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のほほん見聞録  作者: ヒロっぴ
市営バス時代
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多機能ファクス






※このエピソードはスピリチュアルなことを含みます。嫌悪感のあるかたは御退出下3さい。

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俺がバスの仕事を初めて少したった頃、知り合いからネットワークビジネスの誘いがあった。





例のお祓いの件もそうだが、怪しいと判断したら断るつもりだったので、とりあえず話は聞いた。




当時の日本では、まだインターネットは普及しておらず、この先普及するかどうかも不透明だった。




そんな時に、多機能ファクスを普及させるのが目的のビジネスだった。




そのファクスには液晶画面がついており、会員同士で様々なやり取りが出来るようになっていた。





通常、ファクスは送ったらすぐに印刷されるが、そのファクスは液晶画面に着信履歴が表示され、暗証番号を入力して印刷を選択しないと出てこないようになっていた。




つまり家族と一緒に住んでいてもプライベートは守られる訳だ。





また、専用サイトにアクセスすると、様々なやり取りの掲示板があり、選択すると情報がファクスで受け取れるようになっていた。




店の宣伝や友達募集など、詳細は画面で見るのてはなく、ファクスとして印刷してから見ることになる。





ビジネスはともかく、俺はこの機能が気に入って、器械を購入した。




お陰で、職場のみんなと合コンを開いたり、友達募集の情報を共有したりと中々楽しめた。




まだ携帯電話のEメール機能すら無い時代である。





そんなファクスの友達募集機能を通して、俺はある女性と知り合っていた。




その子をAちゃんとする。




Aちゃんは友達のZちゃんが持っている多機能ファクスの掲示板を通して、友達募集をしていた。




そこへ俺がアクセスした事からやり取りが始まったのだ。




とはいえ、画面に表示されるのは会員であるZちゃんの名前。



俺達はZちゃんを介してやり取りをしていた。



そしてしばらくたつと、電話でもやり取りをするようになった。




Aちゃんは中学生の頃に男性に酷い目に合わされたことがあり、それ以来男性恐怖症に陥っているということだった。



それを心配したZちゃんの薦めで友達募集の掲示板に投稿したのだということである。




話をするうちに、お互いにスピリチュアル的なことに興味があると知り、Aちゃんは悩みを打ち明けてくれた。




彼女いわく、彼女には『負の力』があるということだった。



小学生時代に彼女に対して辛く当たる先生がいて、ある時我慢できずに『死んじゃえ!』と思ったら、その先生は病に倒れ、意識不明になってしまったいう。



それだけなら偶然ととらえることも出来るが、その後もマイナスの感情を抱くと、ほぼその通りになってしまったという。




体育が苦手だった彼女が『病気になれば休めるのにな』と何気なく思っていたら、本当に自分が心臓病になり、体育が出来なくなってしまったりと、様々な事が続き、怖くなってしまったのだとか。




それは確かに怖いと思った。




何気なくマイナスの感情を抱くと現実になってしまう。




俺は心配になり、手元にある深○東○先生の著書にある神界ロゴマークというものをコピーして、そのファクスで彼女に送った。




それは、『邪悪なるものから守られる』とか『魔を寄せ付けない』とか、彼女に必要だと思われるものを選んで送ったのだ。



その本には、コピーして使っても効果は現れると書いてあった。




ただし、営利目的で利用すると、天罰を受けるという注意書もあった。




もちろん、そのファクスを通してAちゃんに送る訳だから、宛先は仲介者のZちゃんになる。



俺は寝る前にそれを送信すると、次の日の勤務が早かったので、早々に床についた。




そして翌朝、出勤前に多機能ファクスを立ち上げると、Aちゃんからメールが届いていた。



メールというのはファクスの事であり、画面に表示される名前はZちゃんだ。




俺はメールをファクスで取り出すと、中身を読んだ。





そこには、『気持ちはすごく有りがたいんだけど、仲介してくれるZちゃんのことも考えてくれると嬉しい』というような事が書いてあった。



『私達はスピリチュアルなことに興味があるからいいけど、もしも興味が無い人が見たら、どう思うかな?』というような内容で、『今後は気を付けてね』と、やんわりと怒られてしまった。




