表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/240

ほのぼのとした日常

 俺達はカトレア先生から少し距離を開けて、声をかけて起こす事にした。



「「「「カトレア先生! 朝ですよ」」」」

「うーん、もう朝? って、あれ? ここは? あー、そうだったわ。昨日リリーちゃんのお家に泊まったのよね。リリーちゃん、スミレちゃん、皆おはよ。このベッド気持ちが良いわね。あれ? でも変ね? 私一階に降りてきて、葡萄酒を見つけて飲んで……?」

「先生、また飲んだのですか?」

「あははは、美味しくてつい……ごめんね」

「良いですけれど、先生寝癖が酷いことに……」

「えっ? 飲んで寝ちゃったからかしら? リリーちゃん、お湯貸して頂けるかしら? お湯で戻さないと治らないのよ……」



 先生、髪は即席麺じゃないんだから……だから、カトレア先生の髪が傷んでいたのか。

 原因は、間違いなくこの寝癖とお湯だな。

 折角髪を伸ばしているのだから、丁寧に髪を扱わないと痛んで途中で切れちゃうよ。ホントに。

 仕方がない、カトレア先生の髪のケアしてあげるしかないよね。



「先生、時間がまだ宜しかったら朝食とお風呂如何ですか?」

「うんーと、時間はまだ大丈夫みたい。どちらも頂くわ。あれ? 左手に何となく何かを気持ちよく、叩き落した感触が有るんだけど気のせいかな?」

「ちょっと! それ私よ、私! 本当に痛かったんだからね! まあ、私の不注意も有ったし……過ぎた事だから仕方が無いから良いけど」

「あら、シルクちゃん、本当にごめんなさいね」



 カトレア先生の寝癖が酷いので、先にお風呂に入ることにした。

 今日は久しぶりにスノーと葵を泡モコにしたくて、スノーと葵に幼獣型に変化してもらった。



「スノー、ごめんね」

「リリー様は、洗うのが上手ですので嬉しいです。うにゃん」

「スノー、ありがと」

「リリー様、私には何も言いませんの? こんなにも、お慕いしておりますのに……」

「悪意が無ければ、良いのだけれど……隙を見せると、触ってくるでしょ?」

「そうですよ、ユグは見逃しません」



 先ほどまでユグドラシルは俺の中で眠っていたのだが、毎朝日課にもなっている朝風呂のために召喚したのだ。

 それに、ユグドラシルは葵の魔の手から俺を守ってくれる可愛い勇者様なのだ。



「ユグちゃんは、召喚仲間ですのに何故ですの? あ! 今ユグちゃん、ニヤけたでしょ? またリリー様の心情を読んで……」

「ニヤけてなど、いません。リリー様に、ユグは微笑んでいるだけです」



 とまあ、このように俺の召喚ちゃん達は仲睦まじくしているのだ。

 そして泡モコ天使になる順番待ちをしているアイビーを、シルクが恥じるように見据えている。

 なので、俺の泡モコ天使にさせる技術を日々研究しているシルクに声をかける。



「シルク、今日は私の手が足りないからアイビーを洗ってあげてくれるかな?」

「し……仕方がないわね。リリーの洗っている姿を見ている私に任せなさい」

「クウーン……ワン、ワフ? クウーン?」

『えー……シルク洗えるの? 前みたいに痛くしない?』


「あれだけ何度もリリーの洗い方を見ているんだから、任せなさい」



 とまあ、今回のアイビーの泡モコ担当者はシルクだ。

 シルクはいつも、俺がアイビーを泡モコにしている姿を熱心に見ていたので上手に洗えるようになったのだ。

 なので、アイビーは文句を言わず嬉しそうに洗われていた。

 そして、カトレア先生とスミレちゃんはと言うと……



「……スミレちゃん? それは、ボディシャンプーよ。髪を洗うのはこっちのシャンプー」

「カトレア先生、名前が同じですよ?」

「容器の形でも、憶えられるわよ?」

「先生? このドロドロした物ですか? 泡立ちませんが……」

「それは、リンスだから……こっちよ?」

「これですね。よく泡立ちます」

「だから、それはボディシャンプーですって。リリーちゃん、スミレちゃんを手伝ってあげて……私の説明では無理みたい」



 うん、分かってた。さっきも服脱ぐとき縺れていたし……。



「葵、そういう訳だから自身で洗ってね。スノー、ごめんね。スミレちゃんを、手伝ってあげて。私は、カトレア先生の髪のケアをするから」

「はい、リリー様ぅにゃん」



 俺はカトレア先生の髪のケアをユグドラシルと共に行い、スノーは隣でスミレちゃんの髪と身体を洗うのを手伝った。

 って言うかカトレア先生、あれ(・・)を見せつける様に揺らさないで下さい。

 背の高さ的に仕方がないかもしれないけれど、質問の度にいちいち振り向くから大きすぎるあれ(・・)が揺れて弾んでワッショイ状態になんですよ。もぉー! 

