下ろすと髭を生やしたひとりの男がひどくキビキビした動きで玄関からアパートに入ろうとしていた。
「あれがなんだよ?」
「わからないのか? 秘密の歌だよ。トゥルリララー♪ 彼は……いやぁ彼女は今夜獣のような歌声を奏でるだろさ。ニャーロック。よく人間を観察しろ。そうすればあの男がどんな男か想像がつく」
「人間観察は趣味じゃないね」
マイクロネコの趣味は人間観察。
町にでて人間を見てはああでもないこうでもないと言い、ノートにメモをしていた。
この頃の僕は人間は憎むべき対象としか思っていなかったのでマイクロネコはある種のキチガイなのだと思っていた。
「人間は素晴らしく興味深い。お前にもいつかわかる」
「わかるわけないね」
「わかるさっれ おっ! ほらご覧なさい!」
「……チッ!」
しまったと思った。
あるテレビCMにマイクロネコが食いついてしまった。
あのCMの独特のメロディーが今でも耳に残っている。
ドゥッ♪ドゥッ♪……ドゥッ♪ドゥッ♪
回転する円台に乗った背筋が必要以上に曲がった子猫が、なんとも自信のなさげな顔をしていた。
ナレーションが語る。
『こーんな自信なさげな子猫ちゃんもうちにくれば……』
そして音楽が変わると……
ニャーラララッニャ♪ニャッニャーラニャララ!
子猫は自信満々の表情に変わり、背筋もピンとしていた。
『……こうなる! アナタも私たちの大学でこうなってみませんか? 結果にコネッコするニャーバード大学!!!』
僕はテレビを消した。
「ニャーロック。ニャーバード大学へゆけ。あそこのモリニャーティー教授はすばらしいぞ。人間学の第一猫者だ」
何かと言うとこの話だ。
僕は成績も素行も悪かったのでマイクロネコにからかわれているのだと思っていた。
余談だがあの時のCMによくにたCMを最近よく日本でもみる。
時代は繰り返すものだ。




