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女神システムサービス

 俺は、気になるランク上昇についてスノーに確認することにした。



「リリー様は、女神システムサービスにご加入されています。うにゃん」

「女神システムサービス?」



 管理者システムの中に女神システムはあるが、女神システムサービスはなかった。

 しかも管理者システムの中の女神システムは、完全開示はされておらず一部のみ開示されていた。

 その一部とは、天罰。

 名前からして、罰を与える物だと推測できる。

 しかし、俺は本物の神ではないと思っている。

 なので、使用しようとは思わない。

 まあ、何らかの危機的状況に陥ったときは時は別ではあるが……。



「女神システムサービスの事前申請をされていらっしゃったので、各種サービスや特典のプレゼント、そして管理者のランクアップに加算が付いているのです。うにゃん」



 事前申請? 抑この世界に初めて来た俺は、スノーの召喚――いや、システムを開ける事すら知らなかった。

 何も知らない俺が、事前申請なんて出来るわけがないのだ。



「スノー、私知らないよ? 申請も、していないし……」

「ですが、澱みの魔獣戦のレベルアップ直前に申請されいるようです。うにゃん?」



 キメラ戦? 俺はそんな余裕はなかった。

 肉体的には余裕はあったが、俺のどんな攻撃さえも回復してみせたキメラ相手に、気持ちに余裕は一切なかった。

 そのような状況下で、事前申請など狂気の沙汰である。

 しかし、キメラとの戦闘中にシステムが立ち上がり



 【システム起動……ご応募ありがとうございます。申請を全て承りました。キャンペーンにつき特典がプレゼントされました。プレゼントの一つ封印一部開放を承りました。能力の一部を開放致します………………成功しました。天狐八尾狐特殊能力解放 +AP 10%加算されます。能力解放後、AP能力を使用すると、10秒後に再封印されますのでご注意下さい】



 と、意味不明な言葉を述べていた。

 つまり、この意味不明な物言いが女神システムサービスだったと言うことか……。

 俺とスノーが話をしていると、葵が掛け布団から顔をだした。



「リリー様、私が申請しましたの」

「え? どういう事?」



 質問をすると、葵が掛け布団から出てきて頬を俺の頬に寄せてきた。



「リリー様が一番初めにレベルアップする直前に、私がおまけと言って管理者ランクが上がりやすいように色々と申請しましたの」

「……成る程ね」



 葵が色々と、俺が管理者LVを上げやすいように申請したのか。

 合点(ガテン)がいった。スノーも知らないわけだ。

 俺が勘考していると、葵が掛け布団に入り直し今度は俺の胸の上から掛け布団越しに顔を出した。

 まあ、少し肌寒いから布団に入り直したのは分かるが、葵との距離がスノー達より近い気がする。

 それに……確かに久しぶりの再開とはいえ、俺の小さな膨らみを小さな幼狐の手でプニプニとされるのは、流石にスキンシップが多い気がする……。



「葵、擽ったいから手をどけてね」

「主様、ごめん遊ばせ。うふっ」



 ……今のは絶対、確信犯だよな。

 もしかして、葵は少しレズっ子なのか? 

 もし、葵が今人型だったら完全にそうだったよな? 

 スノーやアイビーとは違い、狐だけあって純粋ではないのかもしれない。

 俺が考えを巡らせていると、「私もそう思います」とユグドラシルから心情に伝わってきた。

 ともあれ、葵の話を聞かなければ女神システムサービスの申請した物が何なのか分からない。



「葵? 女神システムサービスの事を教えてもらっても良いかな?」

「はい、主様……女神システムサービスは、お得でしてよ。申請すると、何もしなくても毎週管理者ランクにポイントが付きますの。信者が増えるだけでも、その分ポイントが増えてお得ですのよ。他にもランクシステムサービスが有りまして、リリー様は今ゴールドステージで1割ポイントアップですの。限界突破能力も相まって、どんどんポイントが貯まりますのよ。ポイントが貯まれば、ランクアップが優位になり自動加算分が多くなりますの。初回案件解決特典ボーナスは、その恩恵でもありましたのよ」



