ネコネコアザラシネコネコアザラシ
ニャンデレ……猫のツンデレ。別にワン太のことなんか猫じゃないんだからね!
「そうだったなぁ……」
私はネコネコアザラシ事件の全てを思い出した。
詐欺師のホワイトとその悪事に手を貸したグレイ……
大猫日本史の原文も見つかり、ホワイトの親は猫務員だと発覚しネコネコアザラシ教はあっさり空中分解した。
さて、思い出を振り返るのはここらで止めにするか。
サイン会も終了。
楽屋に戻るとしよう
「あの……」
「はい?」
おや? 先ほど私と私の本をボロクソにいったクソガキではないか?
横にいる夫人は彼の母猫だろうか?
「先ほどはこの子がすいません……この子本当は先生の大ファンでして……どうしても先生のイラストが欲しいって……ほら! お願いなさい!」
「うぅ……」
子猫は私の本を黙って私に差し出した。
なんだ本当はいい子じゃないか。
って私もずい分単純だ。
「おや? この本にはさっきのニャームズのイラストがないぞ?どうしたの?」
「それは保存用の一冊なんです。この子先生の本を、二冊も持ってますの」
「二冊も買ってくれたのか!?」
子猫のお小遣いで私の本を二冊も買うのは大変だったろう。
私は丁寧にイラストとサインを書いて渡した。
「ほら! 先生にありがとうしなさいっ!」
「ふーんだ!」
「こらっ!」
子猫は私の本を大事そうに抱えて走り出した。
「いらないもーん! 本当はこんな本いらないもーん!」
「こら! あんた!」
なんだこの子は……?ニャンデレか?
「おい君! そんなことを言うなら私は君にネコネコアザラシと唱えるぜ!」
「平気だもーん。ネコネコアザラシのホワイトは偽物だったもん! 知ってるもん!」
「ほほう! 君はずい分熱心な私の読者なんだねぇ!」
「ひゃぁ!」
子猫はしまった! という顔をした。
頬の色は真っ赤である。
「ばーか! ばーか! ニャトソン先生のデブ!」
「あんたいい加減になさい! 先生すいません! すいません! ニャーランド誌、いつも買ってます。でも一番最初に読むのはいつもあの子なんです。真っ先に先生のお話を読むんですのよ? そうだ! これを受け取ってください。あの子からです。すいません! 失礼しました! ……こらー!」
「……」
私に手紙を渡し、親子は去っていった。
私はなんだかホンワリした気分になりパイプ椅子に腰掛けた。
なんだろう? この手紙は?
ふむふむ……
「フフっ……やはりニャンデレだ」
中身はファンレターだった。
『ニャーロック・ニャームズ』のどこどこが好きだったとか、どこどこがおもしろかったと子供の素直な感想が書かれていた。
「なんだか優しい気持ちになるな……おおそういえば!」
『あなたを理解してくれる誰かが見つかるでしょう』
今日読んだ雑誌の占いを思い出した。
ふむふむ……ホワイトは偽物だったが占いというものはやはり悪くない。
実は『ニャーロック・ニャームズは書籍化するだろう』ととある人物に占われたこともあるのだが……その事件についてはまたこんど語るとしよう。
その時はあの子も読んでくれるだろうか?
「もっと精進せねば……ファンの為……家族の為……自分の為……」
まあ私が小説を書けるのもいつも興味深い事件を起こすニャームズのおかげなわけだが……
さて帰ろう。
今日はナタリーがクリームシチューを作ってくれているはずだ。
シチューはコッコの大好物。
今夜は彼も帰ってくるだろう。
私は今宵の家族団らんに胸をときめかせながら子猫からのファンレターを大事に大事に内ポケットにしまった。
2015年『ニャーランド誌』掲載『ネコネコアザラシ』
完。




