ユグちゃん再び
シルクには何となく感じられる花の薫りで、鼻の良いアイビーには感じられない花の薫り……
花? あっ! ユグちゃんか――花の精霊であるユグドラシルであれば、花の薫りがしても別段可笑しくはない。
「シルク……ユグちゃんかも?」
「そう言えば、リリー言っていたわよね。まだ、眠っているみたいって」
「うん。シルク、ユグちゃんを呼び出すね」
「いいわよ」
俺は心情でユグドラシルに『直ぐに気がつかなくて、ごめんね』と謝り、呼び出すことにした。
「ユグちゃん、おいで」
暖かな風に誘われるように、芳しい花の薫りと花弁が舞いちる。
そして花弁が魔方陣を描くと、そこから美しいドレスを着飾ったユグドラシルが現れた。
もしかしたら、俺の妄想着替えシーンをユグドラシルが感じ取ったのかもしれない。
微精霊であったユグドラシルは、こんな演出のような現れ方はせずに、透明な状態から徐々に姿を現していた。
シルクは初め契約している者にしか見えないとも言っていたが、シルクも花の精霊は普通に見えていたようだ。
それに、俺が召喚した微精霊であったユグドラシルも……
恐らく、長い時の中で力を付けた花の精霊であったが故に精霊が見えたのだろう。
しかし、ユグドラシルは何故だろう?
俺が呼び出した事で、微精霊であったユグドラシルに何かあった?
今となっては、微精霊であったユグドラシルの状態は不明であるけれどね。
ユグドラシルは、俺に跪き頭を垂れ、
「リリー様、呼び出して頂き光栄至極に存じます」
と言った。
俺がいくら召喚主であれ、堅苦しい言葉を使われるよりもう少し気軽に話してもらいたい。
それに、今は王妃様やパープル王女でさえリリーちゃんと言って親しく接してくれている。
シルクやアイビーにも、女神様ではなくリリーと呼んでもらうように伝えている。
なぜなら、こちらが変に緊張してしまうからだ。
俺は前の世界の職場でも、お客様に気軽に接していた。
お客様が寛大であったが為に、俺が気軽に接していても怒られなかったのかもしれない。
しかし、丁寧な口調の職員よりも余程好評で俺が休みの日でさえお客様が探していたそうだ。
外で買い物をしている時も、お客様達からよく声をかけられていた。
恐らく、俺が気軽に接していても常に笑顔でいたのが要因かもしれないけれどね。
でも実際、俺がいる人といない日では、売り上げが変わったと支店長から言われ時は驚いた。
大阪で務めている時も、そうであった。
まあ、その仕事と土地柄の影響だったのかもしれないけれどね。
常に身近に感じる、俺の精霊であれば尚更である。
もし俺の心情が分かるのなら、もう少し気軽に話して欲しいのだが……俺がそのような事を勘考していると、
「リリーちゃん、様、もっ、もう少々待って、お待ちを……」
ユグドラシルの言葉が変だが、俺の心情を感じ取り調整しているようだ。
すると、見る見る内に縮んでいき気品ある美しいドレスを着飾った美少女であるが、シルクのような大きさになった。
違いと言えば、シルクはちっぱいであるがユグドラシルのあれは大きかった。
「いやぁぁぁぁぁぁー! ユグちゃん、私のポジション奪わないでー! それに、なんで、そこだけ大きいのよ! リリー、何とか言ってよ!」
シルクは俺の右側で激しく動揺しあれを指さしているが、ユグドラシルは俺の左側で自身のあれの大きさが示すように、ゆったりとした口調で俺が聞きやすい言葉を使う。
「リリー様、ユグはリリー様の心情を読み取り、少し気軽に話せる小さな容姿になりました。スノー様のようにモフモフはしていませんが、ユグは小さくて可愛いですか?」
「うん、可愛いよ。ユグちゃん、ありがとっ。でも、シルクと仲良くしてね」
「はい、リリー様」
そう言って、自身の大きなあれに手を添えた。
ユグドラシルの方が、シルクより王女様らしい気がする。
確かに、ユグドラシルは精霊王女であるが……
俺が、シルクに苦笑いをしていると、
「リリー様、ユグは普段はシルク様の為に姿を消しておきますね。ですが、側にはいますので身近に感じて頂けると嬉しいです」
「ユグちゃん、気を遣わせてごめんね」
「いえ、リリー様の心情お察しします」
「あははは……」
ユグドラシルに、気を遣われるシルク……もう少し、王女様らしくして欲しい。
まあ、俺としてはその方が気が楽なんだけれどね。
でも、ユグドラシルは今の状態が一番良いよ。
と、側にいるユグドラシルに心情を明かした。
「あれ? ユグちゃんは?」
シルクが、俺の左側を探していた。
言い訳、どうしようかな?
