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自宅にカトレア先生をご招待4

 そして、ユグドラシルに魔力が集中していき言葉を奏でる。



「咲き誇れ、美しき花々よ! フラワー インペリアル スローン ガーデン!」



 ユグドラシルの周りに美しい花の庭園と花の王座が現れる。

 現れた次の瞬間、ウンディーネの【ギガ レイジング ストリーム】が真面にユグドラシルを襲った。

 しかし、その【ギガ レイジング ストリーム】の水が瞬く間に吸収されたと思うと、王座に座り豪奢なドレスを身に纏い真の姿になった中偉聖霊第一王女ユグドラシルが平然と現れた。

 そして周りには、花や木々で出来たゴーレム騎士が数十体ユグドラシルを守護していた。

そのユグドラシルの真の姿を見たウンディーネは、後ろに下がり頭を垂れ跪いた。



「もっ……申し訳ございません」 

「大精霊ウンディーネよ、貴女は見誤りました。もし私が残忍な聖霊であれば、貴女は存在をこの世界から無くし同胞さえも失っていたかもしれません。それに、こちらのリリー様達も見た目で判断してはなりません……」

「はい、聖霊王女。聖霊……」



 ウンディーネの言葉を、遮る様にユグドラシルが述べる。



「ウンディーネ、貴女は『精霊語』を使いなさい」



 ウンディーネに対するユグドラシルの威圧は、以前微精霊達に発した威圧よりも遥かに強かった。

 スノーがウンディーネと俺を交互に見ると、ウンディーネはスノーに見られる度に後退していった。



「はっ、はい」



 ウンディーネの言葉が、急に水のような物音に変わる。



『「――――。――――。――――」』



 ウンディーネが『精霊語』を使い出すと【文字言語自動変換LV2】が発動したが、【いいえ】と答えた。

 ユグドラシルが、敢えて『精霊語』を使うように指示したのなら意味があるのだろう。

 そう心情で思っていると、ユグドラシルから「お心遣い感謝致します」と心情が伝わってきた。



『「――――。――――。――――。――――。――――」』



「成る程、そういう事ですか。心配には及びません。ウンディーネ、貴女は引き続きこの湖を纏め守護しなさい。そうすれば、貴女もきっと……」



 ユグドラシルがそう言うと、ウンディーネは深く頭を下げて入口から出て行った。

 そして暫くすると、ウンディーネが温泉に帰ってきた。

 ユグドラシルがウンディーネに事情を聞きに行くと、どうやら自身の力を使ってもこの家から出ることができなかったらしい。



「ごめんね、ウンディーネちゃん。解錠するから」



 俺がそう言って解錠すると



 【システム 精霊を従属】



 とシステムがそう告げた。



「あれ? ユグちゃん? もしかしたら、ウンディーネちゃん従属しちゃったかも?」

「リリー様、そのようですね……言い忘れていましたが、ユグ達のような中偉聖霊以上の者に威圧された状態で、自身の魔力より強大な力を、その召喚主に見せつけられると大精霊であっても従属されてしまいます」

「えっ? そうだったの?」

「はい。大洞窟で会った花の大精霊も、ユグがいなければ従属されていました……」

「あら……今度から気をつけるわね」



 あれ? そう言えば、ユグドラシルの中位精霊の文字が中偉聖霊に変わった? 



「ユグが、リリー様に伝えたことで修正が入ったようです」

「そうなんだ」



 それにしても、ウンディーネちゃんどうしてプンスカしていたんだろう? 

 俺がそう心情で思っていると、ユグドラシルが



「リリー様、プンスカとは?」



 と聞いてきたので、



「ごめんね、怒っていたという意味なの」



 と伝えた。



「ウンディーネはこの湖に近いこの国を心から愛しています。しかし、強大な力を持つ者達がこの家にいる事に、危機感を感じたそうです。ですので、自らこの家に確認に来たのですが入ることが叶わす、途方に暮れている所、冒険者学校側の封印が解かれたことで解錠に乗じて家に侵入したようです。ですが、自身の眷属がこの家の温泉にいるにも拘わらず報告が無い事に怒りを憶え水の微精霊達に威圧をしたようです。そして、ユグと話をした結果帰ったのですが……」

