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第百七話 ニニア、興奮する!

今回はニニア視点で、生放送を見る側のお話です。


 ブラームスの娯楽専門店。

 私は今日もアーケード台で、画面を睨みつけていた。


「ニニアちゃん、もうアルカナイドのプロだよね」


 隣に腰かけたラナが、画面を眺めながら呟く。

 先月入荷したブロック崩しのコツは、既に掴んでいた。


 あっさり最終ステージまで来ると、ラスボスのでっかい顔が現れる。

 これ、モアイ像って言うらしいんだけど。他のゲームにも敵として出てたよね。

 地球人はそんなにモアイ像と戦いたいんだろうか。


 ボスに球を当てまくって撃破すると、後ろで見ていた客たちが沸き上がる。


「やっぱニニアちゃん、ゲームうめえよな」

「ああ。どんなゲームもコイン一枚でクリアしちまうんだからな」


 学校では落ちこぼれだけど、ゲームだけは得意。

 そんな私にとって、この店はとても楽しい場所だ。


 エンドロールの余韻に浸っていると、学生たちの声が耳に入る。


「なあ。今度出るゲーム、どんなのだと思う?」

「オールスターは出たばっかりだし、アーケードも先月出たしなあ……」


 どうやら、次のタイトルについて予想をしているらしい。

 ただ新作ゲームの情報は、発売に近づくまでなかなか出てこない。


 特に今回は、ゲーム映像が出るのがかなり遅い。

 ラナも待ちわびているのか、そわそわした表情だ。


「ねえニニアちゃん。次は何だと思う?」

「うーん。そろそろ大作が来るんじゃないかな」


 マルオカーツやゼルド、ドラクアと言った大作の存在は、私たちの心に強く残っている。

 オールスターに比べたら、パッケージに一本しかソフトは入っていない。

 でも、そのゲーム体験は凄い。

 時間を忘れ、夢中になって遊んでしまうんだ。


 今回は、ああいうタイプの作品じゃないかとネットで予想されている。

 ガレリーナ社のアカウントが出した、新作をほのめかす画像。

 あれは、何となくビッグタイトルの匂いを漂わせていた。 


 ラナと盛り上がっていると、男子たちがブラームスさんに詰め寄っていた。


「なあ店長。なんか情報ないの?」

「新作の事、知ってるんだろ?」


 苦笑いの店長は、店の奥から何やら大きなものを持ってきた。


「まだ具体的な内容は公開できないがね。ガレリーナさんからは、これをもらったよ」


 店長が手にしているのは、キャラクターのぬいぐるみだろうか。


「きゃ、きゃわいいいいいっ!」


 突然、ラナが立ち上がって店長の元へ駆けて行く。

 私も気になって、グッズを見てみる事にした。


「すごーい。何この子、ぷっくりして可愛い……」


 ラナは水色のカメみたいなキャラに夢中で、店長から受け取って抱きしめている。

 赤と緑のキャラもいて、確かにみんな可愛い。


 この子たちが、集めて育てる対象なのだろうか。

 RPGだから、この可愛い子が戦う?


 沸き上がる疑問が頭の中を埋め尽くす。

 と、その時。


「お、おい。ガレリーナ社の公式ページ見ろ!」

「なんだこれ……」


 デバイスを手に、学生たちが騒ぎだした。


「ニニアちゃん、見て。生放送だって!」


 ラナが見せてくれた画面には、ガレリーナ社の告知があった。


『新作ゲームの詳細を二日後の生放送で一挙公開!

