大浴場3
俺はスノー達と共に、キノット夫妻を宿屋の裏に案内した――
すると、まず通路が有ることにキノットさんが驚いた。
「リリーちゃん、俺の宿の裏口にこんな綺麗な通路あったか? 雑草が生えた空き地だった筈なんだけれど……」
「雨が降っても風が吹いても、お客様が濡れたりしないよう快適な通路を設けました。そして、寒い日にも対応できるよう開閉式の壁を設けましたので、きっとお客様にも喜んでいただける大浴場までの通路かと思います」
「いや、簡単に通路というが……どう」
キノットさんが質問してきそうだったので、
「そんなことより、キノットさんライムお姉さん大浴場に向かいますよ」
と言って先に進む。
「あっ、ああ……」
キノットさんが返事をしたが、ライムお姉さんが口を開けて呆けていたので
「ライムお姉さん、口を開けてないで行きますよ」
と言って、手を引いて連れていくと、
「えっ? ええ」
と言って現実に意識が戻ってきたようだ。
俺達が大浴場の入り口まで案内すると、
「屋敷か?」
「あなた……屋敷よね?」
と言って、二人であまりにも大きく立派な大浴場と草臥れた宿屋の裏口が通路で繋がっていた事にキノット夫妻は宿側と大浴場側を行ったり来たりして驚愕した。
大浴場の入り口を開けると、キノット夫妻が再び口を開けて呆けていた。
キノット夫妻、二度目のフリーズである――時間が勿体なので二人を現実に戻す為に二人の太股を叩いて声をかける。
「キノットさん、ライムお姉さん、大浴場なのでレモンちゃんとシトロンちゃんも連れてきて一緒に入りましょうか」
ライムお姉さんは夢現から今目覚めたとでも言うように、
「私は今まで、夢でも見ていたのかしら」
と言ったので、
「現実ですよ。レモンちゃんとシトロンちゃんを連れてきてくださいね」
と言うと慌てて宿屋に戻りシトロンちゃんを抱きかかえ、レモンちゃんと一緒に大浴場に来た。
すると、今度はレモンちゃんが口を開けて暫く呆けていた。
「うん、これぞ似た者家族ね!」
俺は修道ロリ服セットを、いつものように収納。
隣を見ると、服や下着を脱ぎ散らかしたレモンちゃんが既に裸ん坊で立っていた。
「レモンちゃん服脱ぐの早いね」
「ふんす! でも、ママは遅いの」
レモンちゃんの隣を見ると、服を脱ごうとしているライムお姉さんが途中で四苦八苦していた。
「ママ早く-」
「レモン待って、なかなか脱げないのよ」
ライムお姉さんを見ると、あまりにも巨大に実ったあれが服に引っかかって脱げないようだ。
「リリーちゃん、ごめんね。悪いけれど、レモンと一緒に服を引っ張って」
「ママいつも、こうなの。リリーちゃん、そっち持ってー」
「……ひゃい」
俺は紳士の対応ができる幼女であるが、流石にこの状況ではあれを見ないわけにはいかなかった。
下から見上げると、いつも服で見えなくなっていたものが露わになっていた。
ライムお姉さんの引き締まったに身体に、不釣り合いなほどに大きい。
自身のちっぱいと比べてみると、圧倒的な戦力差だった。
恐らくレモンちゃんも、大きく育つであろう……だって、レモンちゃんも既に自身と比べると圧倒的だったからね。
どうにか服を脱ぐことができたライムお姉さんは、キノットさんからシトロンちゃんを返してもらい
「あなたも早く服脱いで、一緒にはいるわよ」
と言っていた。
裸ん坊のレモンちゃんを先頭に、俺達とライムお姉さんが女湯に……キノットさんは戸惑っているが、俺達は女湯へと誘った。
「何これ! 凄―い! 大きーい! 大きな湖みたーい!」
レモンちゃんが一番先に入ったので、燥いで驚いた。
「本当に凄いわね。お風呂に入るのなんて、私生まれて初めてだわ」
ライムお姉さんがシトロンちゃんを抱きかかえ感想を述べる。
すると、レモンちゃんがライムお姉さんに
「ママー、見てー! こっちにも、大きい水たまりー」
「レモン、これはお風呂って言うのよ」
「お風呂? へー。うわー。凄ーい。大きーい」
レモンちゃんが指で大きなお風呂を指し示し、目移りしているとシルクから声がかかる。