 葵が得意げに、言っている。

 初めてレベルが上がったときの異常な加算分は、このサービスと限界突破の相互作用が原因だった訳だ。

 葵の気遣いは嬉しいが、今後どうなるのやら。

 再び幼虎に変化したスノーとアイビーも近くで丸まり、少し気にはなるがモフモフ好きな俺の欲望の方が上回り、今日は幼狐に変化した葵を抱きしめて眠りについた。



        ※ ◇ ※



 ある部屋で――



「――様、またどこかに行かれていたのですか?」

「君は同志が作ってくれたその姿で、僕に給仕をすればいい」

「ですが、その同志様を……」

「それは、あのお方に――同志もきっと……」



 給仕と、その主の話は時が不明なその部屋で数時間続くのだった。



        ※ ◇ ※



 朝起きると、自身の胸元の擽ったさで目が覚めた。



「ひゃ! こそばい」



 双眸を開けると、ユグちゃんが俺を庇っている姿が見えた。

 しかし、シルクのように小さいので庇いきれなかったようだ。

 いや、ユグちゃん大きくなれるの忘れているんじゃ……? 



「リリー様、ごめんなさい。忘れていました」



 と、ユグドラシルの心情が伝わってきた。

 そんなことより、



「葵、なぜ人型になっているの?」

「うにゃん?」



 スノーも、起きたようだ。

 なので俺は、座ってスノーを抱いてスノーで胸元を防御する。

 スノーが小首を傾けているが、ユグドラシルがスノーに事情を話してくれているようだ。



「主様、葵はずっと人肌の温もりが恋しかったですの」

「で、葵? その手は、何かな?」

「そうですよ。ユグが言っても、葵様は全然聞き入れてくれませんし」

「マッサージですの。主様の……」



 葵、わしゃわしゃ手を動かすのは止めてくれ! それを見ると、擽ったくなる。



「もう、これ以上はいいからね。それに、もっと気にしている子がそこに寝ているでしょ?」



 そう言って俺は、シルクを指し示した。

 すると、シルクがムクリと起きた。



「もぉー、リリー五月蠅いわね。朝から、大声出さないでよ。折角アイビーのスペシャルパンケーキの夢見てたのに」

「ワン、ワンクウーン」

『リリー様、シルクの涎で僕の背中がベトベトです』



 アイビーも、起きたようだ。



「主様……葵でも無理なことがございますの」



 シルクのちっぱいは、葵でも無理なようだ……。

 いやそんなことより、アイビーがシルクの涎で酷いことになっているのに気がついた。



「アイビー、ベトベトね。今からお風呂に行く?」

「ワン、クウーン」

『リリー様、そうします』


「じゃあ、皆でお風呂に行きましょうか」

「うにゃん」

「はい、ですの」

「仕方がないわね」

「ワン、クウーン」

『シルクの、せいだから』


「美少女の聖なる滴なんだからアイビー感謝しなさいよね」

「フウー、クウーン」

『もう、いいよ』



 葵が人型に変化しているので、スノーにも人型に変化してもらい俺達は温泉に行くべく一階に降りてきた。

 すると、キノットさんが必死になって俺が昨日作って見せたフワフワモコモコスペシャルパンケーキを作ろうとしていた。

 パンケーキや、俺が今まで作成した料理のレシピは伝授したが、それは俺の出鱈目なスキルで作った物なので技術力が必要だけど出来るのかな? 