気になるビジュアルやゲーム内容が明らかに!』


 こういう形での発表は初めてだ。

 どんな発表会になるんだろう。


「すげえな、ガレリーナもよほど自信のあるタイトルなんだぜ」

「こりゃあ待ちきれねえぜ……!」


 男子たちも画面に目を落としながら、興奮を隠し切れないようだ。


「二日後かあ。楽しみだねニニアちゃん!」

「うん……」


 もはや、みんなゲーム情報に釘付けだ。

 私たちはそわそわする気持ちを抑えながら、生放送の日を待つ事になった。



 その日の夜。

 ゲーム好きな親戚のお姉さんが、いきなり私の部屋に飛び込んできた。


「ニニア、週末の生放送は一緒に見るぞ!」

「ね、姉さん。それ……」


 なぜか彼女は、腕にあのヌイグルミを抱えていた。

 新作ゲームのグッズって非売品なはずだけど、何で持ってるんだろう。


「ああ、これか。玩具屋で金を積んだら買えた」


 どうやら大人の力で無理やり手に入れたらしい。

 彼女は既に、まだ見ぬ新作に入れ込んでいるようだった。



 そして、当日。 

 私はお姉さんと一緒にブラームス店に向かった。


 店長が、店内の大モニターで生放送を流してくれるらしい。

 せっかくだから、みんなで一緒に見て盛り上がろう。

 そんなブラームスさんの粋な計らいだ。


 店に着くと、既にラナや近所の学生たちが集まっていた。


「放送まであと十分か。スタ2やっとく?」

「手がつかねえよ。ワクワクが止まらねえ」


 アケ台に集まった男子たちが、そわそわしながら話し合っている。

 こんなに何かを待ちわびたのは、何年ぶりだろうか。


 用意されたモニターを見つめて待っていると、いよいよ時間が来た。


「お、映像が出た!」


 ガレリーナ社のロゴが表示され、生放送が始まった。

 食いつくように見ていると、画面に二人の女性社員が現れる。

 一人は、忘れもしない桃色の髪の少女だ。


「みなさんこんにちは。ガレリーナ社のリナ・マルデリタです」

「サニア・ベーカリーよ。今日は、今月発売となる新作ゲームの情報をお届けするわ」


 彼女たちの挨拶が済むと、早速ゲーム映像が流れ始める。

 最初に出たのは、冒険の舞台となる街並みだった。


「2Dのゲームか?」

「いや、今までとは違う!」


 出てきたゲーム画面に、男子たちが騒ぎだす。

 確かに、ビジュアルは平面的だった。

 でも、これまで見てきた2Dゲームとは何が違う。


 緻密に描かれた背景。

 そして、不思議なほどに美しい建物たち。


 懐かしさを持ちながら、新鮮で新しい。

 そんな映像だけで、胸の高鳴りが止まらない。


 次に出てきたのは、色とりどりのモンスターたちだ。

 ぬいぐるみで見た、あの愛らしいキャラクターもいる。


 十体、二十体。

 次々に魅力的なモンスターが現れ、生き生きと動き回る。


「すごいぞ、どれだけいるんだ」

「151って、そんなにもいるのかよ!」


 みんなで息を飲みながら見守っていると、映像が終わった。

 そして、最後に二つのパッケージとロゴが表示された。


『ポツモン スーパーレッド ハイパーグリーン』


 どうやら、これがタイトルらしい。


「赤と緑……。なんで二つもパッケージがあるんだ?」

「わからん、説明が足りんぞ!」


 お姉さんがモニターに向かって声を荒げている。

 落ち着いてほしいけど、気持ちはわかる。


 と、再び画面の中にガレリーナ社の二人が現れた。


「ご覧頂けたでしょうか。これが最新作『ポツモン』の世界です。

プレイヤーの皆さんはこの世界を冒険し、各地に生息する沢山のモンスターと出会います」


 リナさんの言葉を引き継ぐように、サニアさんが前に出る。


「出て来るモンスターたちは、全て仲間にする事ができるわ。

戦闘に出してレベルを上げれば、頼もしい味方に成長していくわよ!」


 説明と共に、RPGらしい戦闘画面が表示される。


「ぜ、全員仲間に出来るのかよ……!」

「凄い。凄いぞこのゲーム!」


 盛り上がる店内だが、生放送はまだ始まったばかりだ。

 ここから、何を説明するつもりなんだろう。