まさか本当のことは言えないし、流石のシルクでも凹むよな。
俺が勘考していると、『ユグドラシルの言葉』だけが俺の鼻腔を擽る良い薫りとして伝わってくる。
『「リリー様、ユグの魔力調整関連でシルク様にお伝えしては?」』
『「ユグちゃん、ありがとっ」』
俺は心情でユグドラシルにお礼を伝え、シルクに言葉を伝える。
「シルク、ユグちゃん魔力の調整がまだ上手くいかないみたい。でも、側にはいつもいてくれているから」
「そうなんだ……ユグちゃんも大変ね」
下手な言い訳のような気がしたが、シルクには通じたようだ。
流石、ユグちゃんね。
俺がそう心情で思うと、ユグドラシルの喜ぶ心情が伝わってきた。
そう言えば、この温泉も微精霊達が見えるんだよね。
この子達は水の? 温泉の? 微精霊? そう俺が勘考していると、ユグドラシルが姿を現し
「リリー様、この者達は水の微精霊ですが普通の水の微精霊達より高い治癒能力を持っているようです。それに、もう少し待てばきっと……」
と答え消えていった。
シルクがその様子を二度見して、
「今、ユグちゃん現れて消えたよね……やっぱり、魔力安定してないのね。リリー、ユグちゃんをもう少し寝かせてあげてね」
と言っていた。
ユグちゃん、何気にシルクを扱うのが上手な気がする。
それに、今のってシルクが俺の左側を見た瞬間姿を消したよね……
「ユグちゃんは、シルク係?」
「何よそれ……アイビーで、十分よ」
シルクは自身で言ったことに頬を染めていたが、ユグちゃんの心情は『リリー様、ご冗談を……』と言う気持ちが伝わってきた。
確かに、アイビーみたいに幼馴染みでなければシルクの性格に色々と気づいてあげることは難しいかも知れない。
まあ、それだけシルクとアイビーは仲が良いと言うことだ。
そう言えば、ユグちゃん温泉なのにドレス着ていたような……
「リリー様、ユグのドレスは魔力でそう見せているだけです」
俺が勘考していると、再びユグが現れた。
どうやら、シルクがアイビーの方に行ったので出てきたようだ。
「もしかして、裸なの?」
「はい、精霊は全て裸です。ですが、自身の位や魔力量によってその服装を自在に変化させております。」
成る程、だから魔力の高いユグドラシルは花の精霊より格段に美しいドレスを身に纏っていたんだ。
もしかしてあの時、魔力が安定しなかったから服が消えると思って消えたのかもしれない。
「はい」
「あっ! 考えていること分かっちゃうんだよね」
「はい。ユグはリリー様の事を、何でも知っています。だからこそ、心から嬉しく思うのです。ですので、今度からはお風呂で姿を見せる場合は服を見せる魔法を解除致しますね」
そう言って、消えていった。
どうやら、シルクが戻って来たので姿を消したようだ。
※ ◇ ※
ある場所で、とある者達の密会が行われていた。
「事は、あなた様の筋書き通りです」
「……そう?」
「上手くいった暁には……」
「――――。今は……ですの」
「はい……」
目映い二つの光が消えると、そこには何者の存在もなく無が訪れた……
※ ◇ ※
「リリー、そろそろ私上がるわね」
「うん。私も上がるから」
そう言って俺達は温泉から脱衣休憩所に来た。
休憩所で俺は身体を拭いて髪を乾かす。そして下着を着る。
以前は裸でスノーとアイビーを乾かしていたのだが、シルクに「下着を着てから、スノー様とアイビーを乾かしなさい」と注意されたのだ。
なので、下着を着てスノーとアイビーをドライヤーで乾かした。
本当なら、乾かしたてのスノーとアイビーに裸ん坊で抱きつきたいのだがシルクに怒られるのだ。
「リリー様、シルク様の言っている事はご尤もですよ。それに、年齢を変更し美少女のあられもない姿で抱きついている事を想像してみて下さい……」
ユグちゃんにも、そう言われた。確かに、年齢を十二歳にすると流石に自粛が必要かと思ったけれど今は幼女……でも怒られたくないので、仕方なく……。
アイビーは、最近少し毛が柔らかくなってきた。
以前はもう少しモフフサしていたのだけれど、リンスやコンディショナーを使っているせいかもしれない。
俺は服を着替える為に、アイテムボックスに手を入れる。
神社の境内で、白い羽衣を羽織り神楽舞を踊る。踊るにつれて髪の色が黒く染まる。
幾つもの浄化された魂の光のような塊が、上から光の雨となって降り注ぐ。
光の雨が止んだとき、黒髪巫女ロリ服を纏った俺が現れる。
妄想演出タイム終了。
巫女服を着る序でに、髪の色を白銀から黒髪に変更した。
うん。やっぱり巫女服は黒髪だよな。
この服も身体に力が漲る。
なんて言ったら良いのだろう?