「私が従属しちゃったと言う事ね」

「はい……」

「ウンディーネちゃんの従属を解いたらダメなの?」

「リリー様、それはウンディーネが不憫でなりません」

「えっ?」

「自身が従属するほど認めた愛おしい主に、捨てられると同意ですので……」

「あら……。ウンディーネちゃんはユグちゃんと同じように私の中にいるの?」

「いえ、ユグのような存在とは違いウンディーネは元の湖にいます。リリー様が召喚された時のみ姿を現します。ですので、ユグのようにリリー様の心情は読めません」

「よかった。もし今さっき読んでたら不憫だからね」



 丁度ユグドラシルと話し終わると、葵達が少し離れた濁り湯から帰ってきた。

 葵達から事情を話したようで、カトレア先生は何も言ってこなかった。

 なので、皆でお風呂を上がることにした。

 いつものように外でフルーツ牛乳をスキルで作成し、上質なミルクをアイビーに与え、他の皆にはフルーツ牛乳を手渡す。



「うわ、これ凄く美味しい。私これ大好かも。どこに売っているのかしら?」

「エッヘン。カトレア先生、ここの食事もデザートも全部リリーの手作りよ! 私達王族でさえ今まで食べた事が無かった位に、美味しすぎる料理に感謝しなさいよね」

「ワン、クウーン」

『そこは、シルクが自慢する所じゃないけどね』


「エロ犬は、いちいち五月蠅いわね」



 俺は、アイテムボックスの中に有る普通の村娘に見える服を探し出し取り出すと、カトレア先生が着れるか試してみた。

 初めはどう見ても小さかった服が、カトレア先生が持つと先生のサイズに変わった。



「カトレア先生。さっき着ていた服を綺麗にするので、今日はその服を着て夕食を楽しんで泊っていって下さい」

「それは、流石にリリーちゃん申し訳ないわ」



 カトレア先生が遠慮していると、シルクが横から口を出す。



「カトレア先生、リリーの夕食も絶品よ。妖精の王族である私が保証するわ。それに他では絶対に飲めない葡萄酒も飲み放題よ」



 シルクに同調するようにスミレちゃんも語りだした。



「私のお父様とお母様も絶賛していたわ。本当よ! お父様は葡萄酒の為に、数日に一度公務を宰相に任せて、リリーちゃんの所に通う位なんだから。通えない時はお母様のご機嫌を取って、リリーちゃんの葡萄酒を貰いに行かせるのよ。お母様はフワフワモコモコスペシャルパンケーキも目当て何ですけどね」



 成る程、王様と王妃様が王族なのに自ら通う訳が分かった気がする。

 王様と王妃様は俺の所に来る度に、多量の食材を騎士達に運ばせている。

 勿論、騎士達を労ってそういう時は幾つかの食材で、騎士達に夕食や昼食を作ってあげている。

 騎士達は俺の所に食材を運びたいが為に、運ぶ者は全員順番性になっているらしい。

 今日はカトレア先生とスミレちゃんの為に、いつもよりかなり豪華なハイオーク料理を振る舞う事にした。



「この葡萄酒、まろやかで口当たりが良くて美味しいわ。王様と王妃様が通うだけの価値は有るわね」



 カトレア先生の葡萄酒の感想に、スミレちゃんがお肉をすすめる。



「カトレア先生、このお肉凄く美味しいよ」

「スミレちゃん、私も食べてみるわね。え? ……このお肉凄い。木のフォークでお肉が解れるわ。ナイフ無しで、切れるなんて初めてよ。もしかして高級なオークのお肉?」



 カトレア先生の驚きの声にシルクが自慢げに語りだした。



「フッフッフー、当然よ! 今日は、高級食材祭りよ! このテーブルの上だけで、金貨何枚か分かるかしら? 見てよ、このジューシーな肉汁。見ているだけで、涎が……」

「シルク。因みに、このお肉は普通のオークじゃないからね」



 俺の答えにシルクが慌てだした。



「え? ちょ、ちょっと。……も、もしかしてハイオークなの? ハイオーク?」

「うん」

「リリー、バカなの? 一体が、冒険者ギルドの詐欺みたいな買取りで大金貨1枚よ。王族でも滅多に食べらられない、超、超、超高級な食材よ! 市場に出たら、値が釣り上がる凄い食材なの。もし、ハイオーク一体丸ごと全部なら売値価格は白金貨十枚になるのが普通なんだからね!」



 シルクが、冷や汗をかきながら【このお肉は超高級。王族でも手に入らないお肉。少しでも多く食べないと。お父様の名に懸けて】と文句と意味不明な事を言って、美味しすぎるとモゴモゴと詰め込んで食べていた。



「シルク、慌てて食べると喉詰まらせるよ。まだ一杯有るから、よく噛んで食べてね。カトレア先生、お食事如何ですか?」

「もの凄く美味しくて涙が出ます。今迄、食べた事が無い贅沢な香辛料の豊かな味わいと香がします。この一皿が私の給料以上だなんて……」



 シルクとカトレア先生以外の俺と他の皆は、美味しく料理をお喋りしながら楽しんだ。

 俺はカトレア先生に気になる事を聞いてみることにした。



「カトレア先生、先生は魔法使用できますか? もし魔法を放てるのなら、放つ時はどうされています?」

「私? 私はAランク冒険者の資格は持っているけれど、近接戦闘が得意なのよ。なので、そこまで魔法は得意な方では無いの。でも、中級位の魔法までは放てるわよ。そうね……私が魔法を放つ時は、従来通り詠唱してその属性の源に力を貸してもらうようにするわ。そして言葉を発して、その源から頭に明確な形を思い描いて想像しそれがゆっくりと形を表すの。その形を表したものを、魔法の名と共に放つ感じね……」