 画面を見上げていると、リナさんが後ろの絵を指さした。


「さて。みなさんは"進化"という概念をご存知でしょうか。

生物はみな、様々な進化を遂げて現在の姿を手に入れました。

モンスターたちもどうやら、進化するようです」


「し、進化だと!」


 騒ぐ店内に、再びゲーム映像が流れ始める。


 出てきたのは、小さな鳥のモンスターだ。

 可愛らしい鳥さんは、画面の中央で奇妙に震え始める。


「何が起きるんだ!?」


 男子の声に応えるように、鳥は巨大化していく。

 そして数秒後には、勇ましいたかのような姿になっていた。

 正に、種の進化だ。


「す、すげえ! かっこよくなったぞ!」

「なんという事だ……」


 店内が驚きに染まる中、サニアさんが続ける。


「ポツモンたちはみんな違った特性を持ち、それぞれの形で成長していくわ。

彼らの生態を調べて、モンスター図鑑を完成させましょう」


 画面には、モンスターの特徴が詳細に書かれた表が映し出される。


「自分で図鑑を作るのか……!」

「うう、早くやりたいっ」


 ラナも辛抱できないといった表情だ。

 でもまだ、生放送は終わらない。


 次に、リナさんがスウィッツを掲げた。


「さて、ここまでは冒険ゲームとしての情報をお伝えしてきました。

一人でこの世界に入り込むだけでも、沢山の遊びが楽しめます。

ですがこのゲームは、それだけではありません」


「な、何だと!」


 もう十分情報は出たのに、これだけで十分欲しくなるのに。

 まだ何かを隠しているのだろうか。


 ゴクリと唾を飲み込むと、サニアさんが笑みを浮かべる。


「ポツモンの遊びは、ゲーム世界の外にも広がっていくわ。

スウィッツのローカル通信機能を使えば、友達と一緒に対戦して遊べるのよ!」


「な、なんだと!」

「RPGで対人戦!? どういう事だよ!」


 これには、店内が一気に沸き上がった。

 私も、腕の鳥肌が止まらない。


「ローカル通信は、ゲーム機二つが近い距離にあれば利用できます。

実際にやってみましょう」


 リナさんはサニアさんと向かい合い、互いのゲーム機を通信し始めた。

 どうやら、本体が二つあれば無線でやり取りができるらしい。 


 お互いにモンスターを用意し、本当に対戦が始まった。

 それは、RPGスタイルの対人戦。

 わざを選び、戦略を考え、相手を倒す……。

 

「こ、こんな遊びがあるのか……」


 お姉さんは、口をあんぐり開けたままその様子を見守っていた。


「すごいね、すごいねニニアちゃん!」

「うん!」


 私はラナと手を取り合って喜んだ。


「すげえ、絶対盛り上がるぜ!」

「育てたモンスターでバトルだ!」


 対戦好きの男子たちも、この発表に大はしゃぎだ。

 店内が喜びの声で満たされ、みんな楽しそうに笑い合っていた。



 最後に、プレイヤー同士でモンスターを交換出来ると発表された。

 それを聞いたお姉さんは、泡を吹いてぶっ倒れた。


 入ってくる情報が、脳みその容量を越えてしまったらしい。

 慌てて彼女を介抱しながら、今見たゲームの映像を頭の中で思い返す。


 新しいゲームが運んでくる喜び。

 それは、私の人生をきらめかせてくれるように感じた。


 ああ、発売日まだかなあ。



※本作で登場するゲームはパロディです。

本家と全く同じ内容になるわけではありません。その点だけご理解下さい。


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― 新着の感想 ―
ああ、発売日まだかなあ。 この一言だけで昔の記憶が蘇ってきて泣いてしまった。 願わくば続きが読みたいです。
[良い点] 実際凄い画期的だったよね発売日に新宿につれてってもらって買ってもらっったなー全くこのこと知らなかったけど普通にはまった [一言] 友達いないから通信できなかったけどね・・・
[一言] 学校帰りにみんなでファミ通立ち読みした思い出が蘇って泣きそう
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