サプリメント今昔 エピローグ
都内某所、黒須スポーツ運営会社の本社、第1会議室に世良と古田はいた。
部屋にいるのは5人の店長と特別参加の古田、二人の取締役、書記が一人。
月1回の店長会議である。
「・・・以上が、新港北台店の報告、および、トレーナーサプリメント販売強化プロジェクトの報告になります」
世良と古田が報告を締めくくる。
沈黙が出来る。時間にして数秒の沈黙だが、店長たちは、次に何が起こるか見届けたく、期待に満ちた数秒だった。
パンッ!と驚くほど大きな手を打つ音がした。
水野だ。
その音は2回、3回と続き、そのまま大きな拍手になった。
高田も続いて拍手をする。
他の店長たちも拍手をする。
世良と古田は起立して、深々とお辞儀をした。
「言うことないよ」
水野が言った。
「いや、本当は聞きたいこといっぱいあるんだけどさ。とてもこの会議の時間じゃ収まらないよ」
そう言って水野は、遠い目をして世良と古田を見て何か考えている。
そして、隣の高田に向かってまくし立てた。
「そうだ!高田さん!祝勝会やりましょう!なんなら泊りがけでもいいな。合宿にして今回のプロジェクトメンバーと、ボクと、高田さんで今後の展望を作っちゃいましょう。ビジネスの話が出来るトレーナーチームが出来たら、色々とやりたいことがあるんですよ。うん。合宿やりましょう!経費はボクが持つから!」
「えっ?ああ、いいですね。やりましょう。でも、経費はウチで出しますよ」
突然の提案に高田が狼狽えた。
「いえ。トレーナー部門は少しでも利益を大きくした方が経営陣へのアピールになるので、経費を使わないでください。でも、せっかく有望な若手が育ってきたので、ここは育成経費のかけ所です。だからボクが出します。これは戦略です!」
(水野さんってこんな人だっけ?)
古田が小声で世良に聞いた。
(スイッチ入るとこうなるんだ。覚悟しといた方がいいよ)
世良が答えた。
(何を?)
(色々巻き込まれるから)
(マジか。。。現場だけやってたいのにな。店長だって断ってたのに。。。)
(もう遅いよ)
「・・・ということだ。世良、古田!」
「はいっ!」
高田の声掛けに二人は条件反射で返事をした。
「頼むな!」
「はい!」
二人揃って返事をした。
そこで会議はお開きになった。
「で、何を頼まれたの?」
部屋を出てから古田が世良に聞いた。
「ごめん。聞いてなかった」
世良が答えた。
古田が大笑いして言った。
「まずいじゃん、どうしよう??」
「なんとかなるでしょ。ならなかったら一緒に謝ろう」
「だね」
二人はそれぞれの店舗に帰っていった。
――サプリメント今昔 了――
お読みいただきありがとうございます。
この後も連作短編の形で続きますので、よかったらご覧ください。
◼️内容について蛇足
サプリの議論、ベテランの反応とも、似たような仕事をされている方ならベタな話じゃないかなと思います。
そんなに変わったことは書いてないつもりですが、むしろ、この程度の内容がいまだにネタになるのがサプリの課題なのかなぁと(エラそうですが)思ってます。
過度に効果を信じられたり、過度に悪者にされたりで、なかなか適度に認識されないといいますか。。




