チートホテル? 誕生!
まあ、それは一先ず置いておいて……今日は、ライムお姉さんと昨日お風呂で約束していた宿の改装予定である。
なので、朝から大浴場に人がいないかを確認するため来る予定であったのだが、アイビー涎塗れ事件が勃発したため、思いの外大浴場を寛いでしまったので時間が経ってしまった。
「皆、これからは時間との勝負よ。シルクとアイビーは大浴場に誰も入ってこないように見張っていて」
「了解よ」
「ワン、ワン」
『はい、リリー様』
「スノーと葵はもう一度、女湯と脱衣所とパウダールームに誰もいないか確認お願い。誰かいたら、直ぐに外に出てもらって」
「はい、ですの」
「リリー様、承知しましたぅにゃん」
「うんうん、スノー可愛いわ。で、私とユグちゃんが男湯を確認するから。では、作戦開始ね」
それぞれが俺の返事に答え、人が居ないかを確認した。
どうやら、まだ誰も大浴場の施設に来ていなかったようだ。
「皆、お疲れ様。では、大浴場施設を収納っと……」
俺は、大浴場と温泉と宿屋に繋がる通路も全てアイテムボックスに収納した。
「相変わらず、リリーのアイテムボックスはぶっ飛んでいるわよね。大洞窟で豪邸を収納した頃と違って、収納後の地盤も綺麗に平地になっているし……」
「実はね、シルク。アイテムボックス収納時の、大雑把な収納はシステムが修正したそうなの」
「リリー? 私、女神じゃないのだから修正したと言われても分からないわよ」
「そっかー……」
実は、管理者レベルが上がった後に通知が届いたのだ。
アンケートを拝見させて頂きました。と、初めは意味不明だった。
しかし、読み進めていくと――
貴女の案を全面的に採用させて頂きたく、無限アイテムボックス管理システムとしてここに通知致しまた。
無限アイテムボックス管理システムは、第二案であった無限アイテムボックスの専用お店を今回採用させて頂き他の案についても随時更新させて頂きます。
今回採用した無限アイテムボックスストアで使用できる半額チケット並びに貴女が現在お住まいの金額で、合計一億王貨分の商品のご購入分を無限アイテムボックス管理システムが負担致しますので是非ご利用ください。
尚、無限アイテムボックスストアの運営開始は来年からとさせて頂きます。
呉々も、ご注意頂きますようお願い申し上げます。
第一案でアンケートに記載されていた、無限アイテムボックス内の収納時における大雑把な収納は既に修正済みです。
これからも、無限アイテムボックス管理システムを宜しくお願い致します。
と、通知があったんだよね。
確かに、アンケートを応募された方で採用された方の中から抽選で一名様に超豪華特典が当たります。と、記載はあったがまさか当選するとは思ってなかった。
しかも、ログが一瞬流れていたがチラッと抽選確率限とまでは読めたが――恐らく、抽選確率も限界突破していたのだろう。
そう考えないと、辻褄が合わないのだ。
……次は、無限アイテムボックスと女神システムサービスも連動してもらおうかな?
