大浴場4
キノットさん達も、俺がスノーとアイビーを洗っている姿を見て見よう見まねで驚きながらもシャンプーやボディーシャンプーを使って身体を洗おうとしていた。
しかし、よく分からないようだ。
宿屋に併設している施設の使用方法が分からないのでは、流石に話にならなくなってしまう。
まあ、初めてのお風呂で使用方法が分からないのは当然である。
なので、キノット夫妻に使用方法などを教えている間にレモンちゃんの相手をシルクにまかせる。
「シルク、レモンちゃんを見てて」
「あい、あーい」
レモンちゃんをシルクにまかせている間に、キノット夫妻にシャンプー、リンス、コンディショナーやボディソープ等の使用方法を教える。
「キノットさん、ライムお姉さん、シャンプーはよく泡立てて、指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗って下さい。爪を立てないで下さいね」
「リリーちゃん、意外と難しいな……」
「キノットさん、これは大事ですよ。頭皮の余計な皮脂などを効率よく押しだし、血行がよくなることで抜け毛の予防にもなりますしね」
「リリーちゃんもしかして、ハゲ予防になるのか?」
「そうですね……遺伝でそうなる事もありますが、効果はある程度あると思います」
キノットさんはまだ若いので、髪はフサフサしている。
しかし、周りの先人達の頭を見て悟ったようだ。
ライムお姉さんには、その他に髪を労るようにリンスやコンディショナーで優しく洗う方法とヘアパック等の髪を労る成分が入っている使用方法を教えてあげた。
次に、キノットさんには布にボディソープを泡立てて身体を擦って洗う方法を教え、ライムお姉さんには泡立てたボディーシャンプーを手で洗う方法を教えてあげた。
「リリーちゃん、手で洗う方が肌に優しいの?」
「はい。ライムお姉さんは、肌が綺麗で柔らかく傷つきやすい肌だと思うので手で洗うのがお勧めです」
「リリーちゃん、褒めてくれてありがとう。リリーちゃんも、凄く綺麗よ」
そう言って、ライムお姉さんは汗のかきやすいあれの下を念入りに手で洗っていた。
流石に目のやり場に困り、下を向いているとライムお姉さんに手を引かれ、
「リリーちゃんも、肌が綺麗で傷つきやすい肌だと思うわ。なので、私が洗ってあげるね」
と言われ、洗われてしまった。
泡立てた泡を手で身体全体に優しく触れられると擽ったくて、時折触れる暖かいあれの感触に――これがもし、以前の俺ならパラダイスなのだが恥ずかしいだけであった。
しかし、ここで語らねばならない事があるだろう。
そう、あれの柔らかさ? 触り心地?
いやいや、邪な心は持ち合わせてないからね……期待している紳士諸君には、語らねばなるまい。
人肌に温められたマシュマロ? いや違う。
スライム? いや違う。
精巧に作られた、医療用のあれのシリコン? どれも、しっくりこないな……。
敢えて言えば、美しく可愛い……ここ重要。
少しぽっちゃりした美少女の、力を入れていない二の腕……それが一番近いかもしれない。
しかし、これ以上の感想は『禁則事項』です。
俺とキノット夫妻は、身体を洗い終え大浴場や温泉に浸かり身体を暖める。
そして裸のまま、俺はキノット夫妻に施設の使用方法を一つずつ説明していく。
シトロンちゃんは風邪をひかないように、布で滴を拭き乾いた布で身体を覆いライムお姉さんが抱きかかえている。
空調がきいているが、裸でも風邪をひかない丁度よい温度調節が自動でされているので問題は無いのだ。
キノット夫妻に説明を粗方して、大浴場に戻ってくるとシルクが――
「リリー、まだー? 疲れた……」
と言って、ゲッソリした顔をしていた。
「シルクもう良いよ。レモンちゃんを連れてきて」
「ハァー、ハァー、ちびっ子恐るべし体力……」
「レモンちゃん、あれだけ燥いでいたのによく転ばなかったね」
「私が、転ばないようにずっと支えていたのよ。はぁー、疲れた……」
「シルク、お疲れ様」
シルクは疲れていたが、レモンちゃんは体力が有り余っているようで汗をいっぱいかいていた。
俺はレモンちゃんの事をライムお姉さんに任せようとすると、ライムお姉さんが
「リリーちゃん上手だから、レモンの髪や身体を洗ってあげてくれないかしら?」
と言われたが、丁寧に断った。
いやだって、八歳の子供は流石にねー。
なので、レモンちゃんは髪と身体をライムお姉さんに洗われていた。
しかし、初めてのボディーシャンプーによる手を使用しての丁寧な洗い方は擽ったかったようだ。
最後は逃げていたので、半分だけ洗われていた。
俺が温泉に浸かっていると、レモンちゃんがお湯をかけてきたので、俺もレモンちゃんの年齢に合わせるように行動をするべくお湯をかけて遊んであげた。
最後はレモンちゃんが抱きついてきて、色々と揉みくちゃになったがその感想は差し控えようと思う。
俺は紳士な行動ができる幼女だからな。ふっふっふー!
シルクは、かなり疲れていたが外の温泉に浸かると疲れが取れたようだ。
もしかしたら、ここにも微精霊ちゃん達がいて温泉の治癒力を高めてくれているのかな?
だったら、感謝の気持ちを伝えていた方が良いよね?