 つまり、望んでいなくてもあれ(・・)に眼が行き、恥ずかしさをユグドラシルに知られたくないので、どうしても眼を瞑ってしまいユグドラシルの助けが必要となるのだ。

 それを見つめていた葵が



「理不尽ですの!」



 と、言って自身の身体を洗っていた。



        ※ ◇ ※



 氷結の大洞窟地下で、密かに密会が行われていた。



「――様? なぜそのようなお姿を?」

「――の王よ、これは私の主の趣味です。そんなことより、――の因子の行方はどうなったのです?」

「申し訳ありません、――様。未だに、不明です。ですが、我が軍を挙げて捜索に当たっておりますので……」

「――の王よ、熟知しているでしょうけれど、もしその因子が別の者に宿れば大変なことになるのですよ?」

「はっ! ――様、重々承知しております。現在私が――様の主から命があった南を担当し、東に――の王、西に――の王、北に――の王とに分かれ捜索中ですので今暫く……」




        ※ ◇ ※



 朝風呂を堪能した俺達は、脱衣所にやって来るといつものように行動する。

 アイビーに上質なミルクを与え、皆でフルーツ牛乳を飲んでから大浴場を出る。

 自宅に戻ってくると、今度は朝食だ。

 台所で、朝食用に卵ハムサラダサンドと、お昼のお弁当用にオークのお肉入りサンドイッチと果汁ジュースを作る。

 そして、テーブルに卵ハムサラダサンドと果汁ジュースを出し皆で食べる。

 シルクは卵多めのハムサラダサンドを十人前ペロリと食べて、アイビーからダイエットと言う言葉を聞かされ、それ以上は食べるのを断念した。いや、十分食べたよね? 



「リリーちゃん、私の分まで良いの?」

「はい、先生。オークのお肉が入ったパンなので、美味しいですよ。お昼のお弁当にどうぞ」

「リリーちゃん、助かるわー。ありがとね。でも、バスケットまで良いの?」

「はい」

「じゃー、遠慮なく頂くわね。あっ、そうそう。今日は、朝から雑学のお勉強の後に、近くの森に行って狩りをする予定よ。南の森には、角兎、大鼠、沼蛇、大牙猪、ゴブリン、オークと居るのだけれど、今日の狩り対象は入口近くにいる食材として人気の角兎と大鼠よ。私は用意が有るので、先に学校に行って準備してくるわね」



 先生が、俺の自宅の冒険者学校側出口に行こうとしていたので声をかける



「カトレア先生、一人では出れないので、私が裏まで送りますね」

「リリーちゃん、ありがとう」



 裏口に先生を送っていった後、まだ登校するには時間的には早いので、皆と一緒にキノットさんの様子を見に行くことにした。

 自宅からキノットさんのホテルに通じている特殊な鍵付きエレベーターに乗ってカフェバー&レストランにやって来ると、キノットさんを見つけた。



「キノットさん、おはようございます」



 俺の挨拶を真似するように、スミレちゃんとシルクとユグドラシルが挨拶をする。



「キノットさん、ごきげんよう」

「キノットさん、おはー」

「キノット様、おはようございます」

「やあ、リリーちゃん、パープルちゃん、シルクちゃん、ユグちゃんおはよう」

「キノットさん、私昨日からリリーちゃんの使徒になったの。それと、新しい名前も頂いてスミレに変わったのよ」

「えっ? パープルちゃんがかい?」

「うん」

「そうかー、おめでとう。オレ……失敬。王様達も喜ぶな」



 今、キノットさんなんて言おうとしたんだろう。



「うん」



 その後、少し遅れてモフモフ達がやって来た。

 実は、葵がお風呂で拗ねていたので幼狐になってもらいモフモフしたら機嫌が治ったのだ。

 スノーにも幼虎になってもらい、アイビーも加えてモフモフ達と戯れていたら、葵がエレベーターで悶えて遅れてきたというわけだ。



「キノットさん、ごきげんよう。お仕事、お疲れ様ですの」

「お早うございます。うにゃん」

「ワン、ワン」

『お早うございます』


「葵ちゃん、スノーちゃん、アイビーちゃん、おはよう。朝から皆元気だね。あれ? リリーちゃん、今日は小さいままで手伝うのかい?」

「いえ、この後私スミレちゃんと一緒に学校に行くのです。昨日と同じで、今日もスノーと葵が給仕をしてシルクとアイビーは注文係をしてくれるので。私は、学校が終わってから手伝いに来ますね」



 実は、キノットさんの所で給仕のお手伝いをしていると、五歳の容姿では持てる物に限界があった。

 それに何も持っていない状態ではあるのだが、何も無い所で転倒をするというドジっ子ぶりも発揮する。

 自身で態としているわけでもないし、お約束でも無い。ただ、以前からそうなのだ。

 若しかすると、そういうパッシブスキルが有るのかと思い探したが何も無かった。

 まあ、それを見たいが為に来店されるお客様には申し訳ないと思うわけだが……ただ単に何も無い所で幼女が転倒して、短いスカートが捲り上がり可愛いショーツが見えるだけである。

 なので、十五歳の容姿にしてロリメイド服セット(青・白色)を纏い給仕をしている。

 十五歳の容姿になると、物を沢山持てるし転倒しなくなるのだ。

 しかも、俺の容姿を見て葵が同じ位の年齢に変化した。

 葵の年齢変更には驚かされたが、まだ十八歳まで変更できるようだ。

 葵ってもしかして、俺の身体(ウツワ)より能力上なのか? 