舞えば舞うほど強くなる。
蝶のように舞い、蜂のように急所を的確に刺す。
そんな言葉が浮かぶが、的確な表現が浮かばない。
俺って表現力もないよな……。それは、さておき。
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巫女ロリ服セット (白・赤色) 使用中●
- 【専用神武具】
刀 草薙剣
- 【専用神武具】
弓 天之麻迦古弓
矢 天羽々矢
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今日は巫女ロリ服セット(白・赤色)だ。
上は白服で金色の縁取りが有り、下は赤く同じく金色で縁取りがされ、赤い大きなリボンが付いている。巫女服に羽織るように赤色に金の縁取りと金の刺繍が入った羽織もセットになっており、白い足袋と赤い下駄が付いていた。
下はミニであるが、巫女さんの衣装を豪華にした所謂コスプレだな。
因みに髪型は、ハーフアップにリボン付きだった。
そして、神武具……。
いやー、これは正に日本の有名すぎる伝説の神武具で間違いないよね。
うん、もうロリコンヤロウの拘りは留まる事を知らないね。
ユグちゃんの言葉で思い出したけれど、確か第一級下位管理者だった頃は最大が十二歳だった。
では、今は……? 俺は恐る恐る、年齢の矢印にマウスを持っていった。
十五歳……今は服を着ているから裸ではない。
俺の世界で言えば、巫女服を纏った中学生美少女である。
少し見てみようかな? でも、シルクが近くにいる。
どう勘考しても、ちっぱいでは無くなっている気もする。
全体像で確認できるが、現し身であるため今の可愛い幼女姿が写っているだけである。
よし、今度シルクに分からない所で十五歳になってみよう。
今日は朝から城に向かうので、この前と同じ様にパンケーキを二百皿と、余分に百皿分作り置手紙をして城に行く旨を記載した。
そして、まだ日が昇らない朝に涼しい空気を感じつつ俺達は城に向かうことにした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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ユグドラシル「リリー様、温泉気持ちが良いですね。それに、水の微精霊達は楽し
そうです」
リリー「そうね。水の微精霊ちゃんが湯船の縁で踊っているわね。可愛い」
俺が可愛いと言った言葉が気になったのか、シルクがアイビーの元から
飛んできた。
シルク「あれ? 今さっきユグちゃんの声しなかった?」
ユグドラシルはシルクに遠慮してか姿を消したようだ。
リリー「水の微精霊ちゃん達なら、湯船の縁で踊っているわよ?」
シルク「……その子達は、私見えないから」
リリー「そうなんだ。可愛いのに」
そう言って、水の微精霊の踊りを真似して裸で踊り出したリリーであった。
シルク「リリー、裸で腰をくねらせてお尻振るの止めなさい」
と言いつつ、シルクも踊りを真似するのであった。
シルク「ちょっと、解説さん? 毎回リリーの変な行動を、私に真似させるの止め
なさいよね」
そう言いつつ、解説者に感謝するツンデレ少女のシルクであった。
シルク「もう、いいわよ!」




