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南西の大洞窟調査6

 俺が今度服を探すと言ったことで、機嫌が治ったようだ。

 まあシルクの服は、おいおい考えるとしよう。



「服も着替えた事ですし、髪の色も変更してみようかな?」



 俺がそう言うと、スノーが可愛い双眸を向ける。



「うにゃん」



 スノーの双眸を見つめ、改めて毛並みを確認するとフワフワとした柔らかく美しい銀色が俺の心を誘惑する。



「スノー、貴女の銀色の毛並み凄く綺麗ね。私も、銀色にしようかな?」

「ありがとうございます。うにゃん。リリー様も是非、銀髪に。うにゃん。」



 俺の世界でも最近流行のアニメでは、銀髪美少女の主人公や登場人物だとしても重要な役柄である超美少女が多い。

 ならば、俺も銀髪にしてみるのも吝かではない。



「うん、そうね。私も銀髪幼女になるわ」



 そう言って俺はスノーの美しい毛並みに一番近い銀色を選び、金髪から銀髪に髪の色を変化させるため髪の色を変更するパレットをクリックするように叫ぶ。



「チェンジ、キューティーヘアー!」



 クリックっと。



「今の叫びは、少し気になるけれど……リリー、貴女相変わらず憎たらしい程なんでも似合うわね」

「シルク、ありがとう。キラッ!」



 俺はシルクに向かって、一昔前のアイドル風に笑顔を向け、左肘を上げてピースの隙間から左目を覗かせウインクさせてみた。しかも言葉でキラッ! っと付け加えて……。



「リリー、いちいちポーズとるのやめなさい……」



 と言いつつ、「でも、後でポーズのとりかた色々教えてね」と言っていたシルクである。

 ふっふっ……可愛い幼女は、美少女の心も鷲づかみにするのだ。リリー、談。

 やっぱり、一昔前の仕草ってこの世界では需要があるんだ――改めて、一昔前の仕草や言動を思い浮かべるリリーであった。

 スノーの毛の色と、変化させた自身の髪の色が似ている事が嬉しくなり笑顔でスノーとアイビーを抱きしめる。

 そして、スノーとアイビーのお腹に顔を埋め匂いを嗅ぐ



「クンクンクン、スンスンスン。二人とも良い薫り」

「うにゃん」

「ワン、ワン」

『リリー様、光栄です』


「リリー? もう、十分にモフモフ成分堪能したでしょ?」

「シルク、もうちょっと待ってね」



 シルクに待ってもらいつつ、スノーとアイビーの耳や尻尾をハムハムする。



「ハムハム、プニプニ。チュッチュ……ふにゃー、愛らしいばい。モフモフ、ハッピー・フェスティバール」



 最後にスノーとアイビーの肉球を堪能し、それぞれのお鼻にキスをした。



「シルク、モフモフチャージ待ってくれてありがと」

「別に良いわよ。で、この家どうするのよ?」

「あっ……」



 俺は、己の欲望に負けて自身が創りだした家の事をすっかり忘れていたのだ。



「シルク、これどうしよう?」

「私に訊かれても、答えようがないし……」

「じゃー、モフモフの女神様の知恵を借りるね」

「いや、さっき十分堪能したでしょ。それに、女神は貴女でしょ?」

「ふにゅー、ふにゃ?」

「そんな可愛らしい表情で、誤魔化しても無駄よ」



 俺は、自信で創りだした大きな二階建ての家をどうしようか悩んだ。

 そして、そのままアイテムボックスに入るか挑戦してダメであれば、放置して防壁を貼るしかないと考えた。



「せーのー、ひょいっと」



 収納してみると、意外とすんなり入った。

 しかも、地面の中に埋まっていた土台ごと――地面の岩盤に穴が空いていたので、賢者の魔法を使用して地面を整えたけれどね。そこが、改良の余地があるわけだが……



「シルク、入っちゃった」

「嘘でしょ……」



 実は、昨日ベットの中でゴニョゴニョと管理者システムを見ていたのだが、その中にアイテムボックスの簡易設定が有ったのだ。

 普通考えると、アイテムボックス側に有るはずなのだが不思議と管理者システムの一部に有ったのだ。

 しかも、お勧めの収納設定で【切り】→【入り】とスライドするようになっていた。

 なので、【入り】にしたわけだが……大雑把すぎる。