 確かに異世界隠しスキルである限界突破から、召喚した召喚獣であるが……まさかね。

 キノットさんに説明をして勘考していると、スミレちゃんが小首を傾けてきた。



「えっ? リリーちゃん、お手伝いしているの?」

「うん」

「私もしようかな? 使徒になったことですし」

「「……えっ?」」



 俺の言葉とキノットさんの言葉が被った。

 恐らく、キノットさんは王女に手伝って貰うわけにはいかないと考えたのだろう。

 しかし、俺の考えは違う。

 スミレちゃん、自身の着替えも儘にならないのに、どうして給仕が出来ると思ったのかな? 

 やる気は有りがたいのだが、俺達の仕事が増えそうで怖い。いや、ホントに。

 だから、任せられないの。ほらね? エプロンも上下逆だし、後ろ前も……。

 なので、俺からスミレちゃんには丁寧にお断りをした。ふー、やれやれ。

 そんなことより、俺は教えたレシピ伝授に不備が無いか確認しに来たのだ。



「キノットさん私の能力でレシピの伝授をしましたが、料理の味付けなどは如何です?」

「レシピ伝授というのは、凄いな。これまでに無い、料理知識。美味しい料理の、温度把握と調節方法。それら全てが料理知識として把握できる。もう、王国料理人にすら負ける気がしないぞ。まあ、リリーちゃんの料理には到底及ばないがな! ハッハッハッハッハ。嬉しくて笑いが止まらん」

「それは良かったです。たぶん、これからは王侯貴族の方々も他国から来泊に来られるかもしれませんのでよろしくお願いしますね」

「それは流石に、慣れない所だが……頑張るよ」

「宿泊設備の方は、如何ですか?」

「リリーちゃんが言ってた通り、俺達は料理と配膳以外は何もしなくてもいい。全てが自動だからな。ただ、今稼働しているカフェバー&レストランと三階のホテルの宿泊施設の給仕人や雇い人を商業ギルドを通して募集しているのだが、予想を大幅に超えた人数が殺到してな。それに、オレンジ君やホワイトちゃん……失敬」



 今何気に、キノットさんとんでもないことを口走ったよね? 

 以前王妃が、俺達にホワイトちゃんと呼んでほしいと言っていたが……まさかキノットさん達に言わせているのか? 王もオレンジ君と呼ばせているのか? 

 もう、キノットさん? いくら秘密を共存している仲でも、王族と家族ぐるみになりすぎでしょ! ホントにホントに! 



「王族が来るホテルだからな、宰相達と一緒に雇う者の身元などを調べて厳選している所なんだ。ん? リリーちゃん、ホッペを膨らましてどうしたんだ?」

「なんでも、ありません」

「そうか? まあ、良いが。それにな、既定の人数に達すれば稼働していない施設も稼働予定なんだ。このホテルを充実した施設にして、フォレストムーン王国一のホテルにするぞ。それに、リリーちゃん……以前話したオーナーの件は、了解してくれるよな? 俺達は実質、食事を作って運ぶだけだ。食材は、なぜか城の騎士達が運んでくる。そのため、今は食材代も不要になっている。俺達家族は、皆本当にリリーちゃんに感謝しているしオーナーはリリーちゃん以外考えられないんだよ」



 俺は色々と勘考した。

 城からの食材や資材等は、実は全て俺に払いきれないお礼や褒美として国王が宰相経由で送って来るものだ。

 俺がオーナーとなれば、何か有っても言い訳ができるし示しもつく。



「オーナーの件は了解しました。でもホテル経営はお任せしたいです。それと落ち着いたら、今度私の自宅まで遊びに来て下さいね」

「勿論だ! それと変な話だが、リリーちゃん……以前からも噂はあったが、冒険者ギルドの近くに有る大きな宿屋の事で、またよくない噂を聞いた。だから、くれぐれも気をつけてくれよ」

「キノットさん、情報ありがとう」



 俺は、人型に変化することで劣化武器を使用可能となったスノーと葵に、一応警戒する様に伝え、学校に行くためにスミレちゃんと共にホテルを後にした。

 後日このホテルの経営権は、正式にリリー・ヴァリーの物として城より認可を貰った。

 そして、キノット夫妻は雇われ経営者となった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー? なんか最後、めでたしめでたしみたいな終わり方して

    なかった?」

リリー「でも、私まだ学校の授業受けていないよ?」

シルク「そうよね? 何かあるのかな?」

リリー「シルク、それは考えてはダメよ……」

    何も起こらないでほしいと願う、リリーであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