「先生、その源から力を貸して貰う想像は初めからされないのですか?」

「うーん……やっぱり、従来通り詠唱してからかな? 詠唱することで具体的な物が想像できるのよ」

「では先生、詠唱する前に想像する訓練をしてみて下さい。その具体的な物を何度も想像することで、魔法詠唱の短縮ができ瞬時に放てるようになりますよ」

「……えっ? 私がその訓練をするの?」

「うん。先生がまず習得すれば、皆にも教えやすいですよね?」

「えっと、初めはリリーちゃんが私に教えてくれるのよね? そうでないと、私一人で習得なんて無理よ?」

「はい。でしたら、私が教えますので習得したら、学校の授業にも取り入れて下さいね」

「そうね……うん、分かったわ」



 カトレア先生と話を終えて、スミレちゃんと先生を自宅の二階に案内する。

 すると、カトレア先生が呆気にとられていた。



「カトレア先生、あちこち扉を開けて中を確認しないで下さい。自動で扉は閉まりますから良いですけれど、先生迷子になりますよ?」

「リリーちゃん、下の部屋も私が知っている貴族の屋敷の大部屋より何倍も広かったけれど、この部屋の数は一体何? 部屋は六十室あるし、そのうち十二室は貴族が泊まれそうな大部屋だし、中央には信じられない位大きなソファーが並んでいるし、この壁にある大きな白い幕は一体何? もしかして、宿でも始める気なの?」



 実は外見は大洞窟で出した大きさとは変わらないのだが、室内と部屋数を拡張したのだ。

 なので一階は以前よりもかなり広く、二階は部屋数が小部屋十六室と大部屋六室から大幅に拡張され、小部屋四十八室と大部屋十二室となり王様達がホテルに泊まらなくてすむようにしたのだ。

 だって、いつまでもキノットさんのホテルに王様達を泊まらせてキノットさん達に迷惑をかけられないよね。



「えっ? でも、これならスミレちゃんの側付きメイドさん達もここで寝泊まりできるよね?」

「リリーちゃん……キノットさんのホテルに泊まった側付きメイド達は、お父様やお母様がホテルに行く度に挙って行きたがるようになったのよ。もしここにも来させたら、もう城の寄宿舎には帰りたくないと言われるわ。だから、メイド達をリリーちゃんの自宅に泊まらせるわけにはいかないの」

「えっ? だからスミレちゃん一人で来るときは、騎士達を外で待たせてメイドさん達を連れてこないのね」

「うん……」



 確かに、一度贅沢なものを知ってしまうと人はそこからなかなか逃れられなくなる。

 スミレちゃんがここに住むなのら、側付きメイドさん達もと思ったがやめておいた方がよさそうだ。

 俺は高機能な部屋の説明と使用方法を、スミレちゃんと先生に教えた。

 二人に大部屋を勧めたが、カトレア先生は小部屋を選んだ。

 確かに、慣れていなければ小部屋の方が落ち着くからね……。

 一階に降りてくると、早速スノー達と一緒に大きな寝室に向かった。


 スノーと葵には変化して幼虎と幼狐になってもらい、俺はいつもの着ぐるみセットに着替える。

 今日はアイビーバージョンにして、皆で一階のキングサイズのダブルベッドで休む事にした。

 少しすると、スミレちゃんが大部屋で一人眠るのは寂しいと言って一階に降りてきてた。

 確かにいつもは、側付きメイドが部屋に必ず一人は控えているから仕方がないよね。

 リリーちゃんと一緒に眠ると言ってきたので、余裕が有り過ぎるキングサイズのダブルベットで皆と一緒に寝る事にした。

 因みに、スミレちゃんは使徒になった事で、魅惑の着ぐるみセットの誘惑が効かなくなったようだ。これで、もう安心だね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カトレア「うーん。気持ちいいー。このベット最高ね」

     ブルブル……お手洗いに行きたくなっちゃった。

     部屋にもあるけれど、下にあるお手洗いは鏡が大きいのよね。

     あれ? スミレちゃんの部屋の扉が開いているわ。

     一階に降りてきたけれど、お手洗いは……あったわ。

     ――――。んー、スッキリ。……ここのお手洗い、音がしない

     のよね。ちゃんと流したかしら? うん、問題ないわね。

     ここの鏡、全身が見渡せるので凄くお気に入りなの。あれ? この服

     寝転んでいた時にも感じたけれど、やっぱり皺が一切付いていないわ。

     でも、着心地も良くて肌触りが最高なの。不思議ね……。

     あっ! 葡萄酒があるわ。……いくらでも飲んでも良いって言って

     いたけれど、遠慮して飲まなかったのよね。

     でも、まだいっぱいあるし飲んじゃお。

     そして、次の日を迎えるのであった。

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