 もしかすると、この大雑把が問題でアイテムボックス側ではなく管理者システム側に有ったのかもしれない。


 いや、それなら早くなおせよって話になるが……

 管理者システム設定の品質向上のため【アンケートのご協力をお願いします】とあったので、変更箇所の案を幾つか書いて送信しておいた。

 すると、アンケートを受付致しました。こちらは、カスタマーセンターのライラックが承りました。ご協力、有り難う御座いました。と、返信があった……ライラック? いや、まさかねー。そう思ったのだが――眠気の勢いが増して、そのまま眠ったのだ。


 いくら、リリーが女神様であっても【基準がおかしいわ】とシルクが言っている。

 しかし、俺自身もおかしいと思うので否定はしなかった。

 防壁を解除して、小さな出口から外に出ようとすると花の妖精と微精霊達が手を振っていたので俺達も手を振り



「花の精霊さん、微精霊の皆、私達は先に進みますね」



 と言うと花の精霊が前に出て



「リリー様、ユグドラシル様をお願い致します」



 と言った。

 なので、最後に別れの挨拶をユグちゃんにもさせてあげようと思い



「うん。ユグちゃんを、呼び出すね」



 と言うと



「リリー様、ユグドラシル様は急激な進化でかなり力を消費しておいでです。ですので、いずれ又の機会に」



 と言ったので、無詠唱で土魔法で盛った元岩盤の大穴を指定して、せめてものお礼にと聖属性魔法を使用して栄養豊かな土にしてあげた。



「そっかー、残念。じゃあ、又今度来た時にね。それとね、さっき岩盤に開いた大穴を私埋めたでしょ?」

「はい、確かに元の平らな地にして頂けました」

「その盛った土やその周りは、聖属性魔法で良い土にしておいたから、元気なさそうな花々があったらそこに植え替えするといいよ」

「リリー様、ありがとうございます。我ら花の精霊一同、またユグドラシル様と御一緒に来て頂けることを楽しみに待っております」

「うん、またユグちゃんと皆で一緒に来るね。じゃー、またねー」



 そう言って、俺達は花の妖精達に別れを告げて小さな出口から大洞窟内に戻ってきた。

 すると、早速スケルトンナイトとアイアンゴーレムが襲い掛かって来たので瞬時に倒した。

 シルクが、さっきの出口を指さしている。



「リリー……落ちているわよ」

「あはっ」



 出るとき、またショーツが脱げたのは言うまでも無い。

 同じく、スノーに取りに行ってもらった。

 そして、心配して下さっているお兄様方お姉様方安心して下さい。

 もう、穿きました。逆立ちしても、大丈夫です! 



「ちょっと、リリー! 何、逆立ちしているのよ! パンツ、丸見えよ」

「……見せ、パンです」

「なによそれ」



 アイテムボックスを一瞬確認すると、数えきれない程の魔物が倒されて入っていた。

 入っている倒された魔物の数は確認できるが、今は確認しなくてもいいだろう。

 だって、まだ増えるからね……。

 小さな入り口に、厳重な隠蔽魔法と防壁を構築した。

 あやまって、冒険者や魔物が入ると俺みたいに挟まる可能性があるからだ。

 まあ今までこの国の冒険者ギルドで、俺のように小さい冒険者は見たことはないのだけれどね。


 最下層の最奥地を目指すべく、俺達は地下四階に降りた。

 地下四階からは通路が巨大になり、巨大なオーガゾンビが大群で現れた。

 しかし、俺は昨日ゆっくり休みモフモフ成分マックス状態。

 気分も良いため、絶好調である。

 サクサクとテンポ良く鼻歌まじりで、オーガゾンビの首を木の棒で撥ねて一気に倒していった。

 オーガゾンビは呪いを付与できるらしいが、俺の動きに一切ついて来れないので、実は倒すのも楽だったのである。

 オーガゾンビの実力を測るため、一体残し重力魔法で動きを封じている状態で



「ねえ、シルク? オーガゾンビ、倒してみる?」



 と言って、後ろを振り向きアイビーの上で寛いでいるシルクに声をかけた。



「えっ……良いけれど、この魔物ゾンビのくせに魔法耐性が強いのよ。パパも以前倒すのに苦労したって言ってたから、それでよく知っているの。パパから、この魔物だけは遭遇したら逃げるように言われているし……近接攻撃は呪われるから、アイビーにも攻撃させられないし……」