確かに軽率だった。




間にZちゃんがいる以上注意するべきだった。




Aちゃんの文面から伺うに、きっとZちゃんはそういうスピリチュアル的な事に嫌悪感を抱いている人なのだろうと思った。




出勤間際だったので、返事は帰ってきてからしようと思い、俺は仕事に向かった。





そして、帰宅するとすぐに謝罪のメールを書き、送信しようと思って、ファクスを立ち上げた。



すると、Aちゃんからメールが届いていた。



もちろん表示される名前はzちゃんだ。




俺は『あれ?』と思った。




いつもお互いのメールを読んでから返事をするのが慣用になっていた。





朝、俺はAちゃんのメールを受け取り、まだ返事をしていない。



だから、Aちゃんからメールが着ていることに『おや?』と思ったのだ。




とりあえずファクスを取り出してみる。




すると、其処にはいつものAちゃんの筆跡とは明らかに違う文字が印刷されてきた。




『突然のメール失礼致します……』という書き出しから始まる文章は、Zちゃんからだった。




『……今回、私があなたにメールをしようと思ったのは、あなたが送ってくれたお札(?)から、とてつもないパワーを感じたからです。私は今まで様々な霊能者の方や行者さんにも会ってきましたが、どれもピンと来るものがなく、今回あなたが送ってくれたお札から、初めて凄いパワーを感じたのです。さぞかし凄い徳のある方が製作されたものだと思います……』





彼女のメールを要約すると、Zちゃんはスピリチュアルな事に嫌悪感を抱いているどころか、大変な霊能力の持ち主で、マイナスの能力を持つAちゃんと同居することで、Zちゃんの持つプラスの能力で封じ込めているということだった。





しかし、Zちゃん自信も適齢期の女性であり、いつまでもAちゃんと同居している訳にもいかず、どうしようかと思っているときに、俺との出会いがあり、しかも凄いパワーのお札を製作する人とも繋がっている。ということで、『ゆくゆくはあなたにAちゃんをお任せしたい。』というような内容だった。




単純な俺は『お任せください!』というメールを送ったのは言うまでもない。



それにしても、『分かる人には分かるんだ!』と、改めて目に見えない世界の奥深さを知った瞬間だった。




その先生が主宰する団体では、他言無用の誓約書を書いた後に受講出来る『神様に祈りが通じる祈りかた』を教わる神法がある。




ある時、それを受講したばかりの学生が、近くの神社で早速試してみると、祈り始めたとたんに、怪しげな行者らしき人達に、『あなた今なにしたの?』と詰め寄られたという。




その学生さんはビックリして、『いえ、あの僕……祝詞を唱えただけで……』と言うと、『ウソおっしゃい!あなたが来るまでは神様は私たちの祈りを聞いてくれていたのに、あなたが来た途端にみんなあなたのとこに行っちゃったわよ!絶対、何か特別なことをしてるはずよ!私たちにもそれを教えなさい!』と言われて、怖くてすごすごと帰ってきたとの事だった。




本当に判る人には分かるもんなんだと実感したエピソードだった。




……ちなみにAちゃんとのその後は、……俺と関わった事で男性恐怖症が直ってしまい、ひょんな事から身近の男性と付き合うことになったとのことで、……簡単に言うと、俺はフラれてしまった。




そう言うとAちゃんが悪いみたいになってしまうが、そうてはなく、俺は元々スリムな女性が好きなのに対し、Aちゃんはかなりふくよかだったので、それを気にしたAちゃんが、かなり無理して痩せようとしてくれた結果、体調不良を起こしてしまったとのこと。




そんなおりに、今のままのAちゃんがいいと言ってくれる人が現れて、付き合うことになったと……




Aちゃんはその事を泣きながら電話で報告してくれ、俺は『幸せになってね。』と別れを告げたのだ。




今思えば、Aちゃんの抱える悩みと、Zちゃんのことを考えると、無責任だったなと後悔してしまう。




しかし、世の中には、本当に計り知れない事が渦巻いているんだなと考えさせられた出来事だった。





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