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美脚の見せ方 エピローグ

 撮影から約1週間後、世良達は会議室に集められていた。


「凄いスピード感だよね」

 渡辺は言った。

 TVや雑誌の取材とは全く別物だという。

 動画は撮影したその日のうちに編集され、広報部のチェックを受け、2日後には公開されていたのだ。


「見出しは想定外でしたね」

 世良が言った。

『その美脚トレーニングは逆効果』

『美脚のポイントは○○です』

 等を想定していたのだ。

 中身としては前者は、美脚にもタイプがあって、目指すタイプによってトレーニングが変わること。後者は『アキレス腱』が○○の答えになれば体裁は取れるだろうと。

 しかし、まったく別の見出しがつけられていた。


『美脚チャレンジ!ジャンプ系女子への道!』


「『道』ってことは続編あるのかな?あるならオレ出たいな」

 と古田。

「いや、古田さんは圧強いから。また一緒に裏方やりましょ」

 世良がからかう。


 撮影時、世良と古田には役割があった。

 世良はサヤカのマネージャー件プロデューサー、古田はディレクター件カメラマンと打ち解けること。

 そして、世良は青田の説明の補足を入れ、動画での字幕等で間違った情報が書かれないようにする。

 古田は『このトレーニングは、この角度で撮った方が分かりやすい』といったアドバイスを入れる。


 その甲斐もあって、サヤカのボックスジャンプの高さ、フォームがビフォーアフターではっきりと向上している絵が採用されていた。


 アスリート系の脚が希望の場合は、脚そのものでトレーニング効果を見せることは1日では出来ない。

 それならば、フォームやパフーマンスの変化で見せれば良いというのが古田のアイデアだったので、ほぼ作戦通りになった形だ。


「そうだな。二人の誘導のおかげで1発OKな動画が上がって来たからな。有能な『裏方』だよ」

 高田は『裏方』を強調して言った。


 そんな話をしている所へ会議室の扉が勢いよく開いた。


「お待たせしてすみません。前の会議が押したもんでね」

 水野が入って来た。


「観ましたよ。素晴らしい!どうですか?青田さん反応は?」

 水野が勢いよく質問する。

「そこまでじゃないです。。。動画を見たという問い合わせが5件で、実際に来店に繋がったのが3件です」

 青田が申し訳なさそうに言った。

「いいじゃないですか!数日で3件なら成果有りです。おそらく1か月では10件超えるんじゃないですか?そして、そのお客様がリピートすれば15~20件ですよね」

「そんな感じだと思います。今のところその3名も次回予約まで取られてますので」

「素晴らしい!まずは、数値成果が上がることが大事なんですよ。数字成果が上がった実績があれば、費用対効果の予測が立てられるので、次の稟議も通せます」

「ありがとうございます・・」

 水野の勢いに青田は引き気味だ。

 世良と古田は、それを苦笑いして見ている。


「先方からの反応も良いですよ。再生数の伸びが良いって。そして、ウチの動画で再生数が伸びたって実績があれば、他のインフルエンサーにも話を持っていきやすい。とにかくこの一歩が大事なんですよ!お疲れ様!また頼みますよ!」

 水野が怒涛の褒め殺しをして会議は終わった。


「なんか実感ないんですよね・・・ホントにあれで良かったと思います?」

 青田は帰り際、世良と古田に聞いた。

「バッチリでしょ」

 と古田。

「逆に何か不満なの?」

 と世良。


「不満ってわけじゃないんですが、もっと電話が殺到したりするのかなと思ってました。こんなものかって感じです」

「こんなもんだよ。むしろ、数日で3件で、それが全部定価で、全部リピートなら、相当な成果だよ。今時半額キャンペーンしたってなかなか響かないからね」

「そうそう。水野さんは基本オーバーだけど、今日言ってたことは何も間違ってない。そこは自信持っていい」

「むしろSNS関係は当たりすぎると炎上が怖いから、これぐらいがちょうどいいかもね」

「だね」

 世良と古田がフォローする。全て本音である。


「そうなんですかね・・・あっすみません。誰だろ?」

 青田の社用携帯が鳴った。

「出なよ」

 古田が促し、世良も頷く。


「すみません」

 青田が二人に一礼して電話を取った。

「もしもし、はい。あーーー久しぶり。どうした?うん。うん。そうかー。今日ならいいよ。閉店後本店来れる?うん。じゃあ着いたら連絡して。じゃあね」

 電話を切って青田は軽くため息をついた。


「すみませんでした」

「いいよ。スタッフから?」

「はい。後輩です。担当しているお客様のことで相談したいって」

「すごいね。動画効果じゃん」

「はい。これだけは効果あったみたいです。最近多くて・・・」

「いいことだよ」

「嬉しいは嬉しいんですけどね・・・」

「嬉しいけど?」


 青田は首をかしげ、世良達を見て言った。


「私、昔から後輩女子からしかモテないんです。。。」


お読みいただきありがとうございます。

この後も連作短編の形で続きますので、良かったらご覧ください。


◼️内容について蛇足

実際、美脚ってダイエット指導の何倍も難しいと思っております。ゴールが人によって違うので。

中でも一番難しいタイプとしてアスリートの脚を取り上げて見ました。長年鍛え上げられた機能美は本当にカッコイイ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 興味深く、拝読しました。 脚が太く、筋肉も少ない私。 私もパーソナルトレーニングを受けたいです! 世良さんや古田さんたちの掛け合いが楽しくて、癖は強いけれど一緒に仕事をしたらすごく充実した…
[良い点] 今回のお話は、女性が読んだら実用性が高そうですね。 リアルな知識が語られながら、キャラも凄く生きていて、特に青田さん、私的には十分インパクト強かったです! マンガにして絵で訴求したら一段…
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