「あら、じゃあやめておく? 今、重力魔法で動き封じてるから動けないしシルクなら簡単に倒せるかなと思って……ごめんね」

「リリー、平気よ! 私も本気を出せばこんな魔物くらい楽勝で倒せるわよ。アイビーは呪われるから絶対に攻撃禁止! 私の後ろにいなさい」

「ワン、クウーン?」

『シルク、妖精王でも苦戦したのに大丈夫?』


「大丈夫よ! リリー、アイビー見てなさい。美しき妖精の王女の実力、オーガゾンビとくと味わうがいいわ」

「シルク、無理はしないでね。オーガゾンビの力量を確かめたいだけだから、もうダメって思ったら直ぐに言ってね」

「うん……」



 シルクは覚悟を決め、自身に強化魔法をかけるようだ。

 自身の胸元で両手を握り、祈りを捧げるように――



「森を照らす聖なる光よ! 私は妖精の王女シルク! 我が願いに応え、聖なる光で、我の魔力を向上させよ! ライト ザ ディベロップ マジック アビリティ!」



 シルクを光が照らし、その光がシルクに溶け込んだ。



「森を守護する風の精霊よ、我は妖精の王女シルク、我が命に従い力を示せ! 風の刃で幽閉し、切り裂き滅せよ! ウィンド プリズン カッター!」



 オーガゾンビを、強化魔法で強力になった巨大な竜巻で切り裂く檻に閉じ込めた。

 しかし、オーガゾンビの魔法耐性でダメージが軽減されている。

 更にシルクは魔法を続ける。



「森に暖かさを齎す炎よ! 時に、森に死を呼ぶ炎の槍となりて我が敵を滅せよ! ファイアーランス!」



 風の精霊の力を借り、二段階で火属性魔法を詠唱することで強力な二属性を合わせたシルクの最強魔法である。

 炎の槍が、竜巻の檻で閉じ込められているオーガゾンビを襲った。

 そして轟音をあげ、激しい炎と切り裂く竜巻にオーガゾンビが包まれた――が魔法耐性の強いオーガゾンビは少し弱ってはいるものの倒れなかった。

 最後は、他の属性よりは体制が低い炎属性のファイアーアローをこれでもかと言うほど連発させていたが倒せなかった。



「リリー、無理……こいつ強すぎ。私の魔力が、もたない。倒して……」



 そう言って、シルクがアイビーの上に倒れた。

 なので、シルクに魔力も回復できるエリクサーレインをスノーとアイビーも一緒に指定して回復させた後、オーガゾンビを俺が木の棒でサクッと倒した。

 成る程、シルクがオーガゾンビ一体相手に、これほど苦戦するのなら第一騎士団が這々の体で撤退するのは分かる。

 これほど強力な魔物だと、A級冒険者パーティーでも荷が重いだろう。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー、何しているの?」

リリー「ポーズの練習よ。ほら、シルクもしてみて」

シルク「これ……何のポーズ? かなり、疲れるのだけれど」

リリー「女豹のポーズ……まだ、シルクには早いみたいね」

シルク「もっと、可愛らしいの教えなさいよ」

リリー「ぅにゃん、ぅにゃん」

シルク「これは?」

リリー「手を猫さんみたいにして、スノーの語尾を少し変えてみたぅにゃん」

シルク「こうかな? ぅにゃん」

リリー「そうそう。シルク、可愛いぅにゃん」

シルク「えへっ、少し楽しいかも。ぅにゃん」

    その様子を、スノーとアイビーが微笑ましそうに見ていた。

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