歪んだ円。
「……ではグレイ氏にアポイントを取ってきます。ニャトソンさん。しばらくお待ちを……」
「ええ。お願いします」
トットットとケーブは走り去った。
さてさて私は中途半端に暇になってしまったこの時間を何に使おうか?
私は肉きゅうを顎にあて、しばし考えた。
「そうだな……行ってみるか?」
教祖のホワイトには会えないとしても、遠目から活動を観察することはできるだろう。
私はネコネコアザラシ教の本部へと向かうことにした。
○
ニャンダイチはフンフンと鼻を鳴らしながらニャンキチの散歩コースである道路を歩いていた。
「この間の雨でまだ道路が濡れているぐらいで特に変わったものはありませんなぁ……」
「結論を急いじゃいけないねショカツ。ほんの些細なこと……真実に繋がるなにかが見つかれば、後は私の虹色の脳細胞が勝手に答えを導き出してくれる……探せ探せ。なんでもいい。どこかおかしなところはないのか?」
「そういわれましてもなぁ……やはり道路が濡れているぐらいしか……申し訳ない」
「……」
(ニャームズならこんな時どうする? ちくしょっ! よせよ! あんな奴のこと考えるな)
「あら? 猫ちゃんにワンちゃん。お元気?」
「ナー」
「ワン!」
道路を抜け、ニャンキチがいつも通り抜けていた民家の庭を捜索していると窓を開けて老婦人がニャンダイチとショカツに声をかけてきた。
(ニャンキチさんは彼女とも親しかったのだろうか?)
「今日はあのおじいちゃん猫はいないの? 毎日かかさずきてたのに……どうしたのかしら? あなた達わかる? よっこいしょ……草むしりでもしますか……雨が降ると草が生えてきてしかたない!」
(おじいちゃん猫……ニャンキチさんのことか……この婦人は彼が亡くなったことを知らないんだな……なんだか切ないな)
ニャンダイチは婦人を無視して捜索を再開した。
「……あら? 何かしらこれ? イタズラ? もう! 家はゴミ捨て場じゃないわよ! 失礼ね!」
(ん……?)
婦人は何かを手に取り、それをごみ箱に捨てた。
「ラベルを剥がしてもっていくぐらいなら全部持って帰ればいいじゃない! あー! 今日はやめやめ! 庭まで入ってきてゴミ捨てて!」
(ラベル……? しかしこの婦人は1人暮らしが長いのか? 独り言が激しいな……それに少し怒りすぎだ。更年期かな?)
念のため婦人が立ち去った場所を観察するとそこには歪な円のようなマークがあった。
(マーク……? 違う。ははん。ここにだけ雨が当たらなかったから濡れていないだけだ。……しっかりしろよ私。こんなことはどうだっていいじゃないか……)
「ニャンダイチさん。そろそろ次へいきますか?」
「そうだな……うん」
(何が置かれていた?……だからどうでもいいだろうよ。事件を解決してニャームズの鼻をあかしてやらなくてはな)
ニャンダイチは鼻息荒く歩き出した。
続く。




