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第百二十一話 魔法都市を作ろう(挿絵あり)

ニニア視点です。


 マルデアの小さな娯楽店。

 私たちは、店のモニターに釘付けになっていた。

 

 星を超えた生放送で、桃色の髪の少女がスポットを浴びる。

 彼女は大舞台の中、いつものように語り出した。


『サムシティは、地球では30年以上の歴史を持つシリーズです。

ですがマルデアの方はご存知ないと思いますので、一からご紹介しましょう。

まずは、こちらをご覧ください』


 大画面に表示されたのは、ゲーム映像なのだろう。

 海沿いにある美しい草原が広がっている。


「何だこれは。まるで箱庭を見下ろしているようだが……」

「見た目はいいけど、よくわかんねえな……」


 お姉さんや男子たちは画面を見上げながら、不思議そうに声を漏らす。


 確かに、ビジュアルは立体的で緻密だ。

 これまでの流れで言えば、スケールの大きなタイプのゲームなのだろう。


 期待感が高まる中、リナさんの説明が始まる。 


『さて、このゲームはですね。

草原を冒険して戦うゲーム……、ではありません。

この大地の謎を解き明かすゲーム……。でもありません』


 少女はそう言って、大げさに首を振る。

 アクションでもRPGでも、パズルでもない。


 なら、一体何なんだろう。

 疑問が深まる中、彼女は大きく手を広げた。


『サムシティは、この何もない土地に町を作り上げていくゲームです』


「はあ!?」

「ま、町を作るだとっ!」


 リナさんの説明に、お姉さんと男子たちは頭を抱えていた。

 正直、私もよくわからない。


 敵をやっつけたり、隠されたカギを探したりして、クリアを目指していく。

 そういうのが私が考えるゲームだ。


 マルオやゼルド、ドラクア、スタ2。

 斬新なゲームはどんどん出て来たけど、そのセオリーはちゃんとみんな守っていた。


 町を作るって、一体どういう事なんだろう。


 混乱する私たちを前に、リナさんは深い笑みを浮かべた。 


『マルデアの皆さんには、全く新しい体験になると思います。

では、軽くプレイしながら説明していきましょう』


 彼女はコントローラーを握り、何やら操作を始める。


『まずは平原の上に、町の基本となる道を設置していきます。

どんな形の道路にするかは、プレイヤーの自由です』


 そんな事を言いながら、彼女は草原の上に位置を指定していく

 するとボタン一つで、長い道路がドスンと出来上がった。


「おいおい、ほんとに道作ったぞ!」

「な、何なのだこのゲームは……」


 ゲームの舞台そのものを、自分の手で作り上げる。

 そんなジャンルが存在したこと自体が驚愕だった。


 だが、驚きはそれだけではない。


「お、おい。道路の上を何か走ってるぞ」


 そう。出来上がった道の上空を、飛行車がなぞるように走っている。

 ゲーム世界の住人が、リナさんの作った道路を利用し始めたのだ。


「適当に設置したものが、ゲーム内でちゃんと機能する、だと……」

「な、何これ……」


 私のゲームに対する既成概念が、完全に崩壊していく。


 あまりのカルチャーショックに、店内のゲーマーたちはもはやパニックに陥っていた。


 でも、画面の向こうのリナさんは待ってくれない。


『ついでに、家も作ってみましょう』


 彼女は道路脇の道を指定し、何やら指示を出していく。

 すると、次々に住宅地が建設されていく。


「い、家が建った……!」

「町を作るって、そういう事かよ」


 ようやく、私たちにもおぼろげながらゲームの形が見えて来た。


 用意された世界で遊ぶのではなく、世界を創って遊ぶ。

 これは、そういうものなのだ。


 ある程度作業を進めると、リナさんは手を止めてこちらに振り返る。


『さて。町作りや経営の細かいプロセスについては、また後日ご紹介するとして。

今日はひとまず、完成した都市をご覧いただきましょう』


 すると、ゲーム画面が野原から突然切り替わる。


 現れたのは、巨大な都市。

 それは、どう見ても地球のものではなかった。


 魔術建築で作られた、丸みのある家々。

 通りは、輸送機を引く飛行車が行き交っている。

 広場には遊び回る妖精たちの姿が……。


「な……、これは!」

「マルデアの街じゃねえか!」


 そう。現れたのは、私たちが住む国の街並みだった。


 それも、ただの絵ではない。

 町の中にいる小さな人々は、それぞれの目標を持って動いているように見える。

 ゲームの中で、一つの都市が息づいていた。


 見事に形成されたマルデアの街を背に、桃色の少女は手を広げる。


『お分かりになったと思いますが、これはマルデアの皆さんが住む魔法文明の都市です。

地球の皆さんに、ここまで詳細なマルデアの町を見せるのは初めてかもしれません』


 会場には、大きな歓声が上がっていた。

 あちらも盛り上がっているのだろう。

 リナさんは声が止むのを少し待った後、カメラを見据える。


『本作は、過去の名作をそのままマルデアに持ち込むわけではありません。

これは、マルデア向けに開発されたサムシティの新作。その名も……』



 "サムシティ・マルデア ~魔法都市を作ろう~"