また、アンケートに答えたリリーであった。
俺達が宿屋に戻ると、既に宿屋の客は朝食を済ませ宿屋の外に全員出ていた。
「キノットさん、ライムお姉さん、レモンちゃん、お早うございます」
俺が挨拶すると、スノーと葵とユグちゃんも挨拶をする。
「お早うございますぅにゃん」
「皆様、ごきげんよう。天気が良くて、良かったですの」
「皆様、おはようございます。キノット様初めまして、花の精霊王女ユグドラシルです。リリー様にはユグちゃんと呼ばれておりますので、ユグちゃんと呼んで頂けると嬉しいです」
俺達が挨拶すると、キノット夫妻とレモンちゃんが挨拶をしてくれる。
「リリーちゃん、おはよう。えっと……リリーちゃん、本当に王女殿下をユグちゃんとお呼びしてもいいのか?」
「私の精霊ですので、いいですよ」
「じゃ、じゃあ改めて。ユグちゃん、初めましてキノットです。皆も、おはよう」
「クスッ! あなた、焦りすぎよ。リリーちゃん、皆様、お早うございます。レモンも、挨拶しなさい」
「うん。リリーちゃん、シルクちゃん、スノーちゃん、葵ちゃん、ユグちゃん、アイビーちゃん、おはー」
「ワン、ワン」
『お早うございます』
「ふあー、キノットさん、ライムさん、レモンちゃん、お早う。グゥゥゥゥゥゥ! 私、お腹空いたわ。リリー早くしてね」
俺はシルクのお腹が鳴る音に苦笑いしつつ、キノットさんに伝える。
「キノットさん、私大浴場に誰もいないか確認してから大浴場収納しましたよ」
「リリーちゃん、ありがとう。俺も宿に誰もいないか確認したが、もう一度一緒に確認してくれるか?」
「そうですね。二人で確認したら、間違いないですからね」
俺はキノットさんと全部屋を、もう一度確認した。
誰もいない事を再確認し、宿の扉を閉めてからアイテムボックスに収納。
平地になったかつての宿屋と大浴場があった場所の前に、立て札を立てた。
本日のパンケーキ販売は、勝手ながら宿屋改装のため本日のお昼過ぎになります。と書いた。
そして、俺は神級建築創造を使用するためスキルの詳細を確認した。
すると、以前は大まかな材料が必要であったのだが、限界突破LV2の恩恵により材料が不必要となり魔力だけで建築物等を創造する事が出来るようになっていたのだ。
スキル能力が、益々神がかっている気がする。
神がかっている……まあ俺は、女神と呼ばれる存在なんだけどね。
「そうですね……」
ユグちゃんだけが、俺の心情を理解してくれたみたいだ。口に出していないからなんだけれどね……。
俺は自身の頭に描いているホテルを創造するために、周りの皆に危険が無いように注意しつつスキルを口にする。
「【【神級建築創造】】」
俺が創造したのは――
この世界では、まだ王城以外では存在しないであろう技術で創造した建築物……いや、王城もここまで出鱈目な魔法や技術、構造は無理だよね。うん、分かってる。
似ている点は、強固にして、しなやかな支柱を持つ所くらいかな?
自然の脅威に対しても、対応可能な地下二階まで有る六階建ての豪奢なホテルだからね。
なぜ六階建てにしたのかと言うと、この美しい自然あふれる景色にそぐわない物にしたくなかったからだ。
いや、六階もあれば十分そぐわない物になるだろ? と思うかもしれないが。
このホテルは、ただ豪奢なだけではない。
何かあった時の、緊急避難施設にもなるのだ。つまり、このホテルの材質は鉄や木ではない。巨大ゴーレムは、ミスリルと何かの鉱石でできていた。
ならば、他に俺が知る若しくは知らない空想上の鉱石や金属が必ず有るはずだと考えた。
要するに、このホテルは俺の世界の空想上で有名なオリハルコン、アダマンタイト、ミスリル、そして劣化しないよう魔力回路で再生し続けるシステムを複合し別の物に変化させた複合鉱石魔法システム回路合金でできており、魔法や物理攻撃など、有りと有らゆる魔物の攻撃にさえ対処可能なホテルにした。
今は泊まり客の人数を考えて少なくしているが【神級建築創造】は後で部屋数や階数なども変更可能である。
それに、城より大きくするのはちょっとね。なので、地下二階まである六階建てのホテルにしたのだ。