「ライムさん、レモンちゃん、こっちの外の温泉が凄いわよ!」
「温泉? シルクちゃん温泉って?」
「私も知らないけれど、リリーがね……」
シルクが困っているので俺が説明をする。
「外湯の温泉は、自然の成分が存分に入った謂わばお風呂ですよ。ライムお姉さんやレモンちゃんにお勧めの美肌効果や【様々な効能】も有って健康にも凄く良いのです」
俺の説明にライムお姉さんの目の色が変わり、レモンちゃんも同意する。
「え、本当なの? じゃあ、私毎日入るわ」
「ママが毎日入るなら、レモンも毎日入るー」
キノットさんが最後に、よそよそしく入ってきた。
「おっ、おい? ライム? 俺も、入ってもいいのか?」
「勿論よ! 家族なのだから。それに、貴方はここの御主人様でしょ」
「あ、ああ」
今度は、スノーが普通に入って来る中アイビーがビクビクして入ってきた。
なので、お湯をそっとかけてあげる。
「ほら、スノーとアイビーも洗うちゃるけん」
「リリー様、暖かいです。うにゃん」
「ワン、クウーン!」
『リリー様、お湯怖いよ!』
「アイビー、最近匂うけん、よう洗わなつまらんばい! えずうなかけんね」
「ワン、ワン!」
『リリー様、僕頑張ります!』
「アイビー偉かばい。ほんなこて良か子ね。スノーも良か子やけん、洗うちゃるけん」
「うにゃん」
ぽっぷん!
俺の頭の中で、眼鏡をかけた女神サラの女教師バージョンが出てきた。
「ハァー、最近本当に出番がないわ。リリーちゃんもっと方言使ってよね。では、気を取り直して。説明のお時間よ」
今度は俺の頭の中で、子供の頃の俺が出てきた。
「先生おねがいしまーす」
「今日は【つまらんばい】と【ほんなこて】について教えるわよ。それと、お復習いになるけれど【えずうなかけん】についても教えるわね」
「はーい」
子供の俺が席に座ると、女教師バージョンの女神サラが説明する。
「【つまらんばい】とは、簡単に言うと【ダメよ】という意味よ。そして【えずうなかけん】これはお復習いだから分かるよね」
「――――。――――」
「うん、うん。そう鈴君、正解。【怖くないからね】という意味ね。つまり、【最近匂うから、よく洗わないとダメよ! 怖くないからね】と言う意味なの。そして【ほんなこて】とは【本当に】という意味よ。つまり【偉いわ。本当に良い子ね】と言う意味なの。分かったかなー?」
「あーい」
「説明は以上よ。また少し難しいと思われる方言が出たら説明するわね」
「はぁーい。先生ありがとーございまーす」
妄想説明劇場が終了し、現実に戻る。
「もぉー! リリーたら、アイビーを甘やかしすぎ。もっと、私に構いなさいよ!」
「ワン、ワオーン、ワオーン、クウーン、ワン!」
『突拍子もないシルクに、リリー様はいつも笑顔で接してくれているよ。だから、これ以上はシルクの我が儘だよ!』
俺は苦笑いをして、いつものシルクとアイビーの仲良しな会話に和まされスノーとアイビーを洗ってあげた。
キノットさん達も、俺がスノーとアイビーを洗っている姿を見て見よう見まねで驚きながらもシャンプーやボディーシャンプーを使って身体を洗おうとしていた。
しかし、よく分からないようだ。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シルク「ねえ、リリー? 話があるのんだけど」
リリー「シルク? そんなにプンスカ怒って、どうしたの?」
シルク「プンスカって……まあ、いいわ。教えてあげる。なぜキャッキャウフフの
水着回の前に、お風呂回入れるのよ」
リリー「シルク、なんでそんな言葉知っているの?」
シルク「そんなの、常識よ常識。それより、なんで?」
リリー「だって、お風呂に入りたかったから……それに、シルクも入りたかったで
しょ?」
シルク「アイビー、匂い嗅ぎに来るな!」
アイビー『そんなに、……』
シルク「それ以上、言わせないわよ」
アイビーとシルクのいつものやり取りに、スノーと一緒に和むリリーで
あった。