 タイトルロゴが表示され、地球の場内が大きくどよめいた。


『このゲームでは、高い魔法技術によって形成されたリアルな都市を、そのまま箱庭の中で作り上げる事ができます。

皆さんの思いのまま、自由に魔法都市を作り上げましょう!』


 リナさんが高らかに宣言する。

 画面の中の観客たちは総立ちになり、歓喜の声を上げていた。


「すげえ……。そんな事まで出来ちまうのかよ!」

「やべえ! 町作りがしたいなんて思うの、生まれて初めてだぜ!」


 店内では男子たちが飛び上がり、はしゃぎ合っている。


「こ、これは、遊びの革命だ……」


 お姉さんは後ずさりながら、わなわなと震えていた。


 自由に町を作ってみたい。


 確かにそんな感情は、これまでの人生で抱いた事もなかった。

 新しいゲームの登場が、私に新しい感情を与えてくれる。


「ニニアちゃん、やっぱりゲームって凄いね!」

「うん……!」


 ラナと目を潤ませ、力強く頷き合う。

 やっぱり、私の憧れる道は間違っていない。


 ビデオゲームは、与えられた目標をクリアするだけのものじゃない。

 きっと、どこまでも広がっていくんだ。


 震える手を抑えながら、私は興奮を噛みしめるのだった。




--------リナ・マルデリタ




「皆さんの思いのまま、自由に魔法都市を作り上げましょう!」


 声を張り上げると、客席から湧き上がるような歓声が上がった。


「これは面白そうだ!」

「すぐ記事を書くぞっ」


 メディア記者たちは、慌ただしく仕事の話を始める。

 会場にいたのは大人ばかりだったけど、みんな子どものように目を輝かせていた。

 凄いゲームが出て来た時の盛り上がりは、どの国でも、どの星でも変わらない。

 マルデアのファンたちも、きっと喜んでくれたと思う。


 そうして、緊張のスピーチは終わった。

 

 地球のSNSを見ると、やはりゲーマーたちも大騒ぎだった。


xxxxx@xxxxx

『サムシティ・マルデアが地球・マルデアで同時発売!』

xxxxx@xxxxx

『ちょっと予想を超える展開だな』

xxxxx@xxxxx

『町を作りながらマルデアの文明を楽しめるゲームか。これは買いだな』

xxxxx@xxxxx

『ガチのリアル異世界タウン作れるとか、半端ない!』

xxxxx@xxxxx

『早くやりてええええええ』

xxxxx@xxxxx

『久しぶりに大舞台で緊張するリナちゃんが見れた。可愛いなあ』

xxxxx@xxxxx

『最高の発表だったよ』

xxxxx@xxxxx

『ていうか、マルデア人もあの放送を見てたんだよな。

何だか、ゲームで遠い星と繋がった気分だ』

xxxxx@xxxxx

『yutubeの視聴者が1000万人とか超えてたw』

xxxxx@xxxxx

『NASAが「歴史的瞬間だ」ってツイートしてたからな』

xxxxx@xxxxx

『サムシティ・マルデア予約しようとしたら通販サイトがアクセス集中でパンクしてたw』

xxxxx@xxxxx

『注目度が尋常じゃないな』



 みんな、新作として期待してくれているようだ。

 文化交流としても良いゲームになると思うし、きっとみんな楽しんでくれるだろう。



 さて、カンファレンスの日程はこれで終わりなんだけど。

 E4は明日から本番の会場イベントが始まる。


 その前に、まずは新作ソフトを受け取っておかないとね。




ながぶろさんより、マルデア・ジャーナル。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この手ゲームは転売ヤーに目を付けられるな。 ダウンロード版が有るから品切れは起きないけど
[良い点]  "サムシティ・マルデア ~魔法都市を作ろう~" いいですね! 数年前にスーファミのシムシティを買ったのですが、引っ越しを機にテレビを捨てたものでやってないんですよぉぉー!!
[一言] スポーツゲーとかも文化の違いで話題になりそう そして野球を魔法ありでやってみたみたいな動画がマルデアと地球で大ブレイク
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