キノットさんの宿があった場所と、俺が買い取った周りの土地も含めるとかなりの広さだった。
それに、南には湖が広がり美しい事も有って温泉は湖が見える様にしたかった。
なので、前に作った大浴場はアイテムボックスに収納したのだ。
一階の馬車専用入り口は、自動で開閉するシャッターから地下二階に降りる事で、お客様の馬車を自動で整備し、馬の自動餌やり機に毛並み管理の世話から、体調管理まで自動管理する施設が有る。
地下一階には、自動管理の遊戯施設と完全自動水質管理の温水プールを完備した。
一階の通常入口から入ると、豪奢なロビーとデザートを楽しむ事が出来るカフェバー&レストランが有る。
そして、南の広大な湖が眺められる場所付近には、大きな屋根と男女の仕切りが備え付けられた巨大温泉風呂に加え大浴場と浴場休憩施設が有る。
因みに俺が以前創造した大浴場施設より遥かに大きいが、中のシステムは同じだ。
二階には、ビュッフェ形式で食事ができる巨大なバイキングレストランが有り、大型、中型、小型の完全な特別室も完備している。
さらにキノットさんの家族が大家族になっても住めるように、リビングダイニングにオープンキッチンと各種部屋がある凄く大きな部屋を用意した。
そして地下二階から屋上階まで行く事が可能な、キノットさんの家族専用の鍵付きエレベーターと非常階段を準備した。
三階には、五十の客室。四階には三十八の客室と四室の中級貴族が宿泊できる客室。
五階には、三十八の客室と位の高い貴族さえも宿泊可能な豪華大部屋も二室用意した。
全室に、トイレと個室の風呂が備え付けられており、洗面所には各種化粧品を用意し、女性客が宿泊する時のみ自動で配布されるシステムだ。
それに、お客様が退室する度にお客様の荷物等に差し支えないように考慮された、掃除やベットメイキングと補充等が自動で行われる。
六階には、王族ですらも宿泊可能な、超巨大で豪奢すぎると言っても過言ではないラグジュアリーVIPルームを一室用意した。更に特別製のエグゼクティブラウンジを完備。
地下二階から屋上まで、三機のエレベーターを設置し災害時には自動で処理してくれるが、別の避難手段として非常階段も完備した。
六階のラグジュアリーVIPルームには、エグゼクティブラウンジに行ける専用の出入り口と一階から直通のエレベーターを完備した。
屋上には、全てを一層することが出来る屋外巨大プールを完備。
勿論、自動水質管理と雨天時に備えて自動開閉する屋根と壁で屋内プールに変化する。
屋内プールに変化完了後に、自動で空調管理が働く。
全ての階に、自動空調、自動消臭、自動清掃、自動補充等の完全自動管理がされている。
但し、大浴場内部と巨大温泉施設は完全空調ではないが、自動清掃時に全ての中の空気を入れ換えて綺麗にしてあるので空気も清潔である。
そして、ホテルの入り口やホテルの主要施設とホテルを囲んでいる壁際に獣型警備ゴーレムを配備。
警備ゴーレムは、ホテルの物だと分かる様にした完全自立魔道系モフモフ獣型警備ゴーレムだ。
ホテルを警備できるように、百体配置しているので警備体制もバッチリだろう。
警備ゴーレムであるモフモフな子虎と子狐と子狼は、スノーや葵、それにアイビーの様に小さく可愛らしい。
しかし、戦闘態勢に入ると大型から巨大な魔獣の様な大きさになりお客様や従業員を守る様に出来ている。
所謂、完全自動チートの百三十三室完備した超ハイテク最高級ホテルだ。
因みに、小部屋でも最大六名分のベッドを入れて宿泊できる。
つまり、見た目と中の広さが一致しないのだ。ふっ! ……もう、慣れたけれどね。
「ふー……少し思考を巡らせるのに時間がかかりましたが、完成しましたよ」
キノット夫妻とお客様達の目が点となって、言葉が出てこないようだ。
「「えっ……」」
「「「「――――。――――」」」」
「うわぁー、すっごーい。おっきーい」
レモンちゃんの歓喜とも呼べる声に、キノットさんの時間が動き出す。
「ちょ、ちょっと待って下さい。リリーちゃん」
「どうしたの?」
「この超巨大宿屋……もう宿屋とは呼べない。お城の様な物を、俺達家族だけで運営するのか?」