「いつも、微精霊ちゃん、精霊ちゃん達、ありがとっ。本当に、感謝するわ」
すると、『恐悦至極に存じます』と、お湯の流れる音なのか? 子供の様な声音と、少し大人びた子供の様な声音が、聞こえた気がした。
俺達とキノットさんの家族は、それぞれ温泉に浸って日頃の疲れを取り、談笑して大浴場を楽しんだ。
俺は宿屋の基本料金見直しと、外から来るお客様の大浴場の使用代金等はキノット夫妻に丸投げする事にした。
大浴場の建設で――
「リリーちゃんから宿代を、今後一切貰わない。大浴場の建設費用を、一生かけて払う」
と、キノットさんが言い出したので、建設費用の件は丁寧に断った。
だって、己の欲望を満たしたかったから大浴場を創造したとは言えないしね――自身がお風呂に入りたかったが10%で、残りの90%はスノーとアイビーをアワモコ天使にしたかったからと……。
泣いて喜んだキノット夫妻が、最後は必至な表情で風呂の中で料金の計算をしていた。
なので、
「のぼせない様にね」
と言って、先にレモンちゃんと一緒にお風呂から出て来た。
俺は皆をドライヤーで乾かしてから、先にスノーとアイビー専用の容器にスキルで上質化した牛乳を入れた。
そして、スキルで作ったフルーツ牛乳を、シルク、レモンちゃんに渡す。
「シルク、レモンちゃん、よく見ててね。これがフルーツ牛乳を飲む作法なの」
俺の元いた世界――その一部の地域で、フルーツ牛乳とコーヒー牛乳を飲む作法がある。
右手でフルーツ牛乳やコーヒー牛乳を持ち、左手を腰に当てて飲む。
その作法を皆にミッチリレクチャーした。
美味しいフルーツ牛乳を皆で堪能――俺は修道ロリ服セット(赤・白色)に着替えスノー達と共に大浴場の大休憩所をあとにした。
レモンちゃんにはライムお姉さんが上がったら、教えてもらう様に伝えて一階で分かれた。
しばらく時間がたったが、レモンちゃんからの連絡が一向に来ない。
なので、独りで一階に様子を見に行くと既にレモンちゃんは眠っていた様だ。
仕方がないので、大浴場の大休憩場に来るとキノットさんとすれ違った。
ライムお姉さんの事を聞いてみると、まだ温泉にいるようだ。
温泉に行こうとしたら、ライムお姉さんがのぼせた様な顔で出てきた。
ライムお姉さんに涼んでもらいながら、パウダールームの使用方法を教える。
すると、裸にバスタオル一枚で真剣な表情で俺の話を前のめりで聞いていた。
ライムお姉さん「たわわなあれがこぼれ落ちそうだよ」とは、もちろん言わなかったぞ。
幼女としての常識である。
俺は二階に行って修道ロリ服セットを収納。
いつもの着ぐるみセットに着替えることにした。
にゃん。にゃん。にゃん。何匹ものスノーに似た幼虎が現れる。
俺が寝転ぶと、可愛い幼虎達が群がり幸せな気分になる。
ぼっふん! っと、幼虎の幻影達が消える。
そこに現れたのは、デフォルトされたスノーの着ぐるみを着た俺だ。
お着替え妄想タイム終了。
今日はスノーのバージョンだ。
そう言えば、一つ気になる点をスノーに確認しないといけない。
俺はスノーに『眷属間テレパシー』を使用した。
『「ねえ、スノー? 確認したいんだけど、良いかな?」』
『「うにゃん」』
『「私、大浴場を創造したでしょ」』
『「うにゃん」』
『「あれって、女神サラ様の注意している禁忌事項などに当たらないの?」』
『「該当しません。うにゃん。それに禁忌事項に含まれる事項であれば、スノーが制止するようサラ様に仰せつかっております。うにゃん。ですので、リリー様の利になる事柄で禁忌事項に当たらないようであれば、自由にされても問題はありません。うにゃん」』
『「スノー、教えてくれてありがと」』
『「うにゃん」』
スノーが教えてくれた内容から、女神サラの俺へに対する甘々な神対応が垣間見られた。
俺が創造した大浴場は、この世界でも未曾有の技術で創られた部類に相当する。
しかし、スノー曰く禁忌事項に当たらないらしい。
女神サラの禁忌事項の概念は不明だが、禁忌事項に関する事をした場合はスノーが制止してくれるのであれば一先ずは安心だ。
不安要素が解決したことで、安心で少し眠気がきた。
俺は明日早朝から南西の大洞窟に向かう件を、シルク、スノー、アイビーに伝えて早く床についた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「ねえ、リリー? お風呂回、多くなかった?」
リリー「ああ、それねー」
シルク「そんなに、美少女のキャッキャウフフ見たいのかしら?」
リリー「アニメでも、水着回やお風呂回のOVAが多いのよ。売れ行きも、良い
ですしね」
シルク「水着回とお風呂回は分かるけど、OVAとか私リリーの言っている意味
分からないのだけれど……」
リリー「サービス、サービスゥって意味よ」
シルク「余計に分からないから……」
リリー「シルクも言って、サービス、サービスゥ。最後の語尾は、可愛い声音
で上げるよう言ってね」
シルク「サービス、サービスゥ……」
シルクにあとで詳しく説明してあげると、顔が赤くなっていた。
リリー「サービス、サービスゥ!」
過剰にサービスに拘る、リリーであった。