 俺は真剣な目差しでスペシャルパンケーキ作りを練習しているキノットさんに、声援を送るために声をかけることにした。



「おはようございます。精が出ますね、キノットさん。私も手伝えることがあれば、お手伝いするからね」

「リリーちゃん、おはよう。いやー、これ難しいな。でも、俺頑張るから……」



 そう言ってキノットさんは俺を抱きしめて、頬ずりして来た。

 それを見ていたライムお姉さんが慌てて、俺を奪い皆を引き連れて大浴場の通路に連れてきた。



「リリーちゃん、大丈夫? ごめんね旦那が……」



 そう言っているが、ライムお姉さんも俺をなかなか離してくれない。

 ライムお姉さんの隙を見て、どうにか俺は着ぐるみセットを洋服専用修復ボックスに収納した。

 絆と信仰が強い信者になった事で、眷属や従者のスノー達の様に着ぐるみセットに耐性が出来たと思ったのだが少し耐性ができただけのようだ。

 俺が寝起きで頭を働かせていない状態で、可愛い表情や仕草をしてしまうと少し魅了してしまうらしい。



「ごめんね、私もリリーちゃんの姿が愛おしくてつい……。あれ? リリーちゃん、この可愛い女の子達は?」



 ライムお姉さんはスノーや葵を見て、お友達? と聞いてきたので、スノーと葵に言って変化してもらった。



「え? スノーちゃんだったの? ……えっと、こちらの小さな可愛い子は?」



 可愛いとライムお姉さんが言ったのは葵の事だったが、シルクが自分の事も言ったのだと勘違いして無い胸を張って自慢して答えた。



「可愛い女の子代表の私が答えるわ。スノー様がさっきの儚い美少女。幼い狐が、葵ちゃんと言って、金髪ツインテールの美幼女よ。二人共、リリーが召喚したの」

「スノーちゃんは初めに召喚して貰ったから知っていたけど、葵ちゃんは知らなかったわ。あれ? でもアイビーちゃんは?」



 ライムお姉さんの疑問に、



「えっと、ごめんなさい。アイビーは召喚獣じゃなくて、本当は妖精狼(フェアリーウルフ)なの」



 と、俺は黙っていたことを正直に答えた。



「え? 凄い……本当なの? この国で神聖な存在の妖精狼(フェアリーウルフ)様だったのね。でも、もう気にしないわ。リリーちゃんには、いつも驚かされているけれど凄くお世話になっているもの」

「え? 私は私は? 私も神聖な存在の妖精の王女なのよ」

「そうなのね」

「ちょっと、ライムさん私だけ反応が薄くない? ねえ、薄くない? モゴッ!」

「もう、シルク。ライムお姉さんを、困らせたらダメだからね」



 シルクは、自分だけライムお姉さんの反応が薄かった事に文句を言っていた。

 しかし、俺が口にクッキーを突っ込むとモグモグしだして黙り込んだ。

 ライムお姉さんが



「シルクちゃん、ごめんね。驚くことが多くて、私麻痺していたのかも」

「モゴモゴ。ライムさん、私こそ悪かったわ。ごめんね」

「いいのよシルクちゃん。リリーちゃん、皆、まだお客様の朝食の準備があるので私戻るわね」

「はーい」

「うにゃん」

「ご苦労様ですの」

「いってらー」

「ワン、ワオーン」

『ライムお姉さん、お疲れ様です』



 と皆それぞれ答えると、ライムお姉さんは厨房に戻っていった。

 スノーと葵が、再び人型に変化したので、



「じゃあ、皆行きましょうか」



 と言って、俺達は日課になりつつある朝風呂に入りに行くことにした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

リリー「シルク、何しているの?」

シルク「葵ちゃんに、大きくなる方法教えてもらったのよ」

リリー「――――」

シルク「リリー、どこ行くのよ?」

リリー「少し、用事を思い出したの」

シルク「そんなことより、リリーもしなさいよね。ほらっ! プニプニ」

リリー「ひゃっ! もぉー、シルク擽ったいから」

葵「――――。私の時は、リリー様嫌がってましたのに……。やっぱり、

  いけずですのー」

リリー「そんなこと無いから……」

葵「では、わたくしも遠慮無く触り……ふひぃー」

  リリーは、葵の手を回避した。

シルク「……確かに、葵ちゃんは何か悪意を感じるわね」

リリー「でしょ? だから嫌なの」

    結局、リリーをわしゃわしゃできなかった葵であった。

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