「ああ、キノットさん心配しないで。そこは【女神パワーで(キノットさん夫妻にだけ聞こえる様に)】殆どが全自動で、掃除や補充すらも全てお任せで出来るので安心してね。それに、モフモフ警備隊も従業員のようにお手伝いもしてくれるしね。そうね、キノットさん達は、いつもみたいにお食事とかを作ってくれたらいいかな。それと上階の客室と地下施設の解放は、新たに従業員をやっとってからにすると良いですよ」
口を開けて見上げる事しか出来ないキノットさん家族と、少しの間改装のためにわざわざ部屋を開けてくれたお客様十名を、俺が創造したホテルに案内すると悲鳴のような歓喜溢れる声音が聞こえて来る。
「俺らは本当にここに泊っても良いだか? 後五日分先払いで払っているが、追加料金が怖いんだけど大丈夫だか?」
「キノットさん先払いしたお客様は、その料金にしてあげてね」
キノットさんの声が、震えて浮ついている。
「も、もっ、もっ、勿論だ……」
「それに従業員が沢山雇えたら、前の宿屋を少し豪華にした宿屋も新たに作るからね。そこは、前みたいにリーズナブルにしてあげてね」
「あっ、ああ。分かった」
ライムお姉さんが、双眸を激しく瞬きさせて俺の顔をみる。
「リリーちゃん、私白昼夢でも見ているのかな? これって現実よね?」
「ライムお姉さん、興奮してる所ごめんね。部屋の使用方法などを、お客様を案内したいの。その後、キノットさん達も案内するから少し待っててね」
「う、うん。リリーちゃん早く帰ってきてね。心細いから……」
「ライムお姉さん、そんな不安な顔しないで。ちゃんと教えるから」
キノットさんとライムお姉さんは不安な顔をして、まだソワソワしている。
今日からこのホテルを経営するにあたり、不安なのかもしれない。
まあ確かに、今まで経営していた十名宿泊できる宿屋とは規模が違うからね。
俺もいきなり何も無い状態で、今日からこのホテル君に任せるって言われたら……即、断るよ。うん。でも、チートすぎるホテルなんだから、無問題だよね?
キノット夫妻に対して、レモンちゃんは喜んで燥いでいた。
レモンちゃん、将来大物になりそうで何よりだよ。
俺は、お客様十名を三階の客室に案内。
そして、魔方陣が描かれている部屋のカードキーを渡して色々と使用方法を説明して回った。
その後、キノットさん夫妻とレモンちゃんにホテルの仕様等を説明。
元の宿屋を空き地に設置して、私物をゆっくりと新館のホテルに入れる様に伝えた。
神級建築士のスキルには、解体も新たに加わっており、解体すると材料別に纏まりアイテムボックスに自動的に収納されるのだが、キノット夫妻の私物も有るので暫くそのままにした。
ホテルには調理器具や鍋等も備え付けが有り、自動洗浄機に入れる事で全て綺麗になる。
それに、調理場は空調管理が整えられ、大型冷蔵庫と大型冷凍庫と食材長持ち専用大型材料庫も備え付けられている。
更に、食材を一階で入荷させた時に食材が長持ちする食材専用エレベーターも完備。
実は管理や清掃が全て自動である為、前に使っていた調理器具も全て不要で、コック服も自動洗浄機にセットされており致せりつくせりのホテルなのだ。
俺が皆を連れて説明して回るのに昼過ぎまでかかったため、ロビーで休憩していると豪奢な馬車がホテルの前に止まった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「ねえ、リリー? あの部屋に入ってボタンを押すとね、全然違う場所
に出るの。一体何?」
リリー「シルク、なぞなぞみたいな質問ね。でも、ボタンを押すと言うことで
分かったわ。それはエレベーターね」
シルク「エレベーターって、何なの?」
リリー「魔法動力でね、部屋のような箱型のものをこのホテルの場合は、一部に
前方、後方、左右と、垂直方向に上下移動させて人や物等を運ぶ魔法道具
よ。基本は垂直に上下動くのだけどね。うちのは特別なの」
シルク「迷子になりそうね。私は乗らないわ。飛ぶ方が早いもの。ほら……」
バタン! ペチャ、キュウ……
リリー「シルク、危ない! そこ窓だから……って遅かった。……これお約
束だよね?」
透明な窓ガラスに体当たりして、気を失う鳥と同じ事をするシルク
